マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

天台座主 大樹孝啓大僧正が来校
生徒にメッセージ

駒込中学校・高等学校(東京都)

代表生徒による献灯・献花・献香。大樹天台座主が見守った


天台宗信仰の象徴的存在であり、最高位の僧正である大樹孝啓天台座主が5月11日、母校である駒込学園を訪れた。大樹天台座主は駒込学園の卒業生(昭和18年卒業・旧制中学部16回生)。勧学ホールで開かれた歓迎式典には各クラスの生徒代表が出席。そのほかの生徒は、教室でオンライン視聴の形式で参加した。
式典では合唱部や和太鼓部が歓迎の演奏を披露。訪問記念の講話では、大樹天台座主が在学当時の思い出や何事にも誠意を持って取り組むことの大切さを優しく生徒に語りかけた。


天台座主とは
天台宗の最高位の僧正

座主とは一座の主の意味で、最上位の者を指す言葉。天台座主とは、天台宗の最高位の僧正を表す。

日本天台宗の開祖・最澄の跡を継いだ義真和尚が天長元年(824年)、官命で天台座主に任命されたのが始まり。明治4年(1871年)に座主の任命制度は廃止されたが、明治17年(1885年)に私称として復活した。

座主に次ぐ地位であった次席探題の大樹孝啓大僧正は、第257世森川宏映天台座主の遷化に伴い、令和3年11月22日、第258世天台座主に上任。座主就任の挨拶のために皇居を訪れた機会に母校・駒込学園を訪問した。

歌と太鼓の演奏で
天台座主を歓迎

歓迎式典は、生徒代表の高校3年生、遠藤海さんの歓迎の言葉で始まった。

「今回は、座主猊下のお話を直接拝聴させていただけるということで、生徒一同心から感謝申し上げます。入学したばかりの1年生をはじめ、生徒一人ひとりが駒込学園が仏教校であることを自覚し、天台宗について学ぶことができる大変貴重なお時間になることと思います」と述べた。

続いて、合唱部と和太鼓部による「歓迎の演奏」が行われた。合唱部は駒込中学校の校歌、駒込学園の学園歌、合唱曲「ほらね、」の3曲を演奏。

和太鼓部は、締め太鼓という小さな太鼓のみで演奏する「〆ヘリソロ」と「新疾風(しんはやて)」の2曲を披露した。「疾風(はやて)」は和太鼓部のチーム名でもあり、躍動感溢れる演奏がホールに響き渡った。

心のこもった演奏の後は、代表生徒らによる献灯・献花・献香が行われた。次に学園歓迎の挨拶として、末廣照純理事長が登壇した。

「探題大僧正猊下におかれましては本日、皇居に参上され、天台座主にご上任されたことをご記帳・ご報告されました。そして、母校である駒込学園にご来校いただいたこと、学園の関係者一同、誠に光栄の至りと感激いたしております。また、学園の総裁、最高顧問にも快くご就任いただきました。猊下のお話を直接拝聴できる貴重な機会に恵まれましたことに篤く感謝を申し上げ、学園の歓迎の挨拶とさせていただきます」と述べた。


(左)合唱部は駒込中学校の校歌や学園歌を披露
(右)迫力ある演奏を聴かせた和太鼓部「疾風(はやて)」

座主猊下のお話
ものごとは一歩一歩進む
焦らず、真面目に誠意を持って
大樹孝啓 探題大僧正(圓教寺住職)

校歌と学園歌、そして優しい合唱曲。それに続く力強い太鼓の音色を聞き、腹の底から力が入る思いです。誠に申し訳ないのですが、私には校歌の記憶がありません。私が駒込学園に在学中は戦時中で、軍歌ばかりで校歌の記憶が消されてしまったようです。

私が在学していた当時、正門を入ると白い木蓮の木があり、美しい花を咲かせていました。また玄関には背の高い時計があったことを覚えています。皇紀2600年を祝う駒込中学の祝賀会では、合唱団として歌の発表をしたのも覚えています。

私は昭和18年に駒込中学校を卒業しました。その後、大正大学に進学したものの、軍需工場に動員されたり、比叡山の近くで軍の訓練にも参加したりしました。今思えば、あの時から比叡山に呼ばれていたのではないか、と思います。

私は頼まれたら嫌なことでも断らず、受けた以上はコツコツ一生懸命務めるようにしてきました。「しんどいな」と「いやだな」と思うことでも真面目に誠意を持って喜んでやる。そうした心がけも修行の一つと考え、これまでやってきました。

皆さんにお伝えしたいのは、ものごとは一歩一歩進むということです。左足を出して、次に右足を出したら前へと進めます。とにかく焦らず無理をせず「うさぎとかめ」のかめのように自分に与えられたことに真面目に取り組んでください。私にとってはその結果として、天台座主の上任に至ったと感じています。

今日は懐かしい駒込中学校の空気を吸わせていただきました。今日は盛大な歓迎の式典をしていただき、ありがとうございました。若い生徒の皆さん、勉強も楽しいことも精一杯やってください。立派に成長してご卒業されますようお祈りいたします。


学園の思い出などを生徒に語りかける大樹孝啓天台座主

世界平和の願いと
天台座主の言葉を胸に刻む

最後に、駒込学園学校長の河合孝允先生から、お礼の挨拶があった。

「本日は貴重なお話を伺うことができ、心より御礼を申し上げます。また、多くの天台宗のご高僧の皆様にもおいでいただき、駒込学園の誇りとする一日となりました。猊下が卒業された昭和18年は戦争真っ只中の時代でした。本校が在る東京・千駄木も三度の空襲に遭い、木造校舎は全焼。辺りは焼け野原となり、住居の跡さえない惨状でした。奇しくも今、ウクライナでは同じ状況となり、本校の生徒と同じような子どもたちが、命の危機の中で大変な思いをしています。生徒の皆さんにはウクライナに想いを馳せながら、世界平和の願いとともに、猊下のお話を胸に留めてもらいたいと思っております。そして、今日から新たな駒込の歴史を切り開いていきたいと思っています」と話した。

駒込中学校・高等学校 https://www.komagome.ed.jp


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