「選ばれる学校」であり続けるため
探究学習で多彩な進路に対応
霞ヶ浦高等学校
昭和21年に霞ヶ浦農科大学(現在の茨城大学農学部)に併設の霞ヶ浦農業学校として創設され、今年78周年を迎える霞ヶ浦高等学校。特進選抜コース、特進コース、総合進学コースの3つのコースがあり、2024年、夏の甲子園出場を決めた硬式野球部をはじめ男女サッカー部、男子バレーボール部、吹奏楽部、ヨット部、男女ソフトテニス部、陸上競技部など、全国的に活躍する部活動でも知られている。2021年からは國學院大學との高大接続の学びにも取り組んでいる。
この春就任した岡村守校長に、これから目指す霞ヶ浦高等学校の未来について語ってもらった。
2025年
「学習支援センター」を開設
2024年4月、教頭を経て校長に就任した岡村守校長。長年、霞ヶ浦高校で教鞭をとり、多くの生徒の成長を見守ってきた。
「コロナ禍を経て、学校の在り方が変化し、転換期を迎えたと感じています。加えて止まらない少子化やAIの台頭、戦争の勃発、地球沸騰化問題など、当たり前だったことが当たり前ではなくなる先の見えない時代になってきました。そうしたなかでも、『霞ヶ浦高校で頑張りたい』と思ってもらえるような取り組みを進め、生徒や保護者から『選ばれる学校』であり続けたいと思っています」と就任の抱負を語る。
部活動が盛んな同校では人工芝のサッカーグラウンドや硬式野球部の室内練習場、音楽ホールなどハード面を充実させてきた。2025年には「学習支援センター」を開設する予定だ。
このセンターは放課後21時まで利用でき、自習するだけではなく、教師やチューターの指導も受けることができる。また模擬面接やプレゼン入試対策の練習をしたり、勉強の合間にリラックスしたりできるスペースも設ける予定だ。大学入試の方法が多様化し、総合型選抜や学校推薦型選抜の割合が増える中、センターを活用して、そうした入試にも柔軟に対応していきたいと考えている。
「選ばれる学校になるためには、ハード面だけではなくソフトの両面を充実させる必要がある」と岡村校長。そのために力を入れているのが「探究学習」だ。
探究学習で企業とコラボ
開花する生徒たちの新たな才能
霞ヶ浦高校では2023年度の探究学習として、協力企業8社から自社の課題を出してもらい、解決方法を生徒が考えるコラボレーションを行なった。
生徒がグループに分かれてアイデアを出し合った後、その案が本当に消費者のニーズにマッチしているのか、土浦駅でアンケート調査を実施。データを集めて統計資料をつくる試みも併せて行なった。「総合型選抜では、生徒自身が集めたデータを元にした課題論文が必要なこともあります。探究学習では、そうしたさまざまな試験形式も見据えています」と地歴公民科主任の湯澤拳先生は話す。
最後は各教室でグループごとに発表を行ない、そこから選ばれた代表グループが企業へプレゼンテーションをした。
「企業の方からは『若い人の柔軟な発想に感心した』という嬉しい言葉をいただいています」と岡村校長。「一方的に先生の話を聞くスタイルの授業と違い、生徒自身が能動的に参加する探究の授業はとても楽しそうです。なかには、文章を書くのが上手い、プレゼンテーションスライドを作るのが得意など、テストの点数だけではわからなかった才能をみせた生徒もいます」と話す。
人生を豊かにする設計図
「キャリア探究」
2024年度には、学校の所在地である阿見町がかかえる課題解決ができないかと、町と一緒に考える取り組みが進んでいる。阿見町長が学校を訪れ、現在の町の課題や展望について講演する「地域探究講話」を実施。高齢化や休耕地の増加などの課題を提起され、それらの解決に向けて何ができるかを考える探究が進行中だ。
こうした総合探究とは別に、大学受験を見据えた「キャリア探究」にも力を入れている。「自分のやりたいことを見つける方法」や「才能の見つけ方」をテーマにした授業を行なったり、国立大学の学校推薦型選抜に合格した卒業生の事例を紹介したりしている。
進路指導副部長兼キャリア探究主任の髙木健輔先生は、「私たち教師は、合格だけが高校教育の最終地点だと思っていません。探究学習においては人生を豊かにするための人生設計図を生徒自身に考えさせ、掴んでもらうことに重点をおいています」と話す。岡村校長も「本校は進学だけではなく、就職する生徒もいます。就職、専門学校、大学など、どの進路を選ぶにしても教師が手厚くフォローをしています」と語る。
國學院大學と連携協定
模擬講義など高度な学びを体感
2021年から学校法人國學院大學との包括的連携協定を結んだ同校。コロナ禍では直接大学を訪問することはできなかったが、オンラインによるデータサイエンスセミナーや、教職員を対象にした研修会をオンラインで行なってきた。
規制が緩和された昨年は、1学年特進・特進選抜コースの生徒と保護者が大学見学会に参加。経済学模擬講義の受講や、図書館・博物館を見学し学食も体験するなど、大学生活をイメージできる機会を設けた。また、今年度は保護者対象の「國學院大學特別講演会」を実施する。今後も高大接続による、高校だけでは得られない学びを体験してもらうことを考えている。
岡村校長は「全国から本校に入学したいと思う生徒を集めたいと考えています」と話す。全国から生徒が集まれば、町の活性化につながり、阿見町のみならず近隣市町村ももっと元気になれる。
「現在、阿見町の人口は増えており、霞ヶ浦高等学校の魅力を発信し続けることで、一家で阿見町に移住し、本校に通ってもらえるようになればと思っています。壮大なチャレンジですが、ひとつひとつ進んでいきたいです」と岡村守校長は未来を見据えている。
霞ヶ浦高等学校 https://www.kasumi.ed.jp/