未来社会を切り拓く
「プログレッシブ政経」「IT医学サイエンス」2年目がスタート!
春日部共栄中学校・高等学校
2003年(平成13)年に「至誠一貫」を建学の礎として開校した春日部共栄中学校は、今年度開校20周年を迎えた。そんな同校が昨年度よりスタートしたのが「プログレッシブ政経」(以下、政経)と「IT医学サイエンス」(以下、IT医学)の2つのコースだ。国際政治や金融、プログラミングなどの実学を中学生のうちから身につけ、未来社会を切り拓いていくことを目標とする両コースの1年目の成果と今後の展望について、中高一貫部部長の牟田泰浩先生と中高一貫部副部長の淡川直樹先生に伺った。
中学校では日本初!
「コードコンバット」導入を決断
2つのコースは中1から高2までの5年間、専門性の高いプログラムを実施している。「政経」では、中1と中2で専門家から「金融教育」「国際政治」などの基礎を学び、中3で「簿記検定」といった検定試験へとつなげる。高1以降は、研究論文、プレゼンと、より発展的になっていく。
プログラミングにも力を入れており、「IT医学」では今年4月に「コードコンバット」というプログラムを導入した。
「『コードコンバット』はプログラミング言語『Python(パイソン)』等を学ぶためのソフトで、世界で2000万人以上が利用していますが、日本の中学校としては本校が初めて導入することとなりました。現在中2が利用していますが、ゲーム感覚で楽しくPythonを学ぶことができるので、授業時間外でもよく使っているようです」(淡川先生)
「生徒たちにプログラミング言語を書かせるためのソフトを探していた」という淡川先生。10種類ほどのソフトを自ら体験して導入を決められた。この「コードコンバット」、昨年8月に日本でのライセンスを取得したばかりだった。現状に満足せず、常に新しいものを取り入れようとする学校の熱意を感じた。
実地での企業研究が
経営的な視点を育む
昨年に行われた中1の「政経」について、授業の様子を伺った。
「このコースでは国際政治や金融などを学びます。講義には埼玉りそな銀行の行員や卒業生である東大の大学院生に来てもらい、金利やライフプラン、株式のしくみや経済学、金融の基礎について講義を受けました」と淡川先生。
中2の校外行事では1年間の学びの集大成として、『レジャーランドの経営を立て直そう!』というテーマで、実際にレジャーランドに行き、企業目線で売り上げを伸ばす方法を考えるなど企業研究にも取り組んだ。
「入場者数や負債、賃借対照表などのデータを見て、経営上の問題点を挙げます。そして改善点を株主に説明できるようにします。生徒からは『食事できる場所を増やしたほうがいい』『入場料が高い』『主な客層が子どもなのに、おみやげものに子ども対象の商品が少ない』といった意見が出ました。経営的な視点でレジャーランドを見られるようになったのには驚きました」(淡川先生)
ほかにも、裁判官・原告・被告・弁護人に分かれ、国際紛争をテーマにした模擬国際裁判やディベート等も行われている。
カブトムシや植物を育て
先端の情報技術を学ぶ
「IT医学」は、「数学力を軸に各分野の研究者や開発者としてリーダーシップを発揮できる人材を育成」することを目標としている。中1では年間を通して「カブトムシの研究」「水耕栽培」で、観察と実験の基礎を学ぶ。
「約80匹のカブトムシを育て、体重の変化や体の構造、飼育密度が成長に及ぼす影響などについて観察や解剖をしたり、仮説を立てたりしました。『水耕栽培』では種まきから収穫までを行い、土耕栽培との違いやLEDなどの光の当て方による成長の違いなどを観察しました」と淡川先生。
「カブトムシは今2世代目ですが、将来的には春日部共栄独自の系統を作りたいと考えています。何十年にもわたって本校だけで繁殖を繰り返したらどんなDNAをもったカブトムシができるのか、楽しみですね」と牟田先生も目を輝かせる。
一方プログラミングにも多くの時間を費やし、実際にモノを動かすことを体験する。指導するのは情報経営イノベーション専門職大学やIT企業の社長などの専門家。さらに、中3で情報技術者試験などの国家資格に挑む予定だ。
「生徒たちが社会で活躍する頃は少子高齢化がますます進み、社会構造も変化しているでしょう。未来社会を担うのは生徒たちです。AIを使いこなし、未来に役立っていってほしいと考えております」(牟田先生)
文理融合で幅広く学ぶ
実学と座学が重なりさらに深化
2つのコースは文系理系に分かれていると思われがちだが、そんなことはない。「政経」でも受講可能な「IT医学」のプログラムはあるし、その逆もある。淡川先生は言う。
「たとえば『政経』でもPCの基本操作やプログラミングをやりますし、希望者には医学入門講習の受講も可能です。『IT医学』ではトレーディングゲームや国際政治、株式市場体験のプログラムも学びます。生徒たちには文系理系関係なく、幅広く学んでほしいと考えています」
1年目を終えて課題も見えてきたという。
「中1、中2の頃は目の前のプログラム(実学)だけしか見えていないと思います。しかしこの実学は、国語・数学・英語・理科・社会という普段の座学の授業にも大きく関わっています。実学と座学が重なり合っていることに気づき、さらに学びを深めていってほしいですね」と淡川先生は語る。
「グローバルリーダーズ」も2つのコースともに重要なプログラムだ。
キャリア教育や海外研修などの異文化体験で、「人間力」を養う。牟田先生は、「来年以降、高1で海外研修を行う予定です。実践的な語学研修を目的とするだけでなく、他国の金融への取り組みや文化施設の研究をします」と教えてくれた。
最後に1年目を終えて今後の展望について聞いてみた。
「中1と中2は知識や基礎的なことを身につけることを重視しますが、中3以降は学んだことを外部に向けて発信してほしいと思います。資格取得など、外部の試験にも挑戦していってほしいですね。そして、どんどん外部に評価してもらいたいと思います」と淡川先生は語る。
挑戦はこれからも続いていく。
過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/east/2022_7k_kyoei/
春日部共栄中学校・高等学校 https://www.k-kyoei.ed.jp/