FOCUS 掲載:塾ジャーナル2021年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

下町の塾長3人のYouTubeチャンネルが面白い!
下町の塾長3人のYouTubeチャンネルが面白い!私立学校の先生もオンラインで登場!

下町の小さな学習塾の塾長3人が繰り広げる「よもやま話」のYouTubeチャンネル「下町塾長会議」が今、じわじわと人気を集めている。堅苦しさがなく、ほんわかした語り口で、入試情報や勉強法など、現役塾長がリアルな肉声で発信している。今春、動画数が100本を超え「YouTubeを見た」という入塾生も増えてきた。快進撃を続ける塾長3人にインタビューした。


【下町塾長会議 メンバー】
進学個別桜学舎 塾 長 亀山 卓郎 氏
自由塾町屋教室 教室長 吉元 和彦 氏(ブラボー先生®)
大島栄伸塾   塾 長 飯塚 章 氏


中小塾の中身をもっと知ってほしい

元々同じ塾団体に所属し、月に1回のペースで顔を合わせていた3人の塾長。「そっちの塾はどう?」「この学校のこと聞いている?」などの立ち話的な情報交換をしていた。「それがある時、映像を使った広告戦略として、このよもやま話をそのままYouTubeにアップしたらどうだろうか、という話になったんです」と吉元和彦氏は話す。

当時は各自でYouTubeチャンネルを立ち上げるか迷っていた時期でもあった。それならば3人で週1回、番組をアップしていこうと2019年5月から配信をスタートした。「一番最初のコンセプトは、僕らが日常的に生徒や教材のことを一生懸命語っているということを、多くの方に知ってほしいということから始まりました」と亀山卓郎氏。

「僕の塾ではご家庭の問題や不登校の相談も受けることがあります。中小塾は損得抜きで、たった一人の生徒のために、どうやったら勉強ができるか、どんな進路があるか、真剣に悩んで考えているのです。こんなに子どもたちの未来像まで考えているのに、なかなか塾の中身を理解してもらえていなかった。それは自分たちのことを語ってこなかったからでもあると思いますので、これからは自分たちで情報を発信していこうと考えたのです」と語る。

「下町塾長会議」というネーミングは、3塾とも東京の東部に位置することから名づけられた。他にも塾長の名前を一文字ずつ取って「亀吉飯店」などが候補に挙がったが、現在の名前に決定。
「自分たちのアイデンティティを表現するのに『下町』はこれ以上ないキーワードだったと思います。ほんわかした雰囲気や、雑草魂といったインディーな感じもあって、我々のことをきちんと表す言い得て妙な名前になったと思います」と吉元氏は話す。

こうして3人で始めた下町塾長会議チャンネル。しかし、始めて1年ほどは無風状態で、大きな反響はなかったという。

「保護者や生徒よりも、塾や学校などの業界内の方から『見てますよ』『楽しそうですね』と言われたくらいでした」と飯塚章氏。それが変わってきたのが、コンテンツ数が100近くになってからだ。各塾でこの動画がキッカケの問い合わせが増えてきた。

現在、下町塾長会議の動画数はレギュラーの動画に加え、お悩み相談シリーズや高校受験・中学受験の話題のシリーズを含めて100本に達している。

「当初から100本はスタートラインだと思っていました。そもそもコンテンツ数が少ないと、YouTubeの関連動画のリストにもなかなか表示されません。これまでの2年間は種まきの期間。ようやく芽が出てきて、これからいかに収穫していくかが課題です」と亀山氏は話している。

人気トップ3は中学受験関連の動画

レギュラー動画は月1回、いずれかの塾に集まって約1ヵ月分をまとめ撮りする。それを毎週木曜日の深夜に1本ずつアップ。前日までにテーマを決め、打ち合わせはあまりせずに撮影する。台本がないのは、塾長同士の自然な会話を大切したいから。1本の長さは12分前後。編集担当は亀山氏だ。

これまでで一番再生回数が多かった動画は、2019年の10月10日に配信した「都立中高一貫校受検のメリット・デメリット」で、3252回再生されている。2番目が「私立中学の受験動向」で2561回。3番目が「成功する受験生の親御さん」で836回。以下、「中学受験のメリット・デメリット」、「受験前に学校を休むか問題」、「下町塾長会議とは」。こうしてみると、中学受験関連の動画の再生回数が多いのがわかる(再生回数は2021年3月1日現在)。

「中学受験をした方がいいのか、しない方がいいのか。ヒントが欲しくて観ている印象ですね。特に都立中高一貫校受験についてはわからないことが多いので、情報が欲しい保護者が観ていると思われます」と亀山氏は分析する。

収録で気をつけているのは、他塾の批判はしないこと。それと業界用語は噛み砕いて解説することだ。「塾長3人が集まると、どうしても業界用語が出てしまうことがあります。例えば、高校受験だったら併願優遇や1・4倍という単語。都立入試では5教科500点満点を1・4倍して700点満点に換算しますが、急に1・4倍と言われても、一般の方はわかりませんよね。なので、少しフォローを入れ、何について話しているのかわかるようにしています」と飯塚氏は話す。

おっさんたちは商品価値がない!?

あと、大切にしているのは動画に「笑いの要素」を少し入れること。ちょっとした言い間違いは編集しないで、そのままスルー。それが観ている人の笑いを誘うからだ。

「YouTubeをやっていて感じるのは、おっさんたちの商品価値のなさですね。若くて可愛い女性には勝てません。自分だって、YouTubeを観ていておっさんが出てきたら、チャンネルを変えることがありますよ(笑)。だからこそ、観てもらうための工夫が必要です。YouTubeはくだらないことをやって再生回数を稼いでいると思っている方もいるかもしれないですが、実際にやってみると、多くの人に観てもらうことは、どれほど大変かわかりますね」と亀山氏は語る。

3人の年齢は亀山氏が52歳、吉元氏が45歳、飯塚氏が37歳と、ちょうど年代が分かれている。動画での立ち位置は画面に右側に亀山氏、真ん中に飯塚氏、左側に吉元氏。若手の飯塚氏が進行をし、先輩塾長2人の話を引き出す展開が多い。

「世代によって視点が違うので、『え?そこ、突っ込む?』と思う時もありますけれど、それがいいのかもしれませんね。世代間の違いが相乗効果を生むと思いますし、バランスも取れていると思います」と亀山氏。

4月4日からは葛飾区のコミュニティーFMで「月刊!ラジオ下町塾長会議」という番組が始まった。第一日曜、午後6時からの30分番組で、親御さんの受験や教育のお悩み相談を受けている。他にも、下町塾長会議のホームページも立ち上げ、一般社団法人化することも進んでいる。また下町塾長会議の本も出版予定だ。

「これまでも私立学校の先生にオンラインで登場していただいて、YouTube LIVEを開催したことがありました。今後もライブイベントや公開収録もできたらやってみたい。本当にアイデアはいっぱいあるんですよ」と嬉しそうに話す亀山氏。下町塾長会議の活動はますます広がっていきそうだ。

下町塾長会議     https://www.youtube.com/channel/UCBicF2eNo56JYYBR6JMhFkQ