マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

創立100年を超えた中高一貫男子校
来年度、希望進路を叶える新コース編成へ

滝川中学校・高等学校

オンライン英会話授業を取り入れ、マンツーマンで30分間の対話レッスンを行う


滝川中学校・高等学校は1918年創立の中高一貫男子校。「日本のマッチ王」と呼ばれた実業家で貴族院議員、神戸商工会議所会頭も務めた時代のリーダー、瀧川辨三氏が私財を投げ打って開校した。校訓の「至誠一貫 質実剛健 雄大寛厚」に基づき、生徒の個性を尊重し、創造力豊かでリーダーシップを備えた人材の育成をめざしてきた。自由な校風の進学校として知られ、進路目標別に3つのコースを設けている。来年度からはコースごとの目標をより明確にするべく再編成する。新コースの内容とめざすところについて聞いた。


次世代のリーダーを育てる
男子中高一貫教育の伝統校

創立者の瀧川辨三氏は幕末の長府藩(山口県)に生まれ、神戸で起業したマッチ製造業で成功を収めた実業家。青年時代に英学を学び、事業では品質第一に努めて海外にも販路を拡大した明治期のグローバリストだ。育英の志厚く「品性学力共にすぐれた生徒を育て、社会に貢献したい」と1918年、67歳にして旧制滝川中学校を設立した。

キャンパスは最寄り駅の「板宿駅」から徒歩5分。生徒は地元商店街のアーケードを通って登下校し、街の人たちに見守られながら成長していく。建学100年を超えた歴史ある中高一貫男子校として地域に信頼され、理系進学に強いという評価も得ている。

下川清一学校長は新型コロナと闘い続けてきたこの一年を振り返り「こうした危機に知恵と勇気をもって立ち向かえる生徒を育てる使命を感じています。改めて、校祖から『混沌とした未来に必要な人間を育てよ』と時を越えて言われている気がしますね」と語る。

中高一貫の男子校の良さは周りを気にせず個性を伸ばせること。6年間の学校生活で興味や得意分野を深め、進路を見出せるようにバックアップしている。そのためにも中学から3コース編成にし、一人ひとりの方向性に沿った進路支援をしてきた。

2015年に開設した「医進グローバルコース」は理数科目に特化した教育に加え、実践的な英語力を身につけるカリキュラムで高い学力と国際理解を育む。中学3年時に3ヵ月間のニュージーランド留学を体験できるのは高校受験のない中高一貫ならではの課程だ。医学部合格者を出している精鋭コースでもある。ただし医学部専門コースというわけではなく、充実した英語教育で自信をつけて神戸市立外国語大学や大阪大学の外国語学部に進学する生徒もいるユニークなコースだ。

「医進コース」も理数科目を重視した授業内容で医歯薬学系、難関国公立大学の理系進学をねらう。「特進コース」では数学、英語を中心に学力を伸ばし、高校からは文理を選択して国公立、難関私大をめざす。また、各大学から滝川高校への指定校推薦枠はこの「特進コース」からの希望者が優先されるため、部活動に励みながら難関私大へ進学する選択肢もある。

来年度、3コース制を再編
将来につながる学びと体験を

それぞれ特色のある3コースを来年度から、より生徒や社会のニーズに沿った「医進選抜コース」「Science Global一貫コース」「ミライ探究一貫コース」に再編する。
「医進選抜コース」は、これまで以上に医学部進学に的を絞り、質・量ともに高いレベルの学習を確保し、医学部入試に必要な小論文や面接にも力を入れる。下川学校長は「勉強だけでなく、医師に求められる倫理観や患者に寄り添う人間性を6年かけて育てていきたい」と語る。学力だけではなく体験学習や医療関係に従事する先輩たちの講話を取り入れ、強い使命感を育てていく。

「Science Global一貫コース」では、高い学力と英語力を身につけ国際社会に貢献できる人材を育成する。現在の「医進グローバルコース」で行ってきた中学3年時のニュージーランドターム留学を本コースに組み入れ、文化や価値観の違いを理解できる人間性や行動力を確立していく。

「ミライ探究一貫コース」は、広く深い教養と語学力を備えて、変化し続ける時代に活躍できる人材を育てるコースだ。入学時には具体的な将来像を持っていない生徒も部活動や学校行事に打ち込んだり、趣味や習い事に熱中しながら進路のテーマを探せる。下川学校長は「好きなことを追求し、自分を磨き、どんなかたちで社会の役に立てるのかを考えてほしい」と、このコースに期待している。


多くの生徒が部活動と勉強を両立している。柔道部は全国中学校総体出場経験のある強豪

将来を見据えた親身な進路指導で
多くの生徒が医歯薬系、難関大へ

理数科目の強化と実践的な英語学習に注力してきた成果は進学実績に表れている。昨年度は大阪大学、神戸大学を筆頭に医学部・歯学部を含めて国公立大学に65名が合格。私大は医歯薬系に20名、関関同立に計122名のほか早稲田大学、東京理科大学、GMARCHにも合格者を出している。

合格が見込める生徒だからといって上位校を勧めたり、何校も受験させることはしない。「生徒がさまざまな経験を通して自分で考えて決めた進路を応援します。『自分で決めた』という責任と自負を持って進学しなければ、学ぶ目的を見失ってしまうからです」(下川学校長)。

進学実績を伸ばす一方で、探究活動や海外体験を通して自ら考え、行動できる人間力を高める機会を数多く設けている。各界で活躍するOBを招いて話を聞く「自分発見セミナー」、海外大学で現地の大学生と英語で交流し、プレゼンテーションを行う研修旅行、フィリピン・セブ島での語学研修などだ。社会の課題に関心を持ち、SDGsに積極的に取り組む生徒もいる。

「こうした体験をともにした仲間は生涯の友になるでしょう。仲間がいるから挑戦できることも多いはずです」と下川学校長は言う。そして「大学を出れば就職が決まり、安泰というレールがあった時代は終わりました。これをむしろチャンスと捉え、自分でレールを敷いて将来を切り拓いていける人を育てていきたいと考えています」と語った。

滝川中学校・高等学校  https://www.takigawa.ac.jp/