マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

「京都発世界人財」の育成を目指し
中高大連携による独自の教育プログラムを展開!!

京都先端科学大学附属中学校高等学校(京都府)

インドの生徒たちと自国の祭りの紹介などを通じて盛り上がった、海外オンライン交流


「京都発世界人財」の育成。これが、2021年度、学校法人永守学園が運営する京都先端科学大学と発展的統合を果たした、京都先端科学大学附属中学校高等学校の教育理念である。「世界を舞台に堂々と自分の意志で立ち、そして行動できる人を育てる」ため、充実の教育プログラムを提供し、世界中で多方面に活躍する人財を輩出してきた同校。昨年度からは中高大連携により、さらなる教育改革プロジェクトが推進されている。その取り組みについて、中学校教頭の山田尊文先生と中学部部長の竹村慎吾先生に話を伺った。


今年度より3年間「W担任制」導入
実践力を磨く多彩なグローバル教育

「京都発世界人財」育成を目標として同校が注力しているのが、多彩なグローバル教育である。

注目は、中学校で今年度から導入した3年間「W担任制」だ。英語を母国語とする教員と日本人の教員の2名が、担任としてクラスを受け持つ。毎朝のSHRにはネイティブ教員によるVocabulary Buildingを実施。ゲーム的な要素を取り入れたアクティビティを通して楽しみながら英語を活用する。

ネイティブ教員は体育祭や文化祭などの多くの行事にも生徒と取り組み、さまざまな場面において英語のみで生徒とコミュニケーションを図るので、「英語が当たり前」の環境を提供している。ネイティブ教員は中学校で4人、中高合わせると10人もが勤務しており、生徒へのサポートも手厚い。

さらに、2023年度はイマージョン授業を導入。これは、ネイティブ教員と日本人教員が組んで英語で美術や音楽、体育を教えるというものだ。

「英語に触れる環境をさらに充実させ、実践的な英語力を身につけていきます」と山田尊文中学教頭。

さらに充実させているのが、海外オンライン交流である。対象は、スウェーデンとインドの交流校の生徒たち。「インドとの交流では、希望者を募るとすぐに約30人集まりました。自己紹介したり、互いの国のお祭りについてプレゼン発表するなど、日本にいながらして異文化に触れる経験ができました」と竹村慎吾先生。

オンライン交流だけではなく、このコロナ禍にあっても高校国際コースでは7か月間と10か月間の長期留学を実現している。行き先はカナダとイギリスで、昨年に続き、予定通り今年も実施する。

また中学では全員がTOEFLを受験する。「『世界標準の英語力』を手に入れるために取り組んでいます」と竹村先生は語る。また生徒の視野を世界標準で広げようとするのも同校の魅力の一つである。というのも、毎年ゴールデンウィーク明けに、中高全学年が同日同時間帯に「世界一大きな授業」を実施している。テーマは教育や貧困、平和などグローバルな問題を扱い、クラスごとにディベートや発表などを行なっている。

山田中学教頭は「グローバル教育が評価され、2021年度から文部科学省WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業の拠点校に採択されました。今後も新たなカリキュラム開発に力を入れていきたい」と語る。


(左)年に1回、世界の教育や貧困、平和、SDGsなどについて考える「世界一大きな授業」
(右)採取したハチミツを瓶詰めにして瓶に貼るラベルの絵も生徒が描き、文化祭で販売

ホンモノの経験に触れ
自らの適性を深く考える「地球学」

グローバル教育以外にも、「生きる力」を身につける「地球学」に注目したい。「地球学」は教科横断的な探究活動を通じて、学ぶことの意味や喜びを知り、自らの適性について深く考えるというものだ。

これまでに、深泥池や枕状溶岩の観察などのフィールドワークからニワトリの解剖など、さまざまなプログラムを実施してきた。学内にあるKUAS菜園でトウモロコシやスナップえんどう、白菜などの栽培も行なう。はちみつプロジェクトでは、養蜂箱を設置してハチミツを採取し、瓶詰めにして文化祭で販売した。

「蜂の生態に興味をもつ生徒、瓶に貼るラベルのデザインが得意な生徒、販売でコミュニケーション力を発揮する生徒とそれぞれの強みがよくわかります。プロジェクトを通して、自分の適性に気づくきっかけとなってほしいと考えています」と山田中学教頭。

また、今年度は中学生の田植えプロジェクトも予定。こちらは附属の京都先端科学大学のバイオ環境学部の田んぼで実施するもので、附属中学校高校となって、大学の持つリソースを活用することで学びの幅がさらに広がることが期待できる。

学年末には、地球学プレゼン大会を開催。生徒一人ひとりが「地球学」で学んだことを発表し合う晴れの舞台。中3は自分の好きなテーマを発表し、卒業論文にまとめる。

「正解のない課題に対して果敢に挑戦し、自分なりの『解』を見つけて、他者に伝える喜びを感じて自信を持つ。究極には『生きる力』をつけてほしい」と山田中学教頭は期待を寄せる。


(左)中学生と高1が対象。京都先端科学大学工学部の教授を招き、ものづくり講座を開講
(右)ハイレベルな数学の難問にチャレンジし、その面白さについて探究する「超数学」

枠組みにとらわれない
独自のSTEAM教育

同校はScience、 Technology、  Engineering、 Art、 Mathematicsの総称であるSTEAM教育に独自の付加価値をつけているのも特徴だ。その一貫としてTechnologyやEngineeringでは、「ものづくり講座」を開始。京都先端科学大学の先生方の協力を受けながら、ロボット製作など新たな教育創造を実践している。

このほかにMathematicsに関しては特別講座「超数学」を展開している。大学受験を目的としているのでなく、純粋に数学を探究するために難問に挑戦するという講座だ。この講座は、自由参加ではなく数学に前向きに取り組む姿勢・意欲と一定の実力が必要となる。受講生は数学グランプリや数学ジュニア・オリンピックに出場する生徒も多い。高校にも「超数学」講座があり、難関国公立大学への合格者を輩出している。

同校のSTEAM教育は従来の枠組みにとらわれない点が独創的である。例えば“E”ならEntrepreneur(起業家)のEとしてとらえ、永守重信理事長がCEOを務める日本電産本社を訪問し、社員へインタビューする。また“A”をAgriculture(農業)のAととらえ、校内のKUAS菜園や田植えプロジェクトを推進する。ほかにもSportsやMedicalなど、その学びは無限の広がりを感じさせる。

グローバル教育に「地球学」、そしてSTEAM教育。いずれも同校らしさを付加した教育は、ただ単に大学進学だけを目指すのでなく、中高時代に「適性」を見極め、伸ばす。さらに「強み」を自信に変えて、最終的にはいかに社会で貢献し活躍できるか。そのための学びを経験できる同校の生徒たちに明るい未来を感じることができた。

京都先端科学大学附属中学校高等学校 https://www.js.kuas.ac.jp/


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