マナビネットオープンスクール2024 ●掲載:塾ジャーナル2024年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

理系志望者増で、東京理科大合格者が倍増
人間教育と進路指導の両輪で、実績を伸ばす

恵泉女学園中学・高等学校

2024年春の大学合格実績で、東京理科大学に20名合格。昨年の13名に対して倍近い合格者を出した恵泉女学園中学・高等学校。東京大学、東北大学、神戸大学や慶應義塾大学、早稲田大学の理系に合格者を出すなど、難関大学の理系進学を伸ばしている。
これまで、キリスト教に基づく豊かな人間教育に高い評価を得ていた同校だが、そうした伝統の教育方針に加え、手厚い進路指導を行うことによって、大学合格実績が向上。
人間教育と進路指導の両輪がうまく噛み合い、生徒の希望する進路へと導いている。


進路指導を「見える化」
面談でモチベーションアップ

厳かな雰囲気の中で行われる礼拝。礼拝では、生徒が日頃感じたり考えたりしたことを文章にまとめ、「感話」として他の生徒の前で述べる。感話で生徒は自分と向き合い、思うことを言葉で表わす。それを真剣に聞くことで、他の人の考えを受け止める「共感力」も育まれる。

こうしたキリスト教を基盤とする「心の教育」には定評のある恵泉女学園だが、「その一方で『進路指導はどうなっているのか』という声が聞かれることも多くありました」と、昨年高校3年生の担任だった花岡尚子先生は話す。

そこで、同校では従来の進路指導に加え、ここ数年増えてきた理系志望の生徒へのサポートを強化。進路指導の「見える化」を進めてきた。

この春の卒業生には、高2進級時の理系・文系に分かれるタイミングで、理系を選択した生徒全員に面談を行った。

昨年の高3の学年代表だった大光(だいこう)慎太郎先生は「正直、それまでは理系進学者が少なかったので、どう勉強したらいいのか、生徒はイメージしにくかったと思います。そこで生徒と理系科目の教員が面談し、これからやるべき学習内容を確認しました。生徒は自分の意気込みを言葉にすることができ、意欲的になれたことも大きな成果でした」と話す。

同校では、普段から生徒と教員の面談の機会を多く設けている。高3では、面談回数は年5〜6回におよび、それが生徒のモチベーションの維持に繋がっている。

理系の面白さに気づく
きっかけづくり

理科や数学に興味をもってもらうおうと、さまざまな取り組みを行っている同校。「理科好き増やそうプロジェクト」では、夏休みの自由課題として「結晶をつくろう」などのコンテストを実施。生徒は夏休み中、家庭でミョウバンなどを用いて結晶を育てる。集まった結晶は審査され、最優秀賞や「校長賞」ならぬ「校長晶」などの賞が贈られた。

中学生向けのイベント「サイエンスデー」では、毎年中3で行う理科の探究実験の成果の紹介などを行ったが、今年3月には東京理科大学との高大連携プログラムとして、同大学の大山口菜都美先生がトポロジー(位相幾何学)や結び目理論について講演とワークショップを行った。

「2022年に行った、東京都市大学と日産自動車と恵泉女学園の合同プログラムでは、大学の先生や女性エンジニアの方から、エンジンの仕組みについて学びました。それをきっかけに材料工学に興味をもち、今年、東京理科大の先進工学部に進んだ生徒もいました」と花岡先生は話す。

その他、課外活動の「サイエンス・アドベンチャー」では「化学班」「生物班」「物理班」「コンピュータサイエンス班」に分かれ、本格的な研究に取り組んでいる。コンピュータサイエンス班での活動を経て、慶應義塾大学の環境情報学部に進学した生徒や、授業内のテーマ研究の成果をアピールし、総合型選抜で東北大学理学部に合格した生徒も出てきている。

教員のチームワークが
生徒の進学実績を後押し

「理系の面白さに気づくきっかけづくりを整えたことは、理系進学者増加の追い風になっていると思います」と大光先生。「とはいえ、勉強しないと受かりませんので、定期的に模試の振り返りを行い、弱点克服に意欲的に取り組んできました」と語る。

担任は生徒の模試結果を逐一チェックするのに加え、教員団の中でも生徒の学力の推移について話し合う機会を増やした。それを担任が面談でフィードバック。1人の生徒に対し、多くの教員からのアドバイスが集まるようになった。また、模試結果は高3の教員だけでなく、下の学年の教員にも見てもらうようにした。

「高3の模試の結果を下級生の先生も見ることによって、『あの子がここまでいくのなら、 今教えているこの子もこういう風に伸びていける』と参考にしてもらうことができました」と花岡先生。

国公立大個別試験への出願先についても、高3の教員全員による検討会を開き、教員一丸となって知恵を絞った。「私たち教員のチームワークも進路指導には大切だということを今回すごく感じました」と花岡先生は話す。

理系への合格者が増えると、文系の合格者は減ることが多いが、同校では文系の合格者は変わらず、むしろGMARCHの合格者は増えた。理系だけでなく、文系を目指す生徒へのサポートも手厚くしている。

大光先生は「昨年は学校推薦型を利用する生徒が少なく、第1志望の合格を目指し、最後まで諦めず一般入試に挑戦してくれました」と語る。

同校の総合型選抜対策では、高3生のクラス以外の教員も小論文の指導に携わる。「『感話』に取り組んでいることで、生徒たちは文章を書くことに慣れています。文章量が多くても苦手意識がないようです」と花岡先生。

「『感話』を通して、生徒は自分の意見を述べる機会や、さまざまな考えに触れる機会を得ています。受験はあくまでも通過点で、人生のゴールではありません。人間教育と進路指導の両方を融合させることで、将来にわたって学び続ける姿勢を身につけてほしいと思います」と2人の先生は話している。


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