マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

問いに向き合う力を養い、自己を見つめる
他者を照らす「燈台の光のような人」を目指して

賢明女子学院中学校・高等学校(兵庫県)

世界遺産である姫路城を近くに、静かな環境で学べる賢明女子学院の校舎


1951年、聖マリー・リヴィエが創立した聖母奉献修道会を母体とする賢明女子学院中学校・高等学校。2021年の創立70周年に向けてさまざまな取り組みを行ってきた。2019年にはSDGsに取り組む“Be Leaders”がスタート。そして2022年度からは、中高6年間で体系的に学ぶ探究活動“Create the Future”が始動。今回は、“Create the Future”のひとつでもある「クロススタディ」の授業を取材し、広報主任の松井貴弘先生と広報の橋本久美子さんに話を伺った。


中高6年間で学ぶ探究学習
“Create the Future”がスタート!

——2021年度に創立70周年を迎えられ、図書館メディアセンターLIBRAなど、様々な改修工事をされたと伺いました。

橋本久美子さん はい、コンピュータルームや400席以上の大教室、高校生専用の自習室などが新しくなりました。なかでも図書館メディアセンターLIBRAは、以前の図書館の3倍の広さがあり、約5万冊の蔵書を擁しています。勉強コーナーやくつろぎコーナー、授業やグループ学習で活用できるラーニングコモンズ等があります。


改修工事を施し以前の図書館の3倍の広さになった、図書館メディアセンター「LIBRA」

——そのラーニングコモンズで、今回のクロススタディの授業が行われました。これは、今年度から始めた探究活動プログラム“Create the Future”のひとつであると伺いました。まずは“Create the Future”についてお教えください。

松井貴弘先生 以前からあったクロススタディやENAGEED CORE、卒業生VISIT等を集約し、進路探究まで体系的にまとめたものが“Create the Future”です。すでに、SDGsを扱った“Be Leaders”というプログラムがあり、自分たちで何ができるかを考え、取り組んでいこうというのが狙いでしたが、これは希望者のみでした。そこで、全学年でカリキュラムとして取り組むために“Create the Future”を設けました。

——その狙いはどういうところにありますか。

松井先生 問いに向き合う力を育てることが狙いです。現在進行形でさまざまな問題に向き合い、社会に出てからもそれを継続発展させられる力を養ってほしいですね。そのためには、様々な観点から学びを広げ思索を深めることが必要です。

橋本さん そうやって、中高の6年間を使って自分の将来を見つめるのがこのプログラムです。

学ぶ楽しさを経験できる
中1のクロススタディ

——その中でも今回はクロススタディの授業を取材させていただきました。これはどういうものですか。

松井先生 クロススタディは中1のプログラムで、“Create the Future”のスタート地点になるものです。これまでは、ハワイ文化やDIY、蚕の観察等、教員が興味ある分野を教材にしてきました。

——目的はどこにありますか。

松井先生 学ぶ楽しさや、学問を「知る」ことです。従来の授業のようなテストの評価を気にするしばりをなくした、自由な学びを経験することが目的です。

——今回の授業で生徒の反応はどうでしたか。

松井先生 女子生徒は協働して互いに成長する学びを得意としていますが、それに加えて今年の中1はコミュニケーションを取るのが上手です。ディスカッションも盛んで高め合いながら進めていくことができていました。

—— “Create the Future”について、今後の目標があればお教えください。

橋本さん このプログラムの学びを通じて、自分のことや適性を知り、進路探究へつなげていきたいですね。

松井先生 生徒たちが問いに向き合い、自分を取り巻く世界に興味を持ち始めたという声を聞けることが目標です。「燈台の光のように」他者を照らし、他者に尽くすという奉仕の精神が本校の教育理念です。そのためにも、正解のない問いから逃げずに、向き合う力を磨くことは大切だと考えています。

——本日はありがとうございました。


(左)2021年度に開講されたクロススタディの「DIY入門」。つくる楽しさを共有
(右)クロススタディ「お城の中の賢明からお城を学ぼう」

【クロススタディ】
「ブランディング・マーケティング」を
学び、プレゼンにも挑戦

2022年度から始まった、探究活動“Create the Future”。その一環として取り組んでいるのが、中1で学ぶクロススタディだ。

今年度の3講座は、「ブランディング・マーケティング」「パラスボーツ体験」「ゲームプログラミング」。今回は、その中の「ブランディング・マーケティング」の授業について取材した。

当日は、「ブランディング・マーケティング」の最終日。これまでに、市場に出回る商品を消費者に買ってもらうにはブランディングが大切であること、そのためには消費者が求めるものを調査し、その結果を分析、商品開発に生かすこと等を勉強した。そして、いよいよ最終日には、リンゴをテーマに4人ずつの8班に分かれ、自分たちが開発した商品についてプレゼンを行った。

1班目は、「人それぞれ合うリンゴは違うので、『貴方にとって一番のリンゴを……』をキャッチコピーに決めました。リンゴの赤みと緑の色をイメージしたロゴもつくりました」と発表。別の班は「アンケートをとるとリンゴを好きな人は多く、糖度15度ぐらいが人気で、サンふじが一番好まれているようです。その結果から、甘みが強く果汁も多く、鮮やかな色で傷のない実のつまったリンゴを開発しました」とプレゼン。ほかにも、蜜の工夫を施したものや農薬不使用、肌にいいものなど、個性的なリンゴの発表が次々と行われた。

すべての班が終わると、1人2票ずつ、プレゼンの良かった班に投票して授業は終了した。


8班に分かれ、独自性のあるプレゼンが活発に行われたクロススタディの授業風景

松井先生は「架空の商品を考えるのは難しかったですが、アンケート結果を生かし、イメージカラーやキャッチコピーを考えて、いいブランディングができたと思いました」とコメント。中学1年担任の萩原七恵先生も「グループのメンバーはクラスが違うので初対面同士ですが、相手を思いやってコミュニケーションを取りながら学べたと思います」と感想を述べた。

賢明女子学院中学校・高等学校 https://www.himejikenmei.ac.jp/


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