2023年度医学部入試を目指す皆さんへ
【大学入学共通テストについて】
私立・国公立大学医学部に入ろう.com 平野 晃康
2022年度の大学入学共通テストは、理系科目、とくに数学と生物の難度が大幅に高くなったことを受けて平均点が下がりました。トップ校でも受験者の平均点が総合で50点以上下がってしまった高校もあったりするなど、大荒れの模様でした。医学部受験生にとって重要な英語、数学、理科の分析と求められる力についてまとめます。
2022年度共通テストの結果と分析
2021年度入試と同様に、大問6問構成で小問はなく、すべて読解問題での出題でした。出題のテーマは料理の本、WEBサイト、図書館の案内、新聞、雑誌の記事、電気、論説文など多岐にわたり、総語数(本文、図、設問、選択肢の語数の総和)は6,044語でした。
これは2021年度の5,478語と比べて600語近く多く、2021年度も2020年度(最後のセンター試験)と比べて1,000語近く増えました。文章を読む速度に加えて2つの文章の共通点を見つける、プレゼンテーションのためのポスターにつくられた空欄を埋める、いくつかの出来事を時系列に並べる、価格を割引や保証などの条件も考慮して比較するなど、文章から読み取った情報を比較検討するような力も試される試験でした。
この傾向は大学入試センターの作問方針でもあるため、今後も継続されるでしょう。
平均点が大幅に下がった数学ⅠAですが、今までにない目新しい問題に加え、計算量が膨大であったことが低い平均点になって表れたと考えられます。以下に、難しかった問題の要点についてまとめます。
第1問の地図アプリを用いた山頂を見上げる角度の考察問題は、それだけなら三角比の基本問題ですが、三角比の表の利用や縮尺の考慮を必要とする問題でした。第2問は前半が二次方程式の解と二次関数のグラフの関係を考えさせる問題で、平行移動や必要条件・十分条件を考える必要があり、深い理解と思考力を必要とする問題でした。
第3問は完全順列の問題で、やったことのない人が短時間で解答するのはかなり難しい問題でした。第4問の後半2問は意味が読み取りにくく、計算量が非常に多かったため、時間内で解ききるのは難しい問題でした。
このように、問題演習を中心とした学習をしてきた人にはかなり厳しい出題でした。ただ、現実的な問題に数学を活用する力、グラフの性質と方程式の解の関係、必要な必要条件・十分条件を活用して論理的に考える力など、問題に対する慣れではなく、理論を理解しているか、定性的に物事を考える力など、共通テストが目指す力がどんなものかは提示されていると思います。
2023年度は処理量が減るものの、今年度同様に問題慣れしているだけでは高得点を取ることができない試験になると考えられます。
数学ⅠA同様に分量が多く、最後まで解答しきるのは難しかったと考えられます。以下に難しかった問題の要点についてまとめます。
第1問は[1]、[2]ともに会話文を読んで答える問題で、2人の解法の違いを理解する必要があるなど、図形と方程式・指数対数に関する深い理解が必要でした。第2問は方程式の解と関数のグラフの関係についての問題、微積分の問題で典型的でしたが、三次方程式を解く必要があるなど計算量が多い問題でした。
第3問は連続型確率変数に関する問題で、理論の理解が問われる問題でした。第4問は与えられた現象から漸化式を導く問題で、定型的ではなく、計算量も多い問題でした。第5問は、ベクトルの式から点の存在範囲を考える問題で、ベクトル方程式やベクトルを用いた領域の表し方や内積の意味などを、図形的に理解していない人には厳しい出題だったと考えられます。
数学ⅠAと同様に、若干に失敗している(量が多すぎる)ように思われますが、それを除けば各分野の問題について定性的な理解ができているかがカギとなる問題が多く、共通テストが目指す力を問うものであったと思います。数学ⅠAと同様に2023年度入試では処理量が調整されると考えられますが、方向性に変化はないと考えられます。
第2問を除いて典型的な問題が多く、全体として若干易化した印象でした。全体的に定性的理解を問う問題が多いですが、これはセンター試験のころからなのであまり目新しいとは言えません。
共通テストらしかったのは第2問で、物体の速さと物体に加わる外力と物体の質量の間に成立する関係について、立てられた仮説が誤りであることを得られたデータをもとに示す問題で、公式の理解だけではなく、その導出過程もしっかりと理解していないと完答は難しかったと考えられます。
物理同様に典型的な問題が多く、目立って難しい問題は出題されませんでした。見慣れないグラフの問題が2つ(大問3問2、大問4問4)出題されたこと以外には、センター試験と大差のない出題だったように思われます。特に理系の上位層は、この程度の出題ではあまり差がつかなかったのではないでしょうか。
それでも満点を取るためには一定の思考力と化学についての理解が必要なことから、共通テストの出題としては方針が固まってきているように思います。2021年度は見慣れない反応やグラフを描かせる問題、2022年度は見慣れないグラフの問題が出題されました。高得点を狙うならこうした問題を解くことのできる力を養う必要があります。
2021年度入試では思考力を問うことを重視するあまり、ある程度考える力のある子であれば高校生物をきちんと勉強していなくても解けてしまうクイズのような問題が多く出題されましたが、1年前より平均点が15点も高くなるという結果になってしまいました。
2022年度入試ではその反動からか、高校生物の知識を前提とする高度な考察問題が多く出題され、がっちりとした入試問題に仕上がっています。考えさせる良問という印象ですが、試験時間に対して問題数が多すぎるため、平均点は大幅に下がってしまいました。
教科書や図説に載っている実験は、その理論と結果について理解を深めると同時に、考察問題に数多くふれておく必要があります。
名古屋セミナーグループ医進サクセス室長を経て、現在は私立・国公立大学医学部に入ろう.com代表。医学部受験の指導と正しい入試情報の普及に努める。入試情報誌「私大医学部入学試験を斬る2013」(名古屋セミナー出版)を編集・執筆、医療系データブック(大学通信)にコラムを寄稿。
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