マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

実力進学校が取り組む新しい学び方
得意分野を伸ばし、望む進路へ導く

中部大学春日丘中学校・高等学校

名古屋の中心部からでも30分圏内の通学しやすい学校です


高等学校は1965年、中学校は1990年に創立。建学の精神「不言実行、あてになる人間」には創立者・三浦幸平氏の「実行力のある、人や社会から信頼される人間をつくりたい」という願いが込められている。7時間授業と充実した学習指導で進学実績を伸ばしてきたが、近年は選択制の学習カリキュラムを導入し、多彩な学びを実践している。さらに来年度は高校のコース編成を改編し、生徒の望む学びを尊重しながらこれまで以上の進学実績を目指す。中学校から始まった改革のあゆみ、来春からの高校新編成のねらいを聞いた。


中学校から改革に着手し
学習の量から質へ転換はかる

愛知県春日井市は名古屋市へのアクセス良好で暮らしやすいベッドタウンとして人口増が続いている街だ。市内に中学16校、高校8校がある中で唯一の私立中学校・高等学校であり、公立志向の強い愛知県にあって実力進学校として信頼を集めてきた。昨年、創立55周年を迎えた高等学校が来年度からコース編成を改編する。

校長の二村啓先生は「7時間授業に加えて放課後補習を行い、学習時間が多く面倒見の良い学校という特色を打ち出してきました。しかし時代とともに生徒気質や保護者の方たちが期待されることは変わります。最難関大学を目指す生徒、別の目標を持つ生徒、それぞれに寄り添う学校になる必要を感じて改革に取り組み始めました」と語る。

改革はまず中学校で4年前に始動した。これに取り組んできた教頭の清水宣隆先生は「授業時間を減らすのではなく、学習の量から質への転換がテーマでした。ポイントは4つ。①個々のポテンシャルを高めるための選択制講座の導入、②ICT教育環境の整備、③グローバル教育、④系列校の中部大学との連携です」と振り返る。

このうち①選択制講座の導入は、従来の7時間授業から6時間授業プラス「セレクトタイム」とし、一人ひとりの得意分野を伸ばせる講座を選ぶカリキュラムに改編した。講座は「アドバンスト」「サイエンス」「ソーシャル」「ベーシック」部門がある。

「アドバンスト」は英語のスピーキングとライティングの指導、数学は大学入試問題を使って論理的思考力を身につけるもので、東大・京大・医歯薬獣医系進学を目指す生徒が選択している。「サイエンス」は実験や数学パズルを楽しみながら理数系の能力を高める。「ソーシャル」は社会科学的探究や異文化理解に取り組む。「ベーシック」は英語、数学の授業のフォローアップで基礎学力向上をはかる。

②ICT教育環境の整備は生徒全員がタブレットを持ち、画像や動画の教材を学習に活用している。昨年のコロナ休校の際には、リモート学習がスムーズに実施できるという想定外のメリットもあった。

③グローバル教育では英語4技能の強化とともに海外研修や留学生を迎えての交流、イングリッシュキャンプなど異文化理解と国際感覚を培う機会を多く設けてきた。

そしてキャンパスが隣り合う④中部大学との連携では、大学の研究施設を活用した授業を実施し、知の刺激を受けて将来の学びへのモチベーションを高めてきた。


グローバルミーティングでは、海外の高校生とSDGsについて考え、課題研究の成果を発表し意見の交換を行い、国際感覚を磨く

来年度は高校のコースを改編
選択制講座で幅広い学びを

このような春日丘中学校の改革を経て、新学習指導要領の施行に合わせて高校でも新編成をスタートさせる。これまでの啓明、特進、国際、進学の4コース制を3コースに集約。「啓明コース」は高校募集をせず中高6年一貫で最難関大学に挑む。高校から入学する生徒は、難関大学や医学部医学科進学を目指す「創進コース」と、部活動と学習を両立させたい生徒を応援する「進学コース」で学ぶ。どのコースでも中学校と同様に選択制講座を導入して進路実現に必要な分野を強化する。

さらに「創進コース」には語学系学部や海外進学を目指すグローバルルートと医歯薬系、難関国公立大学を目標にするアドバンストルートがある。「進学コース」には中部大学への進学が有利なベーシックルートと国公立大学、難関私立大学をねらうスタンダードルートがある。

なお、高校入試はコースごとに募集し、どのルートで学びたいかは入学後に決める。清水教頭は「ルートはあくまでも指導方針であり融通のきくものです。興味や関心が変わればルートを変更してもいい。生徒と話し合いながら、それぞれの希望進路や得意分野に合った選択制講座を選び、最適なルートを生徒と一緒に考えていきます」と説明する。


(左)ICT環境を整備。全生徒がタブレットを学習に活用している
(右)中学校の選択制講座「サイエンス」では化学の実験や数学パズルに取り組む

中部大学への近道という魅力
外部の難関大学挑戦も支援

中学校と同じく高校でも以前から中部大学と連携した学びの機会を設けてきた。学園の理事長は核融合・プラズマ研究の第一人者、飯吉厚夫氏。中部大学はノーベル賞有力候補と言われる有機化学者の山本尚教授が在籍し、フィールズ賞受賞の数学者、森重文氏を特別招聘教授に迎えている。こうしたトップレベルの研究者の講演を聞いたり、中部大学進学希望で成績などの条件をクリアした生徒は大学の講義を受講し、単位認定をされる。受験生からの人気が年々高まっている中部大学への進学ルートがあるのは魅力の一つだ。

一方で進学実績も伸ばしている。昨年は京都大学、名古屋大学をはじめとする国公立大学、早稲田、慶應、上智などの難関私大、医歯薬獣医系に多くの現役合格者を出した。渉外部主任の藤下真生先生は「高校入学時には平凡な成績だった生徒が3年間で伸びて進路を実現するケースが多いのが本校の特色です」と言う。

中学校から始めた今回の改革を二村校長は「私立だからできる多彩なプログラムを積み上げてきました」と自負し、清水教頭は「授業の選択肢を増やしたことで今まで以上に個々の可能性を広げてあげたい」と楽しみにしている。この新しい学び方で成長し、新時代に貢献してくれる世代に期待したい。


中部大学春日丘中学校  https://www.haruhigaoka.ed.jp/junior
中部大学春日丘高等学校  https://www.haruhigaoka.ed.jp/senior