普通科と3つの専門学科を持つ伝統校
本年度、男女共学の新たな歴史が始まる
修文学院高等学校(愛知県)
来年4月竣工予定の新校舎。大学レベルの理科実験室とエレベーターを備える
女子商業高校として創立し、昨年80周年を迎えた愛知県一宮市の伝統校。学院訓「推譲・明朗・強健」の一つ「推譲」は他人を推して、地位や名誉を譲ることを意味する言葉だ。近年は普通科の進学実績が急進し、存在感を増している。そして今春、修文女子高等学校から男女共学の修文学院高等学校に生まれ変わった。受験者数は推薦入試で前年度の2倍、一般入試で前年度の1.25倍に急増し、入学者数は前年度の2倍強の417人、うち男子生徒は98名が入学した。新たな学院風景と今後の展望について、栗本整校長に聞いた。
男女共学化元年の受験者数は急増
入学者数は前年度の2倍を上回る
愛知県一宮市は古くから繊維産業で発展し、今では人口38万人を超える商工都市に成長している。81年前、地元出身の医師で一宮市長や参議院議員を歴任した吉田萬次氏が、一宮地域の商工業を支える、教養ある女性人材の育成をめざして創設した一宮女子商業学校が修文学院高等学校の前身だ。
その後、女性の進学率や社会参加の高まりに合わせて積極的に新課程を開設し、普通科、商業科から発展した情報会計科、家政科、食物調理科のある、全国でも数少ない女子高校に進化。2008年には修文女子高等学校に改称した。
そして今春、男女共学の修文学院高等学校として新たなスタートを切った。大きな改革を決断した栗本整校長は「女性の生き方は多様化し、ジェンダーに対する考え方も変わりました。男女がともに学び、互いを認め合う、新時代の教育に取り組んでいきます」と話す。
共学化に向けて発足した広報課チームは学校説明会やオープンスクール、SNSを通じて学校の魅力をアピール。栗本校長と鵜飼保年教頭も地域の中学校、学習塾を訪ねて信頼関係を築いてきた。共学化初年度の入学者数は男子98人を含む417人で前年度の2.15倍と大躍進。新生・修文への信頼と期待がうかがえる。
栗本校長は「私たちが育てたい生徒像、めざすべき教職員像を全員が共有し、改革や広報活動に取り組んでくれた成果です」と喜ぶ。
(左)男女共学元年の今春、入学者数417人中、男子生徒98名が入学
(右)男子生徒の参加で活気づく。今春、専門学科の情報会計科は100人が入学した
合格力を鍛える普通科2クラス
進学にも就職にも強い専門学科
普通科は、共学化に合わせて「特進クラス」と「進学クラス」に改編した。「特進クラス」は1年次から受験を意識した学習に集中し、国公立大学、GMARCHや関関同立といった難関私立大学への現役合格を狙い、「進学クラス」は部活動に励みながら進学をめざす。
校内には静かな自習室や、先生に質問しやすいように職員室の前に自習机を設置したコーナーがあり、自主的に学習する環境と風土ができあがっている。また勉強する部活動、「補習部」があり、苦手科目の克服や検定対策に取り組む生徒を顧問の先生が指導する。
こうした親身な指導が実を結び、近年は公立の愛知県立大学、都留文科大学といった公立大学、地元名門私立大学の南山大学、愛知大学、金城学院大学、また明治大学、中央大学、法政大学、東京女子大学、日本女子大学などの関東の名門校に合格者を出している。
鵜飼教頭は「先生方の丁寧な指導の結果、不得意科目のある生徒も着実に力をつけているので、自信をもって上位校にチャレンジしてほしいです」と期待する。
専門学科も活気づいている。今春、100人が入学した情報会計科では1年次から検定や資格に挑戦し、2年次からは「会計マスターコース」と「PCマスターコース」に分かれて専門的な学びを深める。「簿記や情報処理の検定取得を入学選抜時に評価する大学が増えており、進学への道も開けています」と鵜飼教頭。
食物調理科と家政科(女子のみ。3年次に被服・保育・食物から1分野をコース選択)は地元企業との産学連携でアパレルや食品の商品開発に取り組む機会があり、また系列の修文大学・修文大学短期大学部の施設を利用した本格的な実技・実習ができる。
この修文大学は、看護師や臨床検査技師、管理栄養士といった国家資格を取得できる大学であり、短期大学部においては幼稚園教諭、保育士をはじめ医療事務・ビジネス系に毎年優秀な人材を輩出している大学として人気が高い。「本校の生徒には推薦制度や入学金の全額免除などの進学特典がありますが、さらに充実させて、系列大学に進学できるメリットを打ち出していきます」と栗本校長。
また専門学科は長年、地元の優良企業や金融機関に優秀な人材を送り出してきた。進学する生徒と同様に、就職希望の生徒の進路実現もバックアップしていく。
(左)専門学科の食物調理科(写真下)と家政科(女子のみ)。地元企業と商品開発の機会も
(右)食物学科は調理師免許が無試験で取得できる
男子生徒の参加で活気づく部活動
ダンス部、サッカー部は一流講師が指導
同校は部活動が盛んで強豪チームが多く、昨年度は、女子円盤投げでインターハイ6位入賞を果たした陸上競技部をはじめ、ソフトボール部、卓球部、弓道部、吹奏楽部が全国大会に出場した。
共学化にあたり硬式野球部、サッカー部、ダンス部、ハンドボール部、eスポーツ部を新設。ダンス部は指導者に修文大学OGで松任谷由実氏のコンサートツアーに出演している堀田聖奈氏、サッカー部は日本サッカー協会公認A級コーチジェネラルの資格を持つ山口正悟氏を招いた。また、硬式野球部は全員1年生のチームで、今夏の高校野球愛知県予選に出場を予定しており話題を呼びそうだ。
教育設備の充実も私学ならではの魅力だ。コロナ禍を機にICT教育環境が課題になったが、今年度より1人1台のタブレット端末を用意して授業に活用している。さらに大学と同等の設備を持つ理科実験室を備える新校舎が来春完成予定だ。
「本校は文科系進学に強いイメージがあると思いますが、今後は理数系科目の教員を増強し、文部科学省が掲げる理工系人材育成戦略にも対応していきます」と、次の構想を語る栗本校長。共学化を皮切りに修文学院高等学校の進化はさらに続いていく。
(左上)共学化にあたり硬式野球部を創部。今夏、オール1年生で甲子園県予選に挑む
(左下)陸上部は毎年、インターハイで活躍。昨年は円盤投げで6位入賞
(右上・右下)強豪で知られる弓道部、吹奏楽部、ソフトボール部、卓球部は全国大会の常連
修文学院高等学校 https://www.gakuin-hs.shubun.ac.jp/
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