「行動できる知性」で「解なき時代」に飛び込み
自ら道を切り拓く「たくましさ」を育む
学校法人静岡理工科大学 星陵高等学校
地域に根差し、地域のニーズとともに成長しながら、「解なき時代」を切り拓く「行動できる知性」を育てる星陵高等学校。全県でもトップクラスの入試倍率に加え、本年度は、国公立大学と超難関私立大学に133名、首都圏難関私立大学に115名が合格。また、早慶上理・GMARCH・関関同立すべてから合格者を得た。星陵高校での教育の成果が、社会からも求められている証左といえよう。この充実の進学実績を支える教員たちの姿勢、分厚い進路指導の仕組みや、星陵魂ともいえる生徒たちの「たくましさ」がどう育まれているかについて、深堀りする。
変化を恐れず日々進化し
生徒を支える教員たち
「星陵が1975年に開校した当時から、制服はブレザーでした」と、入試担当の佐野北斗先生は言う。当時は詰襟が主流だった中、変化を恐れない進取の精神が感じられるエピソードだ。
渡邉一洋校長も言葉をつなぐ。「世界のルールは刻々と変わりますから。この『解なき時代』に、変わらない教育を続けるリスクは非常に大きいでしょう。そんな中、海外の多くの交流校との関わりは、教員や生徒が最新の教育に触発されるよい機会ともなっています。
例えば、早期からICT利用が進んでいた海外校にならい、本校でもかなり前から日常的にICTツールを活用していました。おかげでコロナ禍においても、充実した遠隔授業を提供することができました。教員自らが日本の教育環境の課題を考え、解決しようと努力してきた結果です」。
変化を敏感に察知し、しなやかに進化しながら、どんな時代や場所でも生き抜く「行動できる知性」を育てるためには、まず教員が率先すべきだという姿勢だ。こうした教員の精神は、星陵の大きな特長である「オーダーメイドの進路指導」も支えている。
「志望校は、生徒自身が何をしたいかで選ぶべきです。そのためには、生徒のことをどれだけ深く理解できるかが何よりの勝負。星陵では、生徒ごとに入学時からの『カルテ』があり、生徒の活動実績や特色、強みなどを細かく積み重ねています」と、佐野先生は語る。
星陵高校の進路指導とは、生徒がやりたいことを見つけて具体化し、それを実現する方法を一緒に考えることだ。受験は通過点でしかない。最難関の医学部に合格できる学力があった生徒であっても、東大受験をむやみに薦めることはしなかったという。「偏差値だけで決めるのではなく、『どんな医者になりたい?』と一歩踏み込んでじっくり向き合いました。
この生徒は、自身の経験から地元に貢献したい気持ちが強いことがわかったので、浜松医大の受験を指導。見事合格しました」。日々、生徒一人ひとりの状況や思いと深く向き合い、各大学の特色や在籍教授の専門分野といった情報をアップデートし続ける。教員のこのしなやかな姿勢こそ、星陵の教育の特徴といえよう。
本物にふれる経験が
生徒を「たくましく」する
首都圏の学校に比べ不便な立地にあるからこそ、意図的に本物にふれる機会をつくるようにしている、と佐野先生は力を込める。「本物にふれて心が動くことで、生徒の探究心には火がつきます」。コロナ禍前に毎年おこなっていた海外研修旅行では、朝食と宿泊場所以外すべてが自由。
日本から現地へ連絡し、レストランなどを予約する生徒もいたという。「せっかくパリで買ったマカロンが、飛行機を降りたら気圧でつぶれていたと話す生徒もいましたね。そんな些細なことでいいので、本物にふれて心が動く体験をたくさん積んでほしい。教員の仕事は、生徒の世界を少しでも広げてあげること、そして背中を押してあげることですから」と、渡邉校長も口をそろえる。
リスクをとるメンタリティが今の日本には少ないとも言われる中で、「失敗してもいい」と生徒に感じさせることは、難しい面もあるだろう。それを支えるのは、「委ねて待つ」という教員の姿勢だ。「いかに先生が口を出さずにいられるか。待つことは信じること。自分自身で問いを立て、答えを見つけていく経験は、『解なき時代』を生きていくうえで、必要不可欠です」と、佐野先生は指摘する。
生徒を信頼する姿勢がベースにあるからこそ、生徒たちは、本物にふれる経験の中で自ら問いを立て、探究を怠らない。そして、打たれ強さ、失敗を糧にする回復力、コミュニケーション力、問題解決力、自己肯定力といった「たくましさ」を加速度的に身につけていくのだ。
大きな視点を得て
世界に羽ばたく星陵生
星陵高等学校は、2015年にSDGsが策定された翌年から県下最速で「SDGs教育」を導入。以降、「本校の教育活動に通底するテーマ」としている。
SDGsは、世界や地域と自らの学びを接続する切り口として非常に有効にはたらいているという。「本校のある富士宮市は、きれいな水が不可欠な製紙工場が立ち並んでいます。富士山に降った水は、長い時間をかけて目に見えない場所を通ってろ過され、おいしい軟水になります。
では、今我々がおこなっていることは、百年後の将来にどんな影響を及ぼすのだろうか。身近な切り口が、世界との接点になるのです」。世界の問題を自分事としてとらえ、向き合う視点はこうして育まれていく。
卒業生答辞では、コロナ禍の3年間を過ごした3年生の代表女子生徒が、高校生活を振り返って「この3年間は行き場のない怒りや涙を何度もこらえた」と率直な心情を吐露した。それでも、「難に臨んでは苟(いやしく)も免れんとするなかれ」という中国の古典『礼記』の一節を引きつつ、「自分が信じて進んだ道の前途にどんな困難が待ち構えていても避けてはならない」と自分たちを鼓舞する姿には、困難な時代の中で懸命に前を向いて進もうとする星陵生の矜持があった。
星陵は「星の山」という意味だという。星陵生は山上から遠く輝く星を見据え、「行動できる知性」という大きな翼で、「解なき時代」の夜空をたくましく切り拓いていくに違いない。
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