マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

北海道から発信する、新たな「高大一体教育」
2023年4月、大学キャンパス内に新築移転

北海道科学大学高等学校

生徒一人ひとりの能力を最大限に引き出すための施設・設備が充実


「GO! NEWEST!」を合言葉に2023年4月、大学のある手稲前田キャンパスに移転する北海道科学大学高等学校。「高大一体教育」という北海道初の教育プログラムがここから始動する。高大一体が目指すのは、生徒が自らの視野を広げ、自分の人生を切り拓く力を養うことだ。
3年次には新たに「系列大進学コース」を設置。進学予定者は高大で相互単位認定する「コンカレントプログラム(単位早期修得制度)」も実施する予定だ。橋本達也校長に新校舎や新コースに込めた思いを聞いた。


生徒の「主体的な学び」と
自由な発想を生み出す新校舎

大学キャンパス内に着々と工事が進められている新校舎。三角形という特色ある形の校舎には「主体的に学ぶ」という北海道科学大学高等学校のコンセプトが体現されている。

校舎内の教室をつなげているのは、廊下ではなくオープンな空間。その空間には椅子や机が置かれ、生徒たちが自分の好きな場所で、勉強できる自学自習スペースとなっている。

「これまでの日本の学校は、無駄をなくした画一的な空間がほとんどでした。しかし、この校舎ではある意味『無駄』とも思える空間をつくっています。この無駄が実は文化を生むのです。生徒が想像力たくましく、われわれの想像を上回るような空間の使い方をしてくれればと思っています」と橋本達也校長は話す。 


(上)大学キャンパスの一角に建つ新校舎。大学の空気にも日々触れる
(下)吹き抜けがあり、開放感あふれる校舎

1階から4階まで見通せる吹き抜けや、校舎前の庭とフラットにつながる多目的スペースはまさに「開かれた学校」そのもの。開放的な空間は省エネ設計でもあり、一年中快適な環境で学習や部活動に励むことができる最先端の校舎である。

最先端の設備を誇る大学施設を高校生が利用することも予定。大学教員による授業や探究活動等を通し、大学生との交流もより活発に行うことが予定されている。北科大を通して、大学生活を具体的にイメージしてもらい、高校生と大学生が交流することで、新たな化学反応が起きることも期待されている。

「系列大進学コース」を設置
進学内定者には先取り学習

「特別進学コース」「進学コース」の2コース制をとっている同校。2年次に上がる時には転コースも可能だ。「転コースを希望する生徒は、当初は進学コースを選んだけれども、特進コースにチャレンジしたいという生徒が多いですね」と橋本校長。

さらに2022年度入学生からは3年次に「系列大進学コース」を設置。これは北科大への進学を目指すためのコースで、特進・進学どちらのコースからでも選択可能。高大接続プログラムをさらに強化する。

このコースで学び、3年前期までに系列校推薦枠で推薦合格が内定した生徒は、「コンカレントプログラム」を受講。生徒は3年後期、大学で講義を受け、その単位は高校と大学の相互で認定される。大学進学後はその分の履修がなくなり、時間的な余裕が生まれる。その時間は、留学や国家試験に向けての勉強、ボランティア活動、企業へのインターンシップなどに充てることができる。

北海道科学大学は工学部、薬学部、保健医療学部、未来デザイン学部の4つの学部があり、コンカレントプログラムはすべての学部・学科に適用される。「コンカレントは文系の学部で行われることが多いのですが、理系がメインの大学での実施は少なく、これまでにない取り組みだと自負しています」と橋本校長。将来的には1学年の3分の1に相当する、100名以上の生徒がこのプログラムを受講することを想定して準備を進めている。


高大連携の探究活動では大学教員・大学生・高校教員が学びをサポート。グループとして問いをたて、それをどう解決するのか、発表する


【射撃部】
全国大会に常連の部活動も多い。またスポーツ・文化教室を開催し、地域と共に育つ「地域共育力」も育んでいる

選択することを経験し
自己決定ができる人間に

昨年から「総合的な探究の時間」ではクラスの枠を取り払った授業を展開している。生徒は15講座から興味のあるものを選んで受講。各講座の講師を務めるのは、国内外の多種多様な分野で活躍する外部の専門家だ。

発展途上国の教育問題については、ネパールで活動している講師と教室をオンラインでつないでレクチャー。他にもLGBT、エネルギー問題など多種多様な講座を用意している。

LGBTの講座を見学した橋本校長は、女子生徒から「男子が女子の制服を着たいと言ったらどうしますか」と突然質問を受けた。橋本校長は、学校祭では男子が女装をして笑いをとっていた例を出し、「女装をギャグとして認識していることについてどう思う?」と逆に質問を返した。女装=笑いと捉えている限り、ジェンダー問題の本質を捉えることができないと考えたからだ。

「その後、彼女たちは『そもそも制服とは何か』を考え始めました。探究の時間では知識を得るのではなく、そこからさらに一歩踏みこんで、本質的なところに近づいてほしい。それができれば探究学習は成功だと思います」

進学コースの2、3年次には「総合選択」という科目を設置。検定対策やアート、情報など興味のある科目を取ることができ、それぞれの生徒にとっての「得意」や「好き」を伸ばせるようにする。

「転コースもそうですが、高校3年間の学びの中で、自ら選択をする場面をたくさん設けることで、将来何を目指すのか、何が自分により相応しいのか。自己決定ができる人間を育てたいと思っています」と橋本校長。

様々な選択肢があることは、生徒の個性を引き出し、一人ひとりを大切にすることにつながる。それには教員集団の質を高めることがポイントだと、橋本校長は考える。ここ数年、「社会人経験がある」「海外経験が長い」など多彩なキャリアを持った人材を採用。生徒にとってのロールモデルとなり、挑戦する気持ちをかき立てる存在にもなってほしいと考えている。


橋本 達也 校長

「自分のやりたいことを見つけ、海外へも飛び出していく。そんな生徒を育てていきたいです」と橋本校長はその先を見据えている。

北海道科学大学高等学校  https://hs.hus.ac.jp