マナビネットオープンスクール2023 ●掲載:塾ジャーナル2023年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

CHALLENGE(挑戦)、CHANGE(変化)
CONTRIBUTION(社会貢献)
より高い視座で「希望進路」の実現を

青稜中学校・高等学校

青稜中学校・高等学校は「本当に普通の学校」と募集広報部長の伊東充先生は語る。学校らしくあるために、青稜では、どれを選択するか、どう行動するか、生徒と教員が角を突き合わせて一緒に考えることを徹底する。「学校は取扱説明書。生徒に指針を示す場であり『こうするべき』と攻略本になっては駄目なのです」。成長の過程で、教員と生徒が共に挑み、変化した先に各々の社会貢献のあり方を見出す。「希望進路」という言葉に託した思いを聞く。


実際に見て体感し挑戦する
「希望進路」の高みへ

昨年、3年ぶりに秋の修学旅行が復活。広島・京都を巡った青稜中学校3年生の約180名は、京都大学のキャンパスに足を踏み入れた。「エコ~るど京大」(『持続可能なキャンパス』の実現を目指す学部生、院生と教職員で構成された団体)による、SDGsをテーマにしたリレー講義を受講。また「マイボトルダンス」を京大生と一緒に踊るなど大いに盛り上がったという。青稜生の反応の良さ、鋭い質問力は京大生にも印象的だったようだ。募集広報部長の伊東充先生は事あるごとに「大学を実際に見に行って、感じてきてほしい」と生徒に伝えている。

「特に理系の国公立大学には一流の企業から最先端の機器が入っていますし、設備や環境が違えば人生に巡ってくるチャンスも違ってきます。手を伸ばして届くなら、より高みへ挑戦してほしいです」

「希望進路」は青稜中学校・高等学校の命題。一人ひとり高いレベルで希望する進路を叶えられるように、学校のあらゆる場面に「挑戦のプラットフォーム」を細やかかつ大胆に張り巡らしている。

昨年から本格始動した「DDP(デュアル・ディプロマ・プログラム)」もその一つ。米国姉妹校の卒業資格も取得でき、海外大学への進学の道が拓かれる。

今春の卒業生273名は中高時代を新型コロナの渦中で過ごした。生徒・教員ともに大きな挑戦となった「青稜のゼミ」を受けた初めての代だ。伊東先生が愛情をこめて「それぞれが行きたい学校に好き勝手に行きやがりました(笑)」と語る彼らは、現役合格率87%。国公立大34名、早慶・上智・東京理科大・ICUに93名、東京工業大・大阪大・筑波大・千葉大・東京農工大など、多様な「希望進路」を叶えていった。

その一歩を踏み出せば
世界はきっと変わる

成績やカリキュラムに縛られない「青稜のゼミ」は、SDGs活動や探究、文学や音楽史、気象の研究、料理、スポーツそしてプログラミングと、各教員が好きなテーマで展開する14講座が設けられている。中学2・3年生が学年の枠を越えて集い、共に学び、協働する。青田泰明校長が担当するゼミ「未来への挑戦」ではSDGsを切り口に、企業や行政とのコラボレーションを行う。鉄道自動車部、自然科学部、ダンス部への入部を目的に入学する生徒も少なくない。自然科学部は昨年「第70回日本生態学会大会」で審査員特別賞を受賞。受賞生徒は授賞理由をこう語る。

「周りの目を惹きつけるような新しい発見や法則性が見つかるまでさまざまな可能性を調べあげ、考えを突き詰めたことが評価されたのだと思います」

伊東先生は青稜生の生態をこう分析する。「うちの子たちは失敗を恐れるというより『考えてない』と思います(笑)。理想に向かえば当然壁にぶち当たる。上手くいかない理由を考えて理解できたら、それはマイナスやゼロでもない、と」

「挑戦する青稜」のアイデンティティをもつ生徒たちが生まれる背景として、「そもそも教員自身が挑戦し、悪戦苦闘をありのままにさらけ出していますから」と伊東先生は笑う。

「教員って、10歩進化できる確実なものしか手を出さない傾向が強い。ところが青田校長が就任した直後にコロナ禍になり、ゼミ開講やオンライン入試などゴールが見えないまま走り出さざるを得ないことが多かった。でも、たった一歩を踏み出した先に、今までとは全く違う世界が広がったのです。一歩でも踏み出せば世界は変わる――そんな空気感が学校の中に伝播されていったと感じています」

学習への親和性が高い
生徒たちが見る未来の風景は

今春の中学入試では、帰国生入試(国内外)の受験生は200名超、定員200名に1800人の受験生を集めた。第1回入試「午前入試」の合格率3・2%、第2回入試の「午前2教科入試」は倍率13倍で、「ほぼ例年通り」。その実「受験生の本気度が今までとは全然違う」と伊東先生が驚くほど「青稜中を第一志望」とする受験生が、得点上位層で固まったという。ゆえに今年度入試は、出題の難度が上がる可能性があるという。「1点差内に何十人もがひしめく状態なので、合格の決め手は『ミスをしない』こと。皆さん、かなり対策をして挑まれています」。

その結果、勉強に親和性があり、集中力や知的好奇心が高く、わからないところをあいまいにしない学習フォーマットを身につけた生徒層の厚みが、年々増している。「すごい学校になっちゃったな、というのが正直な気持ち」と明かしつつ、「入りにくい超人気校」と派手なイメージが独り歩きする状況を危惧する。青稜には、毎週末になると受験生家族が約150人集まる「学校見学」がある。予約なしで随時受け付けるため、あらゆる時間帯にいろんな教員が案内する。青稜の「普段のありのまま」を見ることができ、「どの職員も『ぜひ入学してください』なんて決して言いません(笑)」と伊東先生。

「自信があるのではなく『ウチはこれしかできない』という事実を見て体感していただきたい。いろんな切り口で学校を見てほしいです。生徒たちも来校者の方々に積極的に話しかけますし、『いろんな学校を見て、納得いった学校を選ぶといいですよ』と言っています」

教員も生徒も気負わずオープンな青稜ならではのエピソードだが、そこには先生たちと一緒に挑戦しながら、青稜生として今の学校をつくっている自負、誇りが感じられる。

挑戦した者にしか見ることができない風景があるとしたら、青稜生と教員たちは、すでに数歩先の新しい世界を見ているのかもしれない。


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https://manavinet.com/east/2022_7seiryo/
青稜中学校・高等学校 https://www.seiryo-js.ed.jp/