永遠に未完の塾学『急激に増加している不登校』
俊英塾 代表 鳥枝 義則
懇意にしている地元の中学校の先生と話していて、最近、目に見えて不登校の子が増えているという話を聞いた。不登校になるのはおとなしい子で、成績も悪くない子どもが多いとも聞く。
「塾ではほとんど欠席者はいないのに、なんか変だな。ひょっとすると、最近こういう子が増えているのと違うかな?」と思って、塾の授業中「最近、君たちの学校で不登校の子が増えてない?」と尋ねると、「1学年で10人以上は学校に来てないよ」との答え。
その答えにびっくりして、市内6中学×3学年の子たちに順番に聞くと、尋ねた全員が一様に、「1学年で10人以上、確実に来ていない」と声をそろえての返事。少子化で、どの中学校も学年に2クラスか3クラスしか在籍生徒はいないのに、それにしては長期欠席者の数が異様に多い。何が起こっているのかと、あらためて私は今まで予想もしていなかった自分の迂闊さに気づくことになった。
学校の先生は、精神科か心療内科の受診を勧めるそうだ。親御さんは、藁にもすがる思いで医師に助けを求めることになる。ところが、具体的な病名を告げられると、パニックになる人がほとんどで、あまり効果がないとも聞く。
子どもの心の症例名には流行りがある。
30年ほど前は、LD(「聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する」能力に困難が生じる発達障害)なる語が流行した。症例を学習障害と類型化して、治療に当たる医師が続出したが、いつの間にか学習障害の語は聞かなくなった。
次に流行った症例名はADHD(注意欠如・多動症)だ。普通の子の発達水準と比較して、注意を持続させることが困難であったり、順序立てて行動することが苦手であったり、落ち着きがない、待てない、行動の抑制が困難であったりなどといった特徴が持続的に認められ、そのために日常生活に困難が起こる症例である。この語も最近は見かけなくなった。今は、診療時に発達障害とか自閉スペクトラム症という語がよく使われているようだ。
不登校や朝が起きられないという症状であれば、自律神経失調症の一つの形である起立性調節障害と診断されることもある。
ただ、心の病気を扱うお医者さんにも精神科と心療内科とがあって、素人にはその区別さえつかない。Googleで検索していろいろ調べてみても、病名も一致していなかったり、病院の宣伝ばかりが検索に引っかかったりして、全く役に立たない。
そこで私は、今、Googleに代わるものとして世界中で大ブームになっている「ChatGPT」に頼ることにした。
ChatGPTとは、日本語で質問すると、全世界中のテキストデータの中から一瞬で的確な答えを探し出して答えを与えてくれる、革命的なAIである。公開から2ヵ月でアクティブユーザーが世界で推定1億人に達したと報道されている。
【私がChatGPTに質問した内容】
最近増えている子どもの精神病、精神疾患にはどんな病名、症状がありますか?
【日本語をDeepLで英語に翻訳してから質問】
What are the names and symptoms of psychosis and mental illness in children, which are on the increase these days?
【ChatGPTによる答え】
子どもの精神病や精神疾患には、さまざまな症状や病名があります。
・統合失調症です。妄想、幻覚、思考障害、奇妙・奇怪な行動など。
・双極性障害。極端な気分の変動、イライラ、衝動性、無謀な行動。
・大うつ病性障害。持続的な悲しみ、絶望感、無価値感、以前は楽しかった活動への興味の喪失、睡眠と食欲の変化。
・注意欠陥・多動性障害(ADHD)。不注意、衝動性、多動性、集中力の欠如、タスクの完了が困難。
・強迫性障害(OCD)。強迫観念と行動(強迫行為)を繰り返し、それを実行しなければならないと感じる。
子どもの精神疾患の発生率は増加していますが、これらの疾患の認識や診断が向上したことも一因であることに留意する必要があります。お子さまに精神疾患の症状が見られると思われる場合は、小児科医や精神保健の専門家に相談されることをお勧めします。
以上の回答が、1分以内に答えとして表示される。恐ろしい世の中になったものだ。大学などは、レポートの作成や論文や文学作品などの著作からChatGPTを排除するのに苦慮しているそうだ。
学校は、受験で生徒が不利にならないように、内申書はできるだけ「お化粧」をしようとする(私が教師であればそうする)。
大阪の場合、通知表は5段階の絶対評価で、1年に1回行われるチャレンジテストの結果によって、学校全体の平均点がよければ平均4.0程度、平均点が悪ければ平均3.1程度におさまるように内申書をつけるようになっている。上位の公立高校は、入試当日の点数の比率が7割、内申書の比率が3割で合格不合格が決まる。
不登校の生徒の内申書はどのようにしてつけているのであろうか。親友の教師に対しても、タブーにふれそうで、それだけは聞けないでいる。
私立高校の場合、難関校はあまり内申書を参考にしていないようだ。入試問題を難しくして、入試当日の成績、当日の学力、点数で合否判定をしていると思われる。オール5でも、不合格の子は不合格になる。
中堅校も、以前は中学校に学校格差があることを理由に、内申書は参考程度に見るだけであった。ところが、ある頭のいい学校が、内申書だけで合格の約束をする英断をした。中学校の先生は、自分がいい内申書をつけてあげたらそれだけで合格できるということで、その高校の受験者は一気に急増した。
今では、その高校と同程度の偏差値の高校は、ほぼ内申書が合格の基準になっている。内申書の成績がよい生徒は真面目な生徒がほとんどだから、少々成績が見劣りしても高校としてはありがたい生徒がほとんどである。賢いやり方だと思う。
大学も、以前の一発勝負の入試は徐々に影をひそめ、早くから公募入試、推薦入試で、早めに定員を確保しようとする傾向が強い。
私立高校は、生徒のために大学の情報をしっかりと集めて、できるだけお化粧して推薦基準を満たすように努力している。また、高校進学後も学校に来てくれさえしたら、例えば図書室での勉強を単位に加えるなどの工夫をしている学校もある。公立高校も負けるな、と言いたい。
不登校の生徒の急激な増加は、高校の理解とバックアップが必要だと最近は痛感している。
1953年生まれ、山口県出身。京都大学法学部卒業後、俊英塾(大阪府柏原市)創設。公益社団法人全国学習塾協会常任理事、全国読書作文コンクール委員長等歴任。関西私塾教育連盟所属。塾の学習指導を公開したサイト『働きアリ』には、多くの受験生や保護者から「ありがとう」のコメントが。成りたい人格は「謙虚」「感謝」「報恩」…。
■俊英塾 http://kashiwara.shun-ei.com/
●学習支援サイト『働きアリ』 http://blog.livedoor.jp/aritouch/
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