マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

激変する時代を生きるリーダーの素質は
圧倒的な行動力と、問題解決能力
友とともに思考し続け、進化し続ける

学校法人静岡理工科大学 星陵中学校・高等学校(静岡県)

星陵ラボ航空工学班が朝霧高原でロケット打ち上げ実験。地元コンテスト開催に向け大手企業と協働


「生徒には『ワクワクしながら学校生活を楽しもうよ』と伝えています」と星陵高等学校校長・渡邉一洋先生は微笑む。難関大学への高い進学率を誇りつつ、SDGs探究活動でもトップランナーであり続けるポテンシャル。「圧倒的な行動力を持った子を育てたい」とする渡邉校長率いる星陵の教員集団・生徒集団に備わっているのは、変化を敏感に察知する能力と、変化にしなやかに対応し、たくましく進化していこうとする姿勢だ。その生成の過程を追ってみる。


コロナ禍が、教員と生徒の
問題解決能力を進化させた

世界的な新型コロナ流行の禍中にあった一昨年の春、星陵高等学校は直ちにオンライン授業を導入。ICT教育への素早い転換と充実度は静岡県随一、と高い評価を得た。渡邉一洋校長はコロナ禍で発揮された星陵の強みを改めて振り返る。

「教職員も生徒も『コロナだからできない』という発想ではなく、『形を変えてでも、どうやったらできるか』を提案し、実行しました。みな安易な、楽な生き方を選択しない、問題解決型の思考が備わっているのが最大の強みです。そうした風土が、解なき時代のリーダーの素質を育てる。創立以来48年間培ってきた伝統だと思うんです」

伝統、と語る星陵生の行動力は、学校外にも着実に認知され、企業からプロジェクト・パートナーの呼び声がかかることも少なくない。大学や企業と連携し研究を行う星陵ラボを中心に、学会・研究会・地域での発表や各種コンペティションに、昨年度は延べ82名が参加、25件が受賞、という実績も輝かしい。

今春の卒業生は、高校生活3年間のうち、ほぼ3分の2をコロナ禍のなか過ごした。卒業式では、例年に増して生徒と教員が涙する光景があふれていた。楽しかった思い出や別れを惜しむ涙とは別物だと思う、と入試広報課長・佐野北斗先生が振り返る。

「行事は減り、研修旅行も留学にも行けない。そんな暗い時代を、耐えて一緒に乗り越えた自分たちをたたえ合う涙だったと思います。生徒同士、教員は苦しかった時期を支え合った戦友。不条理な現実の中を必死にもがきながら、一生懸命に考えて、たくましく成長した子どもたちに、心からの拍手と、将来へのエールを送りたいです」


ユネスコスクール加盟校として世界に広がる9つの姉妹校や、アジアの高校とオンライン国際交流。同年代同士、文化やSDGsについて語り合う

どんな受験スタイルにも対応
オーダーメイドの進路指導

同校は、2学科5コース(星陵中学校からの中高一貫コースを含む)を設置する。国公立・難関私立大学進学を目指す英数科総合コース、英数科英数コース。大学・専門学校進学を目指す普通科進学コース、地元有名企業への就職を目指す普通コース。なかでも英数科の志願倍率は毎年高く、今春も県内私立高校のうち全県でトップクラスの 5.27 倍だ。

今春の進学実績は、東大・北大・名大・九大など最難関旧帝大をはじめとする国公立大学に70名、浜松医大など医歯薬系大学に27名、早慶上理・GMARCH等難関私大に108名が合格。総合型選抜・学校推薦型選抜・一般選抜そして就職と、一人ひとりの個性・特質を踏まえたきめ細かな進路指導は「星陵のお家芸」と佐野先生は自負する。

「例えば30人クラスで、総合型・学校推薦型選抜・一般と10人ずつ分散すると、受験時期がずれるので教員はそれぞれに全力集中できるんです。教員の中には学校ごとに入試の専門家がいますし、全方位を応援してあげられることが、進路実績の厚みになっている。もちろん生徒自身の実力が最も大きいです」

オーストラリア長期語学留学を経験した生徒は、将来は国際社会での活躍を目指し、早稲田大学国際教養学部の総合型選抜を突破。地元の新聞に何度も俳句作品が掲載され高い評価を受けた生徒は、慶應義塾大学文学部に一般入試で合格。勉強のみならずクラブ活動・行事・探究活動も謳歌するのが星陵生。その中で「自分のやりたいこと」「学びたい領域」を見定めて、教員は、生徒の興味にふさわしい大学・学部、持っている力に合った受験スタイルを共に模索する。生徒一人を複数の教員が担当する完全オーダーメイドの進路指導は、地元でも絶大な信頼を得ている。


(左)現場の医療関係者が語る「医療系学部希望者のための教育セミナー」。このセミナーをキッカケに医学・薬学系学部への進学希望者が年々増加中
(右)静岡県の全中学生が受ける統一模試に向けた「学調対策講座」は富士地区の中3生の10%が受講する超人気講座。傾向と対策や勉強方法をレクチャーする

厳しい時代を友と進化し
誠実に世界と向き合う

2年間オンライン開催が続いた星陵祭は、一般公開こそ叶わなかったが、今年度は学校内で実施された。テーマは「創れ、僕らの星春~Wish for peace Message~」。SDGsの観点から、多様な問題提起、星陵生らしい解決案が提示された。高校入試の志望理由に「SDGs研究といえば星陵」と挙げる中学生も増えたという。OBの佐野先生の目には、2年ぶりの通常開催となった星陵祭はどう映ったのか。

「SDGsは達成目標であり行動目標ですから、方向と方法を決めて実際に行動を起こすのが本質。本校は3年間じっくりSDGs学習を積み重ねるので探究に厚みがあります。単純に『SDGsについて知る/理解する』というレベルを超え、私たちが目指すところである『複雑性の理解』レベルに達している展示も少なくなかった。これは頼もしいことです」


久しぶりの学校内開催となった星陵祭で笑顔も弾ける。今年のテーマは「創れ、僕らの星春~Wish for peace Message~」。2年間のオンライン開催で磨かれたプレゼンテーション力が光る

渡邉校長は、星陵が推し進める先進教育の先に、日本、そして世界のリーダーを地元から輩出したいと熱く語る。

「大国間のパワーバランスが急速に変動するなか、どうすれば世界平和が実現できるのか? 机上の空論ではなく、データや知識、仲間との協働から思考を深め、複雑な課題に対する解決策を、地元から世界に発信していく。そういったレベルでの戦い方ができる生徒や卒業生が増えていることは間違いありません」

創立から間もなく半世紀を迎える星陵高等学校。地域に根差し、地域とともに成長を続けてきた同校の進化そのものが、地域の教育水準向上に大きく寄与している。予測不可能な時代を生きる子どもを持つ保護者にとっても、高いポテンシャルを秘めた星陵の存在感は、ますます目が離せないものとなっている。

学校法人静岡理工科大学 星陵中学校・高等学校 http://www.starhill.ed.jp/


過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/east/5851/