マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

設立100周年。「傍を楽にする人づくり」
「未来はつくるからオモシロイ」をキーワードに
主体性を育む教育に取り組む

京都明徳高等学校

クラブ活動も盛ん。ダンス部やバスケットボール部(男女)、剣道部(女子)、硬式野球部(男女)、ソフトボール部(女子)など。全国レベルのクラブも多い


今年10月23日に設立100周年を迎える京都明徳高等学校。100年の歴史の中で一貫しているのは、働くことを通して社会に貢献する生徒の育成。さらに、二宮庸介校長は「答えのない時代に社会に飛び立つ生徒たちには、まず主体性を育み、おもしろいと思える自分の未来をつくり出してほしい」と言う。親子2代、3代にわたる卒業生も多いという同校の、「変わらないもの」と「変わるもの」、そしてキャリア教育について二宮校長に伺った。


「利他主義」で
学校にもイノベーションを

京都明徳高等学校は1921(大正10)年、日蓮上人生誕700年記念事業として開校。当時は明徳女学校、その母体となる社団法人明徳学園は明治40年に、奉公や家の手伝いのために初等教育を受けられない子どもたちのため「京都私立子守学校」を設立。当時より女性の社会進出に対する意識が高かったことがうかがえる。また、その建学の理念は『明知を以て明徳を実践する』で、現代風に言い換えれば『傍を楽にする人づくり』なのだと二宮校長。

同校は2005(平成17)年に「働く人づくり日本一の教育機関」を掲げている。

「『傍を楽にする人づくり』とは、働くことで隣人を楽にしていくこと。生徒には『利己主義』ではなく、『利他主義』という意識をもってほしい。この建学の理念こそが100年経っても変わらないものなのです」

100周年を迎える今、「チャレンジ100」と銘打ち学校を変える取り組みを行っている。

「授業をおもしろくするためICTとしてスマホを取り入れて、保護者様の負担を抑えつつ生徒それぞれの関心を刺激するなど、さまざまな改革に挑戦しています」

2学科(普通科+商業科)4コースから成る同校。普通科は「みらい社会Ⅱ」(特進)、「みらい社会Ⅰ」(文理)(総合)の3コースで、多様な進路希望に応える。

「本校にはさまざまなタイプの生徒が入学してきます。そして、異なる価値観がぶつかって化学反応し、イノベーションを起こす。この多様性がいいのです」


2018年度より全教科にアクティブラーニング型授業の研究を開始。単なるグループワークに留まらず、生徒たちの主体性を引き出し、課題発見、問題解決につなげていく

「オモシロイのサイクル」が
主体性を育む

現在、高校への進学率は約99%で、卒業後は大学をはじめ短期大学、専門学校も含め進学する生徒の割合が高い。

「『小中高大』というルートが一つのセクターのようになっていると感じています。つまり、高校は大学に進学するためだけにあると見られています。しかし、本校では高校3年間で、主体性とともに大人になるために必要なものを全部教えなければならない、と思っています」

学校のキャッチコピーは「未来はつくるからオモシロイ」。

「平成までの時代は効率性、生産性、知識量、正確さ、合理性など、『答えのある世界』でした。ですから、教えられたことを身につければよかったのですが、令和の時代はそうではありません」

二宮校長は『世界株式時価総額ランキング』を例に、この30年間の社会変化について話す。

「1989(平成元)年は、トップ10中7社が日本企業で占められていました。ところが、令和でトップ10に入るのはAppleやAmazon、Facebookなど。これらに共通しているのは『IT』と『何かを生み出している』企業であること。これからの社会は『答えのない世界』。その答えのない世界で何かをつくり出していくことが重要なのです」

そこで必要なのが「主体性」だという。

「生徒たちは自分がおもしろいと思ったこと、興味のあることだったら自ら積極的に行動に移します。これが主体性の基本となります。まずは自分が興味のある『オモシロイ』ものやことから始め、やがて興味があるもの以外にも積極的に取り組むようになっていってもらいたい。私はこれを『オモシロイのサイクル』と呼んでいます。私はこのサイクルの半分を高校生のうちに身につけさせたいと思っています」

「未来はつくるからオモシロイ」。生徒たちは身につけた主体性で、自らの未来をつくり出していく。


(左)二宮 庸介 校長
(右)緑に囲まれた落ち着いた環境の校舎には、本格的な照明や音響設備を備えた学園ホールや、2018年に全面人工芝にリニューアルしたグラウンドなど、充実した施設や設備も

伝統のキャリア教育では
二度の文部科学大臣賞を受賞

キャリア教育に注力する同校。70年以上の歴史を誇る商業科では、賃借対照表や損益計算書を読み解き、企業の財務分析ができる力を養っている。また、商業科だけでなく普通科でも情報処理検定や簿記実務検定など、資格取得のための授業を展開中だ。「金融教育は普通科に通う一般の高校生にも必要ではないかと考えています」と二宮校長は話す。

また、学校として二度の「文部科学大臣賞」を受賞。その核となるのは、2007(平成19)年より取り組んできた「京都明徳キャリアウィーク」だ。これは、高1と高2の約600名が3日間かけて、「インターンシップ」(就業体験)と「スカラシップ」(大学入学体験)、「ボランティア」(環境教育、部下活動、福祉施設訪問)の3部門に分かれて参加するもの。

「学年の枠を超えて、協働的な学びが得られるのも特徴です」

最後に、生徒たちにどんな大人になってほしいのかを二宮校長に伺った。

「私は教員たちに、生徒の1回や2回の失敗は許すように伝えています。人生100年、多少の過ちは構いません。生徒たちは学校に『学び』に来ているのです。学んでいる途中であるがゆえ失敗は当然なのです。そのうえで生徒たちにはチャレンジし続けてほしい。そして、どんな仕事でも楽しんで取り組める、そんな大人になってほしい。そのベースをつくるのが本校での3年間だと思います」


制服もスポーツウェアもリニューアル。制服のデザインは国民的アイドルグループの衣装制作チームが手がけるブランドが担当。アイテムを含めると648通りものコーディネートが可能

京都明徳高等学校  https://www.meitoku.ac.jp