男女共学化を機に進学指導をバージョンアップ
多様な進路実現で、“新時代”がスタート
修文学院高等学校
創立82年目を迎えた愛知県一宮市の伝統校。学院訓「推譲・明朗・強健」のひとつ「推譲」は、他人を推して、地位や名誉を譲ることを意味する美しい言葉だ。女子商業学校として開校し、女性の進学率や社会進出の高まりを背景に、普通科の新設や専門学科の改革を積み重ねてきた。そして2022年には、男女共学化で修文学院高等学校として新たなスタートを切った。近年は普通科の進学実績が好調だが、教師陣や指導体制を強化することで国公立大や難関私立大に挑戦する生徒を育てている。その取り組みと、共学化したばかりの清新な雰囲気を取材した。
2022年に男女共学化
学習・進学指導の個別最適化を実践
前身は、1941年に開校した一宮女子商業学校。愛知県一宮市出身の医師で政治家だった創立者・吉田萬次氏が、地元の商工業界で活躍する女性の育成をめざし、私財を投じて設立した実業学校だった。その後、普通科を新設し、専門科は情報会計科、家政科、食物調理科に発展して、幅広い分野に卒業生を送り出してきた。
昨年はこれまで以上の大きな改革、男女共学化を実現し、入学者数は前年度2倍強の410人超えに。今春は500名を超える生徒が入学し、生徒や保護者、地元中学校が修文学院高等学校に寄せる期待は高まっている。
特に普通科の志願者数・入学者数が伸びており、男女共学化と同時に部活動と勉強を両立させる「進学クラス」と、国公立大・難関私立大を受験する「特進クラス」の2クラスに改編したことも注目を集めている。
普通科主任の平原澄夫先生は、「普通科の英語・数学の授業は習熟度別にクラス分けをし、得意科目は先取り学習、苦手な科目には手厚い指導が受けられる環境です」とその特色を説明する。
このクラス分けは、定期考査のたびにテストの結果に従って改編される。緊張感があるが、励みにもなり、何よりも学力に合った学習ができる。ホームルームクラスの枠を超えて生徒が交流できるので、刺激し合い、意欲が高まっている様子も伺える。
進路課長・進路指導主事で数学教諭の三澤徳久先生は、理系進学の躍進にも期待を寄せる。
「女子校の風土のひとつに文系進学が多いことがありましたが、共学化で男女ともに理系進学に手を挙げやすい雰囲気になってきました。理系女性が活躍できる職場は増えていますから、応援していきたいです」
理数系教育の強化は新生・修文学院高等学校のテーマのひとつで、今春、大学と同等の設備を有する理科実験室が完成した。理科教諭の會田好希先生は、「実験で見て、触れることは刺激になり、学習が定着します。生徒にそういう体験を数多く提供したいです」と話してくれた。
上位校めざして合格力を鍛える
「SSSプロジェクト」が始動
普通科・特進クラスは2人担任制で、いずれも進学指導経験の豊かな教師たちだ。今春入学の特進クラス担任の一人戸田正智先生は、東大大学院の博士課程在籍中に学校教育現場を志願して教員免許を取得した経歴をもつ。中学校で25年間の教員生活を経て、新生・修文学院高等学校に赴任した。「生徒はまじめで学習に意欲的。入学時の学力を伸ばして、希望の進路を実現させてあげたいです」と話す。
もう一人の皆塚昌洋先生は、東大・京大に多くの合格者を出す愛知県の名門男子校・海陽学園を経て赴任した。「地域の方たちが生徒を信頼し、見守っている土地柄を感じます。先生方の指導も熱心で、学習環境が充実していますね」と手応えを感じている。
また、特進クラスは土曜日の午前にも授業があるが、普通科・進学クラスの生徒も含めて希望者に土曜午後も授業を行う取り組みが始動。受験合格を意識した「SHUBUN SAKURA SAKE」の頭文字をとって「SSS(スリーエス)プロジェクト」と名付けられている。
同校では女子校時代から自習室が充実され、定期考査前には勉強会を実施するなどの親身な学習指導で進学実績を積み上げてきた。さらに創立80年を超える伝統校の強みで、学校推薦枠を活用して進学した生徒も多かった。これに加えて「今後は、より積極的に一般入試や大学入学共通テストに挑戦してもらいたいです」と平原先生。修文学院高等学校の進学指導はアグレッシブに進化している。
建学の精神が息づく専門3学科
進学・就職に強く、進路は多彩
商業学校としてスタートした同校は、普通科と3つの専門学科である情報会計科・家政科・食物調理科を併設する特色ある高等学校だ。
情報会計科のルーツは建学時の商業科で、ビジネスの近代化に合わせて名称と学習内容をアップデートしてきた。1年次から検定や資格に挑戦し、2年次からは「会計マスターコース」と「PCマスターコース」に分かれて専門的な学びを深める。
卒業生は即戦力として地元企業から望まれることが多く、また、在学中に取得した簿記や情報処理検定を入学選抜で評価する大学が増えており、経営学部や経済学部に進学する道も広がっている。
食物調理科と家政科(女子のみ。被服・保育・食物から1分野を深く学びます)は、地元企業との産学連携でアパレルや食品の商品開発に取り組み、たびたびメディアで紹介されている。こうした実績と知名度があるため、就職実績は堅調だ。系列の修文大学・修文大学短期大学部に進学し、さらに専門性を高める生徒も多い。
この修文大学・修文大学短期大学部は、管理栄養士や製菓衛生師、幼稚園教諭、保育士、臨床検査技師、看護師などのビジネス系国家資格を取得できる大学として人気が高い。特に修文学院高等学校からの入学者には、推薦制度や入学金全額免除などの制度があり、同校のメリットのひとつとなっている。
部活動は全国大会常連の陸上競技部、弓道部、ソフトボール部、卓球部などの強豪に加え、新設のダンス部、eスポーツ部、男子硬式野球部、男子サッカー部、ハンドボール部も人気だ。
部活動にも勉強にも打ち込み、多様な進路が実現できる、修文学院高等学校の新時代が始まっている。
過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/east/2022_7shubun/
修文学院高等学校 https://www.gakuin-hs.shubun.ac.jp/