マナビネットオープンスクール2024 ●掲載:塾ジャーナル2024年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

「受験」という通過点のはるか先を見据え
学び方を身につけてはばたく生徒たちが
自分の半径5mから「解なき時代」を切り開く

学校法人 静岡理工科大学 星陵中学校・高等学校

アントレプレナーシップを身につける参加型教育プログラム「高校生Ring AWARD 2023」(リクルート主催)で、英数科中高一貫コース2年生・安藤花桜さんが、参加者2万5千人の中からグランプリを獲得。また、今年は国公立大学・難関私立大学の合格者数が190名を超え、医学部の合格者数も複数名以上に増加した。これらの成果は、日々の学びの延長線上に自然と生まれたものだ。この「解なき時代」に求められる能力を予見していたかのような先進的な学びや、学校の果たすべき役割、それを支える教師と生徒の関係性についてお聞きした。


2万5千人参加のプログラムに
初めての参加でグランプリを獲得!

「初めての参加で受賞。それもグランプリとは、何だか出来すぎていますよね」と笑うのは、橋本正中学校教頭。「高校生Ring AWARD 2023」のもととなるプログラム「Ring」は、リクルート社内の新規事業提案制度で、そこから「Indeed」「ゼクシィ」などのサービスが生まれた。これを高校生向けに展開したものが、このプログラムだ。

「リクルートは新規事業立ち上げのプロですから、そんな企業からグランプリをいただけたというのは感無量です」と、渡邉一洋校長は振り返る。

グランプリを受賞した安藤花桜さんが考えたのは、医療と衣料に着目し、自分の体の特徴に合わせて誰もがファッションを楽しめる「ユニバーサルクローゼット」というサービスだ。特に高く評価されたポイントは、「オリジナリティの高さ」「ビジネスとしての可能性」「圧倒的な当事者意識」の3点。全国2万5千人超の中から抜きん出るこの発想を生んだ星陵の教育について、渡邉校長はこう分析する。「本校の軸として長年続けている探究活動は、まさにこの3点にリンクしているといえるかもしれません」

星陵の探究活動の始点は、「自分の半径5m」だ。心動くリアルな体験を通じて、自分がどう感じ、何を思うか。そこにSDGs教育が共鳴すると、環境や経済といった切り口から、個人的な興味が社会と接続されていく。それが最終的に、百花繚乱のプレゼンとして結実する過程は見事だ。この探究活動こそが、独創性やビジネス感覚、当事者意識などの源泉といえよう。

「受賞したサービスも、自己注射をした際に手元が見えづらく打ちづらかった自身の体験が着想のきっかけになっていますし、プレゼンでは顧客分析や収益構造、海外への展開まで視野に入れた説明がありました。机上の空論で終わらない強度ある発想が、星陵生の大きな強みですね」

ワンランク上の
進路を実現する秘訣は
「学び方」を学ぶこと

一般的な教育における3つの構成要素は、テストなどによる評価を意味する「アセスメント」、教科書などの学習内容を指す「コンテンツ」、そして学びのOODAループを管理する「ラーニングマネジメントシステム」だという。「このうち『ラーニングマネジメントシステム』こそが星陵教育の根幹で、本校に通う価値といえます」と渡邉校長は強調する。

「学校の果たす役割として重視しているのは、生徒一人ひとりの学びのサイクルにおいて、『チェック』と『再設計』の局面をしっかりサポートすること。同時に教師は、生徒自身が個人的な体験を再整理して抽象化できているか、という部分を丁寧に見取ります。抽象化することで再現性が高まり、次の課題にさらなる『質』と『スピード』をもって対応することができるからです。また、個人的な体験を抽象化してさまざまなケースに当てはめる能力は、多様性への理解という点でも不可欠といえます」

一斉授業やペーパーテストでは身につけづらいこうした横断的な能力こそが、総合型や学校推薦型などの新たな入試形態には求められる。それゆえ、「ラーニングマネジメントシステム」を通じて「学び方」を身につけることは、ワンランク上の進路の実現につながっていく。ひいては、生徒一人ひとりの人生において、「解なき時代」を生き抜く大きな武器となるに違いない。

進路選択の土台は
生徒と教師との関係性

生徒と教師のコミュニケーションは、学びのみならず進路選択における土台にもなっていると、渡邉校長は語る。「進路は偏差値で選ぶべきものでは決してありません。星陵では探究活動などの体験を通じて、自分の半径5mから『面白い』と感じるポイントを見つけ、掘り下げていきます。生徒が興味をもった分野を調べ始めると、大学の研究者にたどり着く可能性が高くなります。

自分が将来研究したいと考える分野を重視するのであるならば、大学教授からゼミ、学部・学科そして大学へと具体的な夢が固まっていくはずです。そのために、教師は日頃から生徒と密に会話し、生徒一人ひとりの興味や価値観、感性などの傾向を深く理解しています。同時に、最新の研究分野や教授の在籍状況などの知識をアップデートし続けることも不可欠です」

昨年度、担任として卒業生を送り出した小山修平教諭は言う。「私自身も本校の卒業生ですが、学生当時の教師とのコミュニケーションはとても印象に残っています。他校でなく、『星陵で教員をやりたい」と強く思った理由は、そこかもしれません」

小山先生然り、星陵の教員には何人もの卒業生がいる。生徒のみならず教員にとっても魅力ある環境であることが伝わるエピソードだ。渡邉校長も言葉を継ぐ。「一人ひとりに向き合う負担は少なくないですが、星陵の教員は、職業というよりも人生そのものとして教員生活を送りたいと考える人ばかりですから」

一方で、教師が常に正しいわけではないとも、橋本教頭は言う。解なき時代、生徒自身が納得できる真実に辿り着くためには、教師を盲信するのではなくクリティカルに考えることが不可欠だ。「生徒たちには、創造力において先生を超えていってほしい! といつも願っているのです」と、まっすぐこちらを見つめる橋本教頭。その表情からは、生徒からの、そして生徒への揺るぎない信頼と、星陵の教師としての矜持が垣間見えた。


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「自分の半径5m」を出発点とした 創造性あふれる探究活動を通じて 「解なき時代」を生き抜く力を身に付ける


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