開校以来約65年もの本格的グローバル教育を実践
品位と知性に溢れ世界で活躍する女性リーダーを育てる
セントヨゼフ女子学園高等学校・中学校
近鉄津新町駅からスクールバスで10分。住宅街の奥に、緑に囲まれ静かに佇むセントヨゼフ女子学園高等学校・中学校。1956年、4人の修道女がアメリカより来日し三重県に招聘され、ミッションスクールとしてセントヨゼフ女子学園を1958年に設立した。以来、スクールモットーに「世の光・地の塩」を掲げ、広い視野と豊かな教養をもつ女性の育成をめざし、女子教育の歴史を積み重ねてきた。アメリカの古き良き伝統を残しながら、ITなど最先端技術も取り入れてきた同校は、三重県唯一の女子校だ。原田泰宏校長に同校の今をお聞きした。
愛と奉仕の精神を体験で培う
カトリック教育が心を育てる
同校が最も大切にする心の教育は、「体験から学ぶ」がモットーだ。年間を通して、さまざまな奉仕活動に参加することで養われるボランティア精神。広く社会を見据え、その中で自分に何ができるかを考え、行動する自律した心を育てていくことを目標とする。
毎日、朝と各授業前に行われる「祈りの時間」は、忙しい日常の中で、神を思い、自分を見つめ直す機会となる。毎年5月の「マリア祭」は、マリア様を讃えるとともに、神父様のお話を聞く修養会でもある。一人ひとりがお話の中で、自分と向き合う時間をすごす。
「ウォーカソン」は、生徒が津市内を10㎞歩く募金活動を行ない、教育や医療の援助を必要とする国や地域を応援する奉仕活動。世界に目を向け、国際協力に対する理解を深めていく実践的な取り組みだ。
身につけた英語力を生かして、近隣の小学校に英語の楽しさを教えるボランティア活動「Let’s enjoy English」も行っている。ほかにも部活動の中に「宗教奉仕部」があり、さまざまなボランティア活動を行なっている。
同校では伝統的な「ドアガール」という取り組みがある。授業前、入口に近い生徒がドアを開けて外に立ち、教師を待つ。ここから他の人への敬意や気遣いが養われていくという。
「女性特有の強みを生かした、社会のリーダーを育てていきたい。女性は競争より協調を求めるしなやかさがあると言われており、世界の多様な方々との協調が必要となるこれからの社会を支える力になると考えます。女子には女子の教育方法があり、特に中等教育時代・思春期は大切です。女子校には、異性の目を気にせず安心して学習や行事に全力で取り組むことができる環境があります。
また女子校の生徒は自立しており、リーダーシップを発揮する場が多い。現在は在宅やオンラインでも活躍できる時代なので、三重にいながら世界のリーダーになっていくのは十分可能だと考えます。女子校を続けるのは、経営のためではなく教育のためだからです。この女子教育を、三重県からなくしてはならないと思っています」(原田泰宏校長)
英語の授業はオールイングリッシュ
洋書図書室とICTで英語が日常に
67年前に来日したアメリカのシスターたちから始まった同校。創立当初より英語教育や国際交流を柱としてきた。中学校では4人のネイティブ専任教員と日本人教員が、オールイングリッシュで英語の授業を実施。コミュニケーション能力と文法を理解する力をつけるように注力している。中学1年生の後期からは、習熟度に合わせたグループで授業を行い、無理なく英語の実力を上げることができる。
同校では他の教科のテーマを英語で学ぶCLIL(内容言語統合型学習)も取り入れており、「聞く・話す・読む・書く」の4つの力をバランス良く磨く授業を行なっている。これによってプレゼン能力がアップしたという生徒の声も出ている。
図書室には絵本から長編小説まで、約2500冊を揃えた洋書コーナーを設置。読解力に合わせてコーナー分けされており、多読とその後のアウトプットによって、より英文に親しむことができる。日本の人気漫画の英訳版もあり、息抜きしながら自然と言葉の言い回しも学べそうだ。
合わせてICTを活用した多聴、英会話レッスン、英作文添削も導入しており、総合的に英語力を高める授業を行なっている。その成果として、高校3年生のほぼ9割が英検準2級以上を取得しているという。
コロナ禍で中止となっていた海外研修も、今年度からプログラムをリニューアルして再開する。
さらに中学3年生と高校1年生を対象にした、約2カ月間(1学期間)のターム留学が新しくスタートした。留学先はカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国。参加した生徒は「リスニング力がついた」「物おじせず話せるようになった」と振り返り、短期ではあるが得難い体験になったと語っている。
70名の生徒に対し、推薦枠は200
セントヨゼフ生への高い評価が形に
同校には難関国公立大学と難関私立大学をめざすSAC(スーパーアドバンスコース)と、国公立大学と私立大学をめざすAC(アドバンスコース)の2コースがある。
SACでは中学の3年間、日本人教員とネイティブ教員の2人担任制で学習や生活指導を行う。英語でのホームルーム活動を始め、日常的に英語を交わす機会があり、自然と英語に慣れていく。また中学〜高校1年生までは体験的な特別講座を年間10回行ない、自ら学び、探究する姿勢を培っていく。
ACでは、一人ひとりの学習状況を把握し、習熟度別授業を行なう教科もある。フォローアップの時間を設け、授業だけで受験に必要な実力を定着させていく。さらに1・2年は音楽と美術の授業を週2時間ずつ設定し、情操を養うとともに、体験学習を通して社会貢献できる精神を育てていく。
各コースともにSTEAM教育を取り入れており、化学や技術、工学などを学ぶことにより、総合的な探究力、創造性を養い、問題解決能力を育む取り組みを行なっている。
また、南山大学、同志社女子大学、鈴鹿医療科学大学と高大連携協定を結び、それぞれの大学との連携プログラムを予定している。さらに、三重県で初めて野村證券㈱と経済金融協定を結び、生徒の将来を見据えた教育を行なっている。
そんな中で、国公立大学へは毎年10名以上が進学。推薦枠は1学年約70名に対し200枠もあり、進路の可能性を大きく広げている。
「世界に貢献するリーダーを育てたい」。そのための女子教育の大切さを語る原田校長。英語を、世界を、身近に感じられるセントヨゼフは、海を越えてきたシスターたちの思いを今に伝えている。
セントヨゼフ女子学園高等学校・中学校 https://sjjg.ac.jp/