「解なき時代」を生き抜くために
心動かす多様な体験を通じて課題を見つけ
自ら仮説を立て、探究していく力を身につける
学校法人静岡理工科大学 星陵中学校・高等学校
星陵高等学校は1975年、星陵中学校は2011年に開校以来、地元に愛されながら着実に教育の成果を積み重ねてきた。その成果が、近年の志望者数や大学合格実績に如実に反映している。しかし、星陵中学校・高等学校にとっては、受験はあくまで通過点でしかない。生徒一人ひとりがやりたいことを見つけ、自らそこに向かって邁進できる環境を整え、全力でサポートする。それが実現できるのは、6年間を通した教育プログラムと、高い志をもった教員の力あってこそだ。堂々たる富士山を望みながら、大きな視点で「星陵の今」を語る。
教育成果を積み重ね
地元に愛される学校に
富士山を間近に望みながら、通称「星陵坂」を登ると、緑に囲まれたスタイリッシュな校舎が見えてくる。「設計は、スカイツリーを設計した日建設計様にお願いしました。明るく開放的で、いい意味で学校っぽくないですよね」と語るのは、橋本正中学教頭。校舎からは、生徒を狭い世界に押し込めたくないというポリシーが垣間見える。
6年制「中高一貫コース」の難関私大(早稲田大、慶應義塾大等)合格実績は、年々増加している。2018年度には48名だったが、2020年度は80名、2022年度は104名と3ケタに届いた。
「長らく推進してきたPBLや探究学習などの成果が、新しい入試形態である総合型選抜や学校推薦型選抜への対応力となって表れたことが一つの理由です。われわれは、入試のための教育はしていません。これからの時代に必要と考える教育を充実させてきた過程に、入試があったというだけです」と、渡邉一洋校長は分析する。
また、入試出願者も令和3年度は81名、4年度は97名、直近の令和5年度は109名と、年々増大している。星陵中学校では、次年度の出願予定者に向けたイベントを毎月行っており、在校生がボランティアスタッフを務める。「来校者の保護者の多くが、生徒の様子やプレゼンのレベルの高さに驚きます。普段から書き、伝える活動を行っている生徒たちにとっては“いつものこと”ですが、褒められれば満更でもなく、自己肯定力アップにつながります」
ボランティアスタッフは中学生の中から希望者を募る。1年生70名ほどのうち半分弱が手を挙げるというから驚きだ。「入学前に説明会に参加した生徒の中には、スタッフとして活躍する中学生の先輩たちの姿を見て、『入学したら自分も』と思っていたのだそうです」
心が動くことは、教育のもっとも大切な入り口だ。こうした星陵の生徒の姿に直にふれるからこそ、志願者が増えてきたのだろう。「在校生の弟や妹が入学してくれることも多く、うれしいことです」と、渡邉校長は目を細める。
「楽じゃないけど楽しみ!」
美育で生徒の心と頭を全開に
星陵中学校では、知育・徳育・体育に加え、『美育』が中高の6年を貫く大きな教育の柱となっている。美育は、本物にふれる体験を通じて心を動かし、自ら興味をもった課題に対して仮説を立て、探究活動を行っていくプログラムだ。各教科の授業を縦糸とするならば、横糸にあたるのがこの美育だ。「本校では、年に数回フィールドワークを行います。富士山周辺の植生調査、陶芸などに加え、研修旅行なども含まれます。このフィールドワークの事前準備、事後のまとめまでが1セットのプログラムです」と、橋本教頭。
そのプログラムとは具体的には、どのような活動なのだろうか。「たとえば、10月に行われる京都・奈良の研修旅行では、泊まるホテル以外、すべて自由に生徒が計画を立てます。『新選組』『和菓子』『お茶』『庭園』など、班ごとに決めたテーマを、具体的な計画に落とし込んでいきます」
それにあたって、教員は生徒を導くことはしないという。「『庭園って整然としているけど、何か決まりごとあるのかな』と呟いたら、さっそく庭園の面積を算出する生徒なども出てきました。教員はファシリテーターとして、トリガークエスチョンを投げかけるなど、生徒たちの学びの触媒となるような役割を担うべきだと考えています」
旅行後には、生徒たち自身で撮影した写真なども交え、4000字程度の壁新聞を作成する。「これでは短くて書ききれない! という生徒も出てくるほどで、これらの活動は『楽じゃないけど楽しみ!』と前向きに取り組んでいます。逆に、親睦だけが目的の遠足に行くと、『事後課題はないの?』と戸惑う生徒も。その姿を見ると、『何だかごめん』と思いますね」そう言って笑う橋本教頭の表情は、屈託がない。
6歳上のロールモデルにふれ
価値観や視野が広がる部活動
他にも星陵の魅力として挙げられるのが、部活動の充実だ。星陵には30ほどの部活動があり、毎年4月に所属先を選択できる。掛け持ちも可能だ。「通常の中学校では、中3の後半は高校入試のために部活動が途切れてしまうでしょう。でも中高一貫校である星陵では、およそ5年半のまとまった時間を味方につけて部活に没頭できるため、飛躍的な成長に結びつきます」と、入試担当の佐野先生は言う。
また、部活動の場で最大で6歳離れた高校の先輩とふれ合うことで、早い段階から多様な価値観が身に付く。「高校では、将来やりたい研究のために勉学に励む生徒もいれば、18歳から社会に出て働く生徒もいます。こうした多様な先輩たちと関わることで、『いろいろな考え方があるんだ』と、子どもの価値観の幅が大きく広がるのです」
さらに、部活は生徒の大切な居場所にもなっている。「全国大会を目指す子もいれば、のびのびと個性を伸ばす子もいる。部活は多様な過ごし方が許容される場所です。教室とは違った第二のコミュニティが、ここにはあります」
そうして星陵で過ごす6年間は、学校生活の傍らに堂々とそびえる富士山の姿とともに、これからの解なき時代に飛び込む生徒たちの確固とした縁(よすが)となるに違いない。
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