マナビネットオープンスクール2023 ●掲載:塾ジャーナル2023年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

生徒と教員が互いを高め合うことで生じる
「満足度」の上昇スパイラル

桐陽高等学校

コロナ禍においても教員たちの徹底した「生徒ファースト」の姿勢が関係者の支持を得る桐陽高等学校。ここ数年、第一志望で入学する生徒が9割を超え、ついに今年度は300名から350名への定員増となった。毎年卒業生と保護者に対して行われる満足度調査では、コロナ禍にあっても高水準を維持。積み重ねてきた満足度へのこだわりが、今回の定員増へとつながった。もちろん教員たちの努力も並大抵のものではなかった。彼らの挑戦とその思いについて、松本日出年教頭先生はじめ、担当の先生方にお話を伺った。


徹底した「生徒ファースト」
マンパワーこそが最大の強み

同校で毎年行われる満足度調査。今年の卒業生は修学旅行に行けなかったので学校行事の満足度が低かったが、それ以外はここ3年のコロナ禍でも満足度は低下せず、逆に上昇している。その理由は「高い進路実現にある」と松本教頭。「高校3年間で希望もしくはそれ以上の進路を選択できる実力をつけ、夢に向かって羽ばたいてもらう」のが一番の目標だ。

それには、生徒や保護者たちの意見を聞きながら、時には厳しい指導を通じて生徒を成長させることも重要だ。アンケート1位になっている「朝学習」が良い例で、毎日朝8時からテストを行い、その日の内容を取りこぼさずしっかりフォローする。

「生徒も保護者も朝早くから大変だと思いますが、こういった積み重ねをベースに、学力が低かった生徒でも飛躍的な成長を遂げることがあります。保護者と生徒の満足度が高いことに自分たちが満足せず、さらなる向上をめざしています」(松本教頭)

満足度調査の保護者のコメントの中には感謝の言葉が溢れている。「生徒ファースト」を掲げ、マンパワーが一番の強みであると自負する松本教頭は、教師たちの熱量が口コミで広がった結果、今につながっていると語る。保護者からの感謝の思いと、期待の大きさを受け止めながら、厳しい意見にも耳を傾け、さらなる満足度にこだわっていくという。

また、施設の満足度が比較的低いことを受け、今年度から新しい体育館の建設工事に着手した。音楽スタジオやダンススタジオを併設する同施設は、来年8月に完成予定となる。

「生徒たちや保護者の方々に『ありがとうございます』と言われるのが、なにより教師冥利に尽きますね。もっともっと喜ばせてあげたい、そんな気持ちになります」

この松本日出年教頭の言葉が、桐陽高等学校の姿勢のすべてを物語っている。

さらなる高みをめざし
生徒たちの頑張りに報いたい

同校の教師陣の熱心さは満足度に反映されているが、さらなる高みをめざして努力を形にした3名の教員がいる。英語教育に関する難関国際資格「TEFL Diploma」を取得した金指衛先生、数学の教員免許を取得した化学教師・杉山栄一朗先生、そして英語の教員免許を取得した数学教師・岡本海里先生だ。

共に学ぶ姿勢を背中で見せる

TEFLは、第2言語で英語を学ぶ人々に習得方法を教える世界ライセンスだ。

「担当している留学進学コース、国際進学コースでは、受験英語に偏りがちな中、どうしたらコミュニケーションツールとしての英語の楽しさが伝えられるのかを模索していました。クラスではいつも『一緒に頑張ろう』と言っているのですが、教師の頑張りは生徒には見えづらいものです。『自分はこういう資格にチャレンジするから、みんなも留学に向けて勉強頑張ろう』と生徒たちの前で発表しました」

昨年12月、イギリスのオンラインスクールに入学し、帰宅後毎日3〜4時間の講座を受講。合計11単元で構成され、1つの単元が終わると試験があり、3単元分の試験に合格すると必須のレポート提出がある。これに3回落ちると退学という非常に厳しい制限とスケジュールの中、生徒が留学に旅立つ直前の今年3月、見事、難関資格取得を果たした。

「『僕も頑張ったから、みんなも頑張ってきてほしい』と伝えることができました。今回の挑戦ですごく刺激を受けました。とても楽しかったです。色々な教え方があることも学べた上、新しい視点がどんどん開けて学生に戻った気分でした。睡眠時間を削ってでも学んだ価値がありましたね」(金指先生)

「他教科融合」というアプローチ

「クラスの生徒たちが、国公立大学をめざして週末も学校に来て一生懸命勉強しています。その姿を見て、自分も何か手助けできないかと思いました。化学と数学の両方のアプローチを通して身近な科学現象を深く掘り下げ、より多くの生徒に科学の楽しさを伝える授業をしたいと思い、今回数学の免許取得にチャレンジしました」と杉山先生。

この1年、週末はクラスの生徒たちの勉強を見ながら、自身も数学の勉強を進めてきた。「先生が頑張っているなら、私たちも頑張りたい」と言う生徒もいる中、皆で一緒に励まし合いながら勉強してきた結果、見事数学の教員資格を取得した。

一方、国際進学コースで1年生を担当する岡本先生はもともと英語が堪能で、同校に入職した際、英語教員免許取得に挑んだが、多忙のため断念。数学教師として経験を積む中で、指導要領にある「対話的・主体的な深い学び」という内容に、教科をまたいだつながりを感じて7年ぶりに免許取得をめざした。

「ちょうど同じタイミングで、職員室の席が杉山先生の隣になったのです。自分の横で数学の勉強を一生懸命されていたので、すごく刺激になりました。学んだことを生徒に伝えると、すごく興味をもって聞いてくれる。これからもどんどん生徒に還元していきます」(岡本先生)

国際進学コースは2年前から理系選択が可能になったこともあり、英語を使いながらの数学授業を念頭に置いている。毎年9月には2年生の生徒たちがオーストラリアに出発するため、数学用語の英語表現など必要な留学準備に余念がない。

「生徒たちの頑張りに報いたい」と語る松本日出年教頭。生徒たちの奮闘を見て、自らも成長しようとする教員たち。生徒たちは、その背中を見ることで勇気づけられ勉強に専心する。その相乗効果がプラスのスパイラルを描き続ける桐陽高校に、さらなる期待が高まっていく。


過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/east/2022_7toyo/
桐陽高等学校 https://toyo-numazu.ac.jp/