マナビネットオープンスクール2024 ●掲載:塾ジャーナル2024年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

一人ひとりの心を育てることが最大のミッション
学びの環境を徹底的に整備、学力と精神の成長を促す

大阪信愛学院中学校高等学校

大阪信愛学院は、フランスの「ショファイユの幼きイエズス修道会」から派遣された4人のシスターによる孤児養育施設が母体となっている。弱者の立場になって考えること、それぞれの違いを認め受け入れ合うという価値観を、学園生活を通して育んでいく。それがカトリック精神に基づく「一人ひとりを大切にする信愛の心の教育」であり、同校の真髄かつミッションだ。2022年度から共学化され3年目を迎えた今年、全学年が男女クラスとなり、教育改革が実施されている。その詳細や各コースについて、中学校・高等学校教頭の矢嶋哲先生にお話を伺った。


大切なのは〝学びたい〟という意欲
学習環境は新たなフェーズへ

教師も生徒も一丸となって新しい学校づくりを進めている大阪信愛学院。共学化した2022年からはさらにブラッシュアップされ、新しい取り組みが始まった。何より生徒数が増えたことで「全体の活気が増した」と矢嶋哲教頭先生。中高ともに「学びのコンパクト化」を掲げ、「信愛学院内ですべての学びを完結させるため学習環境を徹底的に整えた」という。

中学校では今年から「ハイレベル進学講座」がスタートした。中学校には「スーパー文理コース」「学際コース」の2つコースがあるが、この講座は前者に特化している。普段の高レベルな学習に加え、もう1段階上の入試問題演習とそのアウトプットに重点を置いた勉強を積み上げていく。学際コースでは「個別の学びの最適化」を 打ち出し、週3日の「信愛講座」には外部指導者を迎えて英語と数学の演習問題を行う。加えて月1回、生徒と教室コーディネーターが個別学習面談を行い、進捗状況を確認しながら各生徒にあった学習を進めていく。

放課後には両コースともに利用できる「自主学習セミナー」を設け、自習室内に中学校専用のエリアをつくり、生徒たちが自由に勉強できる場とした。質問に答えてくれる講師陣が常駐し、毎日18時まで開講している。さらに進路指導は、中学1年生から保護者と一緒に大学入試を見据えた内容で実施されている。

高校には「特進コース」「総合進学コース」「看護・医療コース」の3コースがある。特進コースでは、校内予備校として週2日、英語と数学の習熟度別授業をおこない、大手予備校の協力を得ながら、高校1年から大学の入試問題を解いていく。高校2年の夏休みには大学入学共通テストをテキストとする短期集中講座も開催する。

また、全コース共通の人気の取り組みに「学習メンター制度」がある。難関大学の現役学生を数名招き、放課後の16時から20時まで食堂を開放。勉強への質問や進路相談が自由にできる。

矢嶋教頭はこれらの取り組みを始めた理由として、「生徒たちは本当に学びたいという意欲をもっているので、その環境をわれわれ大人が用意すべきだと考えたのです。“学ぶ方法”をたくさんつくることこそが、生徒たちにとって重要なことだと考えています」と語った。

中1からの着実なステップで
英語コミュニケーション力を養成

英語と世界を学ぶイベントも多い。中学1年では「イングリッシュキャンプ」、2年で「ブリティッシュヒルズ」、3年で「台湾語学研修」が用意されている。

イングリッシュキャンプは大阪市の「YOLO BASE」に1泊する。日本語も使いながら英語の学習に触れ、海外の方とゲームをするなどチームビルディング的な要素が大きい。2年生では福島県のブリティシュヒルズを訪れ、本格的な英語環境に身を置く。ここでは滞在する2泊3日の間、生活もすべて英会話のみとなる。

こうした国内でのステップを踏んで、3年生で行われる台湾での3泊の研修につなげていく。台湾は英語教育が進んでおり、中学生でほぼ英語を喋ることができる。日本に近く移動時間も短く時差もないため、安心して勉強に取り組める環境だ。現地で英会話ができる同世代の生徒たちと友だちになり、帰国後も彼らとのつながりで、英語でのコミュニケーションが続いていく。

それらの段階的な体験が日々の英語学習への意欲につながり、生徒が「もっと喋りたい」と思える仕組みとなっている。

高校ではオーストラリアをメインとする海外語学研修があり、夏休みの18日間短期留学と、3ヵ月のターム留学がある。高1の春にはネイティブ講師が来校し、2日間生徒たちとさまざまなディスカッションを行う。5人の生徒に1人のネイティブ講師というグループで、日本文化やSDGs、世界の諸問題などをともに考え、英語でコミュニケートできる力を養っていく。

独自の探究活動を推進
想像の先にある創造を掴むキャリア教育

探究学習に力を入れている同校には、国際的な人材を育てる「グローバル探究」、新たな社会(Society 5.0等)を考える「未来探究」、そして「総合的な探究の時間」の3つがある。総合的な探究には高1で「哲学ワークショップ」、高2で「企業インターンワーク」があり、各企業からのミッションや課題解決をグループで取り組む。高3では連携する12校の大学の教員からテーマを与えられほぼ全員が取り組む。各テーマの研究を大学の先生と一緒に進めていき、最終的には1冊の卒業研究論文としてまとめていく。

キャリア教育の一環としては、毎年高校生を対象に大学の見学ツアーが開催されている。コースごとに訪れる大学を選び、各キャンパスの説明や卒業生の話を伺う。連携する12校の大学ツアーでは体験授業も可能だ。2年生では実習体験があり、看護・医療系志望者には、連携する大学病院で本格的な実習や薬剤師体験などもある。国公立大医学部へ進学する生徒もおり、今年は宮崎大学医学部への合格者も出した。オンラインでの学部学科別体験も可能だ。高校3年ではさまざまな大学が出展している「学び博」などのイベントで、志望大学の相談会にも参加ができる。

生徒の学習環境を整え、彼らの成長に惜しみないサポートを続ける大阪信愛学院中学校高等学校。カトリック校としてのミッションを語る矢嶋教頭から、生徒一人ひとりを大切にする思いが伝わってきた。


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大阪信愛学院中学校 https://junior.osaka-shinai.ed.jp/
大阪信愛学院高等学校 https://high.osaka-shinai.ed.jp/