「ハナエモリ・スクールジェンヌ」と
駒込学園改革
駒込中学校・高等学校(東京都)
昭和時代~平成時代『制服革命』
森英恵さまが手がけた改革に日本の学校の「制服革命」があります。それまでの管理統制型の制服を改め、その学校固有の「スクール・アイデンティティ」の表出としての制服に切り替えたからです。そのモデル服として「濃紺に金ボタンのスーツ」を発表し、「ハナエモリ、スクールジェンヌ」を立ち上げ、日本全国で制服ファッションショーを展開しました。
実はそのモデル校に駒込が選出されていたのです。さらに当時の女子生徒の体操着は日本全国「ブルマー」でしたが、セクハラの対象として社会問題になっていました。これを「ショートパンツ」に切り替え、それを本校で最初に導入しました。
現在の体育祭の様子。本校は女子生徒の体操着として「ショートパンツ」を最初に導入しました
森英恵さまのその時の言葉が残っています。「囚人服を改めユニホームに切り替えます」と言われたのです。……巨人軍の選手は巨人軍のユニホームを着ることによって巨人軍の選手としてのプライドを持ちます。阪神の選手は阪神のユニホームに誇りを持ち戦います。同様に、学校ごとのオリジナルな誇りを有したユニホームを森英恵さんは生み出したのです。
制服ブームが生まれ、『新しいオリジナルな制服を導入しない学校は生徒が集まらない』という新時代が到来しました。昭和が終わり平成となる時期でした。本校には日本全国からビデオカメラ持参の視察のための来校者が途切れませんでした。NHKで特集番組が放送されたり、毎日新聞で記事が組まれたりしたからです。
どの様な改革にも、理念改革が伴います。制服がなぜ変わったのか? その理念改革の意味も知らず、単に制服ブームに乗って変えただけの学校はブームが去れば消えていきます。
(左)現在の制服。時代が変わっても当時の駒込イズムは継承されています
(右)駒込は勧学講院を前身とし、340年の伝統を持つ学園です
令和の時代に求められる『AAR能力』
令和の時代を迎え、日本の学校は今大きく変革されようとしています。そのキーワードはOECDが求める「2030ラーニングコンパス」での「AAR改革」です。「Anticipation, Action, Reflection」、すなわち「将来を見通す力」「誰もがやらないからこそ自分がやるという行動力」そして「科学的な振り返り能力」の育成が喫緊の課題となっています。一言で言えば「アントレプレナーシップ能力」の育成です。
駒込改革はすでにこれを先行事例校として実践しています。ベンチャー企業2社を立ち上げ、社長となって卒業した女子生徒も生まれています。名古屋大学をはじめとした大学との高大接続教室もスタートしています。
ところで、現在の生徒は大学生も含め「Z世代」と呼ばれています。プロセス抜きのオンデマンドな行動原理で物事をとらえる世代です。生まれ落ちたときからバーチャル空間の中で育ち、仮想化された事象と現実との境界領域がグレーゾーン化しています。テスト用の結果や結論だけを知りたがり、なぜそうなるかというプロセス思考をいやがる傾向にあります。
このZ世代を「教科書を読めない生徒たち」という人たちもいます。言い換えれば、文章の「起承転結」が読み取れない生徒たちが増えているのです。それは自身の生活意識に直結し、将来を見通す力が衰退しています。だからこそOECDは世界の生徒たちに「Anticipation, Action, Reflection」の「AAR能力」向上を求めているのです。それが今次指導要領のキーワード「思考力・判断力・表現力」の育成課題となっています。
駒込改革‐AARサイクルの導入
「ハナエモリ、スクールジェンヌ」の精神で
一歩先をいく「チーム駒込」
これからのAI時代を生きていくには、「どれだけの知識を身につけたか」よりも、「どれだけその知識を社会に生かすことができるか」が問われていくのです。学びで得た知識を生活や環境や自己の将来像に結び付けて考察し実践していく力が求められていくのです。
入試も多様性入試に替わっていきます。独創的でオリジナルな回答が求められ、国の成長の基盤となる人材育成では、文理の枠を超えた課題解決に取り組めるSTEAM教育の充実が求められていきます。すでに都内の公立中学校においても教科枠を超えた「コラボレーション授業」を展開しているところもあります。
国語で「奥の細道」を学ぶとき、地理や歴史や理科や数学の教員と教科を横断して、コラボレーションするという取り組みです。教科の枠を超えるには教員間の理解と協力と信頼が不可欠です。それができてはじめて文理融合授業が誕生します。まもなく授業のデジタル化も始まっていきます。
生徒を変えるには、そのための指導能力を有した教員集団が誕生しなければなりません。しかしながら、それには全く新しい理念改革が必要となってきます。本校は、生徒たちが「駒込でよかった!」といえる学校づくりを「チーム駒込」で成し遂げていきます。これから先求められるのは、既存の価値観から一歩踏み出す勇気です。ハナエモリ・スクールジェンヌの精神を駒込は大切に継承していきます。このたび96歳で逝去された森英恵さまのご冥福を心よりお祈り申し上げます。有難うございました!
最先端のSTEAM教育を実践。身近にある課題から探究、解決する手段を身につけています
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