マナビネットオープンスクール2024 ●掲載:塾ジャーナル2024年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

中学1年生が楽しく学んだ
プログラミングと情報リテラシー

駒込中学校・高等学校

STEAM教育をはじめ、さまざまな探究活動に力を入れている駒込中学校・高等学校。
1年の締めくくりとなる3月、中学1年生全員を対象に、探究学習の一環として「プログラミング講座」と「メディア情報リテラシー講座」が行われた。プログラミングは、グループに分かれてボールロボットを動かすアクティブな学び。一方、座学のメディア情報リテラシーではフェイクニュースの実例に触れ、情報の扱い方を真剣に考えた。


プログラミングで
ロボットを動かせ!

勧学ホールの床にコロコロと転がる小さなボール。「かわいい」「うわ、反対方向に動いた」。タブレットで操作する生徒の視線の先にあるのは、ピンポン玉ほどの大きさのボールロボット「スフィロミニ」だ。4〜5人のグループに分かれた生徒たちは、タブレットでコーディング(プログラミング言語でコードを記載)しながら、丸・三角・四角のそれぞれの形にスフィロミニを動かそうと試行錯誤を続けている。

駒込中学校1年生が体験しているのは、アップルの共同創業者スティーブ・ウォズニアック氏が開発したプログラミング教育プラットフォーム「Woz ED(ウォズ・エド)」のひとつ。楽しみながらプログラミングを学びつつ、グループ全員でさまざまなアイデアを出し合って協力する「チームビルディング」を体験するというものだ。

最初のミッションは丸・三角・四角の形にスフィロミニが動くよう、コードを作成すること。制限時間は10分で、スッとできてしまうグループもあれば、隣のグループのところまでスフィロミニが転がってしまうグループもあった。

講師を務めたのは、株式会社ウィル・シードの友永喜久さんと吉村裕美さん。最初からやり方を教えてしまうのではなく、生徒自らが発見できるようお手伝いするのが役割だ。

「答えはひとつじゃないから、いろいろなやり方をみんなで考え出してほしい。1人だけが頑張るのではなく、アイデア出しやタイムキーパーなど、それぞれの得意なことでグループワークがスムーズに進むよう取り組んでください」とアドバイスした。

次に生徒が行ったのは、A地点・B地点・C地点にスフィロミニを動かしつつ、スピードを変えたり、スピンをさせたりすること。これも制限時間は10分。うまく動かせるようになったグループが戸惑っているグループを教えにいくなど、生徒の動きも活発になっていく。

最後に挑戦したのは「スフィロミニでダンス」。テーマは「駒込学園、未来」で、それを元にタイトルを決め、表現したいコンセプトを決めていく。生徒はあらかじめ用意された音源の中から好きなものを選んでダウンロード。スフィロミニの動きや色、音を使い、ダンスでコンセプトを表現することにチャレンジした。

授業の終わりには、グループごとにつくったダンスを発表した。コンセプトは「花まる」「十人十色」「平和」などユニークなものから壮大なものまでさまざま。「十人十色」ではスフィロミニの発する色を変えるなど、工夫を凝らしていた。会場のあちこちでは「おー!」という驚きの声や拍手が起こり、仲間と協力し合えたことで生徒は自然な笑顔になっていた。

ライオンが逃げたのは本当?
溢れる情報の正しい扱い方を学ぶ

「メディア情報リテラシー講座」の講師は、立教大学特任教授で日本ファクトチェックセンター副編集長の宮本聖二氏。冒頭、宮本氏が生徒たちに見せたのは、洪水で冠水している道路を大仏像が流れていく映像。もちろん合成だが、シュールな絵面に生徒たちはクスクスと笑う。

次に宮本氏が見せたのは、悪質なフェイクニュース。偽者のゼレンスキー大統領が「戦争をやめて家族の元に帰ろう」と呼びかけている。「これは2年前に人工知能(AI)が作ったディープフェイクです。今ではもっと進化していて、本物と見分けがつかなくなっています」と宮本氏。

日本でも能登半島地震発生時に偽の救助要請や「兵器を使った人工地震だ」などといったデマがSNS上に溢れた。「これからは情報を見抜く力、正しいものを選び、確認する力を身につけることが欠かせません」と宮本氏は話す。

続いて、フェイクニュースがどれだけの害をもたらしたか実例を紹介。2016年4月の熊本地震では、動物園のライオンが逃げたという情報が、街中を歩くライオンの映像とともに拡散した。宮本氏は「これで誰が困ったのか?」と生徒に投げかけた。事実、この投稿の影響で、動物園や警察、市役所に問い合わせが殺到し、復旧作業の妨げとなった。さらに動物園の周辺に住んでいた人はライオンを恐れて避難所に行けず、余震で命を落とす危険性もあった。他にも、軽い気持ちで発言したものが、多くの人に実害をもたらした例がいくつも紹介され、生徒は真剣な表情で見つめる。

宮本氏は、自分たちが情報を検索しているつもりでも、実は偏った情報を「見せられている」かもしれない危険性についても解説。情報を自動選別し、各ユーザーの好みに合う情報を勧めるアルゴリズムは便利な機能だが、多様な情報との出会いが妨げられる。そうした状況は「フィルターバブル」と呼ばれ、泡の中に私たちは閉じ込められていると話す。

「私たちの行動は、すべて情報が元になっています。つまり『情報が社会を動かす』と言えるでしょう。偽の情報に騙されないことはとても難しいですが、私たち自身が騙さない側に回ることはできます。確実でない情報や、誰かを攻撃するような情報を安易に広げないことが大切です」と宮本氏は指摘した。

探究学習を終えて生徒の感想

プログラミング講座 K・Tさん

「最初はスフィロミニを四角に動かすことでさえ難しかったのに、だんだん慣れてきて、スピンをしたり速度を調節したりできるようになりました。機会があれば他の班がやっていたようなジャンピングができるように工夫してみたいです」

メディアリテラシー講座 R・Yさん

「情報は私たちの身の回りに溢れていて、その中には嘘の情報もたくさんあります。特にSNSの使い方や危険性にもっと気をつけなくてはなりません。情報は便利であるとともに、危険なものでもあることを、この講習を受けて改めて実感しました」


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駒込中学校・高等学校 https://www.komagome.ed.jp/