マナビネットオープンスクール2023 ●掲載:塾ジャーナル2023年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

レジリエンス教育で育む
しなやかに立ち直る力と、思いやりの気持ち

静岡学園中学校・高等学校

落ち込んだ気持ちから立ち直る方法を学ぶ「レジリエンス教育」。レジリエンスとは「心の回復力」のことで、ストレスやプレッシャーをしなやかに跳ね返す力と解釈されている。若者の自己肯定感やストレス耐性の低さが問題となっている今、レジリエンス教育を長年研究してきた静岡大学教育学部の小林朋子教授と静岡学園がタッグを組み、2022年度からこの「レジリエンス教育」をスタート。今年度からは「静学SEL(Social and Emotional Learning)」という名称を掲げ、生徒の心に寄り添う教育に力を入れていく。


きっかけはコロナ禍
不安な気持ちを和らげたい

静岡学園中学校・高等学校がレジリエンス教育に取り組むきっかけは、2020年のコロナ禍での一斉休校だった。

「学校に行けない、友達に会えないということは、生徒がこれまでに経験したことがない日常です。それによって心に重しを抱えてしまわないよう、少しでも前向きな気持ちになってもらおうと2020年3月、生徒と保護者に『レジリエンス』に関するお知らせを送りました」と話すのは、生活部長の安藤一弘先生だ。

安藤先生が送ったのは、静岡大学教育学部の小林朋子教授が全国の学校で無料で使えるように公開した「レジりん通信」の一部。「レジりん」というキャラクターが登場し、不安な気持ちにどう向き合えばいいか、易しい言葉で語りかける内容になっている。

「それ以前から、養護教諭の勉強会・静岡県養護教諭研究会でも、小林先生とのつながりがありました」と養護教諭の森美絵先生。

その後、安藤先生と森先生らで心の育成を図るワーキンググループが立ち上がり、すでにレジリエンス教育を実践していた県立伊東高校城ヶ崎分校を視察。実はこの分校には、鈴木啓之校長の知己の先生が在籍しており、中学時代に困難を抱えていた生徒を支援する取り組みを小林教授とともに行なっていた。

そうした偶然と縁がつながり、2022年4月からは、中学1年生の3クラス、高校1年生の3クラスで「子どものレジリエンス(心の回復力)育成」のプロジェクトがスタートした。

自分の強みを発見しよう
弱みもポジティブに変換

2022年度に行なったレジリエンス教育の講座は4回。4月の第1回は「自己紹介をしよう」をテーマに、アイスブレイクとして対象クラスの生徒が受講。講師は小林教授でオンラインで行われた。

生徒は自己紹介の前にワークシートを記入。「自分の特徴(好きなもの/得意なこと)」や趣味、最近の体験などが書いてある。どんなことを伝えたいか先にセリフを考えておくことで、初対面でもスムーズに自己紹介をすることができた。

2回目のテーマは「自分の強みを発見しよう」。この回はクラス担任が講師となり、「強み発見シート」を使って、自分の得意なこと、コツコツやり続けていることなど、自分の強みを書き出していった。一方、自分の性格で気になる部分は「リフレーミング(言い換え)」をすることにも挑戦した。

「『頑固』を『意志が強い』というように、弱みをポジティブに言い換えていきます。そうすることで、自分のいいところを見つけてもらうことが狙いです」と安藤先生。

うまく書けない生徒には、小林教授の研究室の大学院生や学生が優しくフォロー。「なんでもいいんだよ」「部活を頑張っているの?」など、生徒が自分の強みに気づけるような声がけをした。学生は席順のシートを持っており、授業後、気になった生徒の様子を書き込んで、担任の先生へ報告している。

「そうした生徒を見つけ出すのも、レジリエンス教育の狙いの一つでもあります。悩みを抱える生徒に一早く気づくきっかけにもなっています」と安藤先生は話す。

失敗した友達に
あたたかい言葉をかける

第3回のテーマは「ストレスと上手に向き合うには」。小林教授が講師となり、生徒はストレスを感じた時の対処法(コーピング)を学んだ。気分が沈んだ時は、音楽を聞いて気持ちを落ち着かせるなど、自分なりに気晴らしができる方法をリストアップ。この回は、生徒は体育館や柔剣道場に集まり、ゴロンと横になってリラックスできる呼吸法を実践。心地よい音楽も流され、「思わず眠ってしまう生徒もいました」と森先生。

第4回の「あたたかい言葉をかける」は、小林教授と安藤先生が講師として実施。最初に「失敗してしまった友達にどう声をかけるか」を、小林教授の研究室の学生たちが寸劇で実演。「強い言葉で非難する」「優しく慰める」の2パターンを生徒に見てもらい、感じたことを生徒はワークシートに綴った。

その後、生徒たちはペアになり「運動会のリレーでバトンを落としてしまったクラスメイトにどんな言葉をかけるか」を実際に行った。

見守った森先生は「高校生はうまく言葉を選んでいました。中学生は肩を叩いて慰めるなど、スキンシップも上手に使っていましたね」と話す。

2023年度からはプログラムの名称を「静学SEL(Social and Emotional Learning:社会性と情動の学習)」と名称を変更し、対象を中学1、2年生と高校1、2年生に広げて継続していく予定だ。

安藤先生は「生徒にはくじけたり、落ち込んだりした時、しなやかに自分の力で立ち上がる力をつけてほしいです。また、鋭い言葉を相手に投げつけるのではなく、まずは心を落ち着かせ、思いやりを持って接する姿勢を身につけてほしいと思います」と話す。

鈴木校長は「心の耐性や人との関わりを学ぶことは、今の子どもたちにとって必要なことだと考えます。ただ、子どもたちは一人ひとり違います。方法を決めつけるのではなく柔軟に考え、数年かけて静学のメソッドを構築していきたいと思っています」と話している。

富士山が見える教室
新教育棟が完成!

入学希望者が増えたことにより、多目的教室と新教育棟を増築した同校。多目的教室は2022年8月に完成、新教育棟は2023年2月に完成した。

新教育棟は4階建てで1階はピロティ、2〜4階に1教室ずつの合計3教室。現教育棟とグラウンドの間に建てられており、グラウンドが一望できる場所にある。2〜4階の教室からは、天気が良い日には富士山を望むことができ、眺望は抜群。生徒の笑顔溢れる姿がイメージできる爽やかな教室に、ますます同校への期待は高まりそうだ。


過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/east/2022_9starhill/
静岡学園中学校・高等学校 https://www.shizugaku.ed.jp/