マナビネットオープンスクール2023 ●掲載:塾ジャーナル2023年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

「学び」の方法を学ぶことで
答えのない世界へ自信をもって踏み出し、
これからの時代を自分らしく生き抜く

玉川学園

「ゆめの学校」として創立された、玉川学園。中学部・高等部では、自ら学び、自ら考える「自学自律」を大切に、将来への一歩を後押しする教育環境や多様なカリキュラムを提供している。目まぐるしく変化を続けるこれからの時代を自分らしく生きるには、自ら積極的に物事と関わり、問いを立て、答えを選び取っていく力が必要だろう。言い換えればそれは、「学び続ける力」ともいえる。この力を育む核であり、玉川学園の教育の大きな特長でもある「学びの技」の授業について、深掘りする。


時代の要請から生まれた
「学びの技」の授業

「玉川学園前」駅から線路沿いを歩くと、やがて万緑のキャンパスが見えてくる。公園のような広大な敷地に個性ある建物が点在し、土と葉の匂いが鼻をくすぐる。玉川学園の生徒は幼稚部から高校まで、多感でかけがえのない時期をこのキャンパスで過ごす。「環境が人をつくるのです」。9~12年生(中学3年生~高校3年生)の国語科を担当する後藤芳文先生は、窓の外を見てそう呟く。

玉川学園の教育には、この恵まれた学習環境のみならず、多くの特長がある。そのひとつが、9年生(中学3年生)で行われる「学びの技」の授業だ。玉川学園では、探究型学習の柱として全学年で「自由研究」の授業を行う。10~12年生(高校1~3年生)の自由研究は、論文を研究成果としたよりアカデミックな研究となる。「学びの技」は、この10年生以降の自由研究の導入として設定された。

目を引くこの名前は、「ラーニングスキル」の和訳だ。「ひと言でいえば、学び方を学ぶ時間です。AIの台頭などもそうですが、社会はすさまじいスピードで姿を変えています。目の前の子どもたちは、卒業してからも学びを続けなければ、社会に適応できないでしょう。そんな時代だからこそ、学びそれ自体の方法を身に付けることは喫緊の課題です」。

論文の作成を通じて
「異なる立場」を理解する

「学びの技」は週に2時間が設定され、最終成果物として3000字以上の論文を提出する。「問いを立て、情報を集めて取捨選択し、構成を考えながら論理的に意見をまとめ、伝える。1年間を通して、この一連の流れを行うスキルを身に付けます。生徒は興味関心や気づきを推進力として主体的に学び、教員は必要なスキルを必要なときに提供してそれをサポートします」

はじめに取り組むのが「問い」、つまりテーマを決めることだ。年間を通じて取り組みたいテーマを見つけることは、簡単ではない。

「ただ漠然と考えるのではなく、最近気になったことなどを概観したり、その中で出てきたキーワードについて疑問を列挙したり、さらにその周辺知識を調べて掘り下げたりと、ワークシートなどを用いながら手順を踏んで問いを具体化していきます。問いの種を発芽させるのも、スキルのひとつなのです」

問いは、「イエス」か「ノー」で答えられるものにすることが原則だ。そうすることで、必ず自分と反対の立場の意見が生まれるからだ。「意識しないと、自分の仮説を正当化する情報ばかり集めがちです。そこで、独りよがりな主張にならないよう、論文では必ず想定される反対意見にふれ、それに対する反論をエビデンスとともに記します」。こうした作業は生徒の視野を広げ、「必ず自分と異なる立場や考え方がある」ことを生徒に体感させる。熟慮の結果、生徒はそれまでに積み上げてきた考えや問いそのものを変えることさえある。この「偏り」のなさは、漫然と身に付くものではない。

毎年10月には、保護者や外部の関係者も交えて、中間発表のポスターセッションが行われる。コロナ禍では、プレゼン動画へのコメントという形で行われた。ここで出た多様な立場からの指摘や疑問点は、論文の仕上げに向けて新たな視点をもたらす貴重な材料となる。かたや、「伝わった!」という経験は、論文を書き切る大きなモチベーションにもなる。伝えることは難しく、楽しい。

「3000字の論文を書くことは、苦しい作業です。だからこそ、達成すれば大きな自信にもなります。最後に『楽しかった、またやりたい!』と思えれば、言うことはありません」と、後藤先生は目を細める。

授業だけにとどまらない
一生涯のスキルを

「学びの技」の授業を経験した10年生について、後藤先生はこう評する。「学びに取り組む姿勢が、とても主体的で粘り強くなりますね。また、物事を考えるときも常に『脳内ディベート』を行い、ひとつの情報を鵜呑みにせず多面的にとらえるようになると感じています」

この「学びの技」の授業のはじめに、生徒たちは卒業生のビデオレターを見る。ある卒業生は、「必ずしも将来につながるテーマでなくても、自分の率直な興味を1年間掘り下げることができた経験は、何よりの財産になっている」と語る。年齢が近い卒業生の言葉だからこそ、生徒たちはこれからはじまる「学びの技」の時間にどんな意義があるのかを敏感に感じ取る。

どうして勉強をするのか? この素朴な問いに、後藤先生は迷いなく答える。

「世界は答えのない問いばかりです。常にイエスとノーが両立しています。『学びの技』で扱いたいのは、まさにそうした問題です。これから社会に出て、『自分はこっちの意見だ』と選び取る経験は無数にあるでしょう。生徒たちには、問いとその答えを自分の力でつかむことのできる人間に育ってほしいと願っています。一人ひとり、学ぶ意味は違うし、違ってよいのです。自分にとっての問題とじっくり向き合える、かけがえのない時間が『学びの技』だともいえるでしょう」

学校での勉強だけが学びではない。世界に生きることそのものが学びだ。つまり、学びは一生続いていく。「学びの技」で得られたスキルや経験は、玉川学園のすべての卒業生にとって、答えのない人生を自分らしく生き抜くための最高の支えとなるに違いない。


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