普通科と3つの専門学科で幅広い学び
女子教育の伝統校は来年度、男女共学へ
(2022年度より男女共学化)
修文学院高等学校(現・修文女子高等学校)
保育実習やファッションショーなど、ものづくりの苦労と喜びを味わう実習科目も豊富。中学時代には気づかなかった新しい自分に、きっと出会える
今年、創立80周年を迎える修文女子高等学校。女子商業高校として始まり、近年は普通科の進学実績も好調だ。学院訓「推譲・明朗・強健」の「推譲」は他人を推して地位や名誉を譲ること。「かつては良妻賢母の美徳をあらわしていましたが、新型コロナとの闘いが続く現代においては思いやりや共生の尊さを見出せるのではないでしょうか」と栗本整校長は言う。80年前の学院訓が新しい意味を持ち始めている今、来年度からの男女共学化という改革に挑む。その歩みと、新たな学院像を聞いた。
来年度から男女共学化し
「修文学院高等学校」に
愛知県一宮市は尾張地域では名古屋市に次ぐ経済都市。この4月、市制100周年を機に中核市に移行した。修文女子高等学校はこの街で創立80周年を迎える伝統校だ。
創立者の吉田萬次氏は医師のかたわら市議、県議、一宮市長、参議院議員を務めた地元行政の重鎮。一宮地域が明治期から毛織物産地として発展する一方で、中等教育環境が貧弱なことを憂いていた。特に実業高校は当時、近隣の町に県立高校があるだけで市内には女子が学べる商業高校がなく、一宮市から名古屋、岐阜の商業学校に通学する生徒が多かった。「商工都市・一宮を支える人材、それも女子のための実業高校を」と私財を投じて建学した一宮女子商業学校が同校の前身だ。
以来、時代が求める人材、女性の生き方の多様化に合わせて幾度も改革を行ってきた。1948年に普通科、商業科、家政科の3課程に。その後、調理師資格を取得できる食物調理科を創設、商業科を情報会計科に改称。2008年には校名を修文女子高等学校に変更している。そして来年度、校名を修文学院高等学校に改め男女共学化という、これまでにない大きな改革に挑む。
栗本整校長は「女子の進学率が高まり、ジェンダーへの理解も深まっています。変化する時代にふさわしい教育に取り組まなければなりません。学院訓の『推譲・明朗・強健』は堅持しながらも新時代に活躍できる生徒を育てたい。『不易』と『流行』のバランスを見きわめようと検討を重ねてきました」と学院改革の意図を語る。
普通科は進路実現力を強化
専門学科はより広く深い学びへ
「不易」として守りたいのは、部活動が盛んで明るい挨拶のできる、さわやかな校風だ。「自慢の生徒たちです」と栗本校長は胸を張る。そして全国でも数少ない、普通科と3つの専門学科のある高校であり続けること。商業高校を出発点とし、専門性で地域に貢献できる人材を輩出してきた歴史を紡いでいく。
「流行」として新たにするのは、まず普通科を充実させて進学実績を伸ばすこと。かねてから英語学習の充実を図ってきた。ネイティブ教員によるロールプレイ授業、日本人教員による文法や英検対策、海外のネイティブスピーカーと対話するオンライン英会話を通して受験と実践に強い英語力を養っている。昨年は1年生で英検準1級、2級に合格した生徒も。
これに加えて、現在の普通科3コース「総合進学コース」「英語・国際進学コース」「医療・看護・理系進学コース」を改編。来年度からは、部活動と勉強を両立させる「進学クラス」と国公立・難関私大を狙う「特進クラス」の2クラスに集約する。
栗本校長は就任以来、自習室を充実させ、いつでも先生に質問できるよう職員室前に自習机を設置するなど学習環境を整えてきた。勉強する習慣が根付いた甲斐あって、近年は愛知県立大学、都留文科大学、明治大学、また地元名門私大の南山大学、椙山女学園大学、金城学院大学、愛知大学、中京大学などに合格者を出している。鵜飼保年教頭は「学習に自信をつけて、上位校をめざしてほしい」と言う。
専門学科も変わる。情報会計科はこれまで1年次は教養科目に重点を置き、2~3年次から専門の学びに進んでいた。来年度からは1~2年次で検定や資格を確実に取得し、2年次には「会計マスターコース」と「PCマスターコース」に分かれて、経営分析や広告制作などをより専門的に学ぶ。また大学入試に有利な上位資格にもチャレンジする。
食物調理科と家政科(被服・保育・食物から1分野を選択)は以前から地元企業や系列の修文大学・同短期大学部や附属幼稚園と連携してきた。地場産品の尾州織物を生かしたファッションショーや地元食品企業とコラボしての商品開発、系列学院の教育インフラを活用しての調理や保育の実習などだ。今後もこうしたつながりを強化し、深く広く学びながら地域の信頼を深めていく。また「さらに専門性を高めたい生徒の大学進学も応援します」と鵜飼教頭。充実した学びと親身な進路指導で「就職にも進学にも強い専門学科」の評価を高めたいという。
学力を伸ばし未来を広げるSHUBUNメソッド
修文女子高等学校では、すべての学科で学力を着実に伸ばす独自の教育を行う
高校生活を豊かにする部活動
男子生徒の参加でさらに活発に
改革のもう一つの柱は男女共学化だ。家政科を除く専門学科と普通科で男子生徒を迎える準備を進めている。新しい制服は男女ともに人気ブランド、EAST BOYによる尾州織物製。トイレはこれを機に女子用もウォシュレット付きにリニューアルする。
部活動も硬式野球部、男子ハンドボール部、男子サッカー部、eスポーツ部、ダンス部を創設して、いっそう活発になりそうだ。というのも同校は部活動に打ち込む生徒が多く、ソフトボール部、卓球部、陸上競技部は全国大会に何度も出場している強豪だからだ。県高校総体尾張支部予選では4年連続、女子総合優勝を果たしている。和太鼓部や吹奏楽部は地元のイベントや福祉施設でたびたび演奏し、地域に愛されている。
鵜飼教頭は「先輩が後輩を指導し、仲間と一緒に頑張ることが礼儀や友情を育み、落ち着いた校風の土台になっています。3年間、部活動も勉強も頑張ってほしいですね」と語る。
栗本校長は「男女共同参画社会の実現は進み、多様性を尊重する時代です。本校も男女がともに学び、尊重し合いながら成長できる学校に進化します。どんな生徒が集まってくれるか楽しみです」と期待している。
修文学院高等学校 https://www.gakuin-hs.shubun.ac.jp/