さまざまな才能と個性が集う
文武両道校が育む知と力
洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校/大阪桐蔭中学校高等学校
さまざまな体験を通じて自らの感性と協調性を養う(洛南高等学校)
洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校は弘法大師が開いた綜藝種智院をルーツとする京都屈指の進学校。日本代表選手や五輪メダリストも数多く輩出している。大阪桐蔭中学校高等学校は高校野球部が二度の甲子園春夏連覇を果たし、サッカー、ラグビー、吹奏楽等の強豪校としても知られる。進学実績でも京大、東大への合格者数を伸ばし続けている。
文武両道の共通項を持つ両校の教育理念や学校生活を北川辰雄高等学校校長と今田悟校長に語っていただいた。
それぞれの可能性を引き出し
目標の実現をサポートする
――はじめに両校の教育理念をお聞かせください。
北川 本校のルーツは平安時代に弘法大師が開かれた綜藝種智院です。そうした歴史から仏教の根本的な教えである三帰依(仏・法・僧)を現代の言葉に直した「自己を尊重せよ」「真理を探求せよ」「社会に献身せよ」を校訓として、自らを伸ばしていく教育を実践しています。
今田 本校の建学の精神は、創立者の瀬島源三郎の言葉「偉大なる平凡人たれ」です。毎日の生活は多くの者にとって平凡なものですが、その積み重ねが結果的に実績を残します。日々を誠実に過ごし、地道に努力を続けて社会に貢献できる有為な人材に成長してもらいたいと考えています。
北川 本校でも「雑事は仏事」という言葉で日常のあらゆる行いが自分を磨く機会になるということを伝え、挨拶や掃除に真剣に取り組んでいます。大阪桐蔭さんの平凡な日々を大切にするという精神と重なりますね。難関大学進学を目指す生徒がおり、またクラブ活動で成果をあげたい生徒がおり、勉強とスポーツの両輪にされているところも同じだと感じます。プロ野球選手をたくさん輩出されていますし吹奏楽部も強豪です。京大をはじめ難関大学へ合格者も伸ばしていらっしゃいますね。
今田 おっしゃる通りです。一人ひとりの可能性を引き出し、サポートしているところが共通していますね。
北川 得意分野や目標の違う生徒が互いに刺激し合っているほうが学校は面白いと思いますね。今、求められている多様性ではないでしょうか。
洛南高等学校校長 北川 辰雄
洛南高等学校のバレーボール部は全国大会優勝経験のある強豪。どのクラブも学習をおろそかにせず多くの生徒がクラブに打ち込みながら進学を目指す
五輪代表、プロ選手を輩出
クラブの活躍が生徒の励みに
――強豪クラブの活躍は生徒たちの励みになっていますか。
北川 生徒たちはお互いにリスペクトしていますね。インターハイも学力試験も点数や順位がつく厳しさは同じです。それぞれが目指す分野で努力しているのを知っています。
今田 クラブが好調な年は進学実績もいい傾向があります。彼らも頑張っているから自分たちも頑張ろうというモチベーションになるのでしょうね。
――クラブ活動では華々しい活躍の一方で、負けたり、レギュラーになれない経験を乗り越えなければなりませんね。
北川 今回のオリンピックで50キロ競歩に出場した丸尾知司選手は本校OBです。中学時代は中距離走の選手でしたが高校では怪我のために結果が出せず、顧問が競歩への転向を勧めました。その時、顧問はグラウンドに咲いているツツジを喩えに「根さえ腐らなければ来年また咲く。何度でもやり直せる。」と話したそうです。その言葉を支えに丸尾選手は競技人生を続けられたと言っていました。
今田 指導者がどう導くかは大きいですね。本校の野球部には毎年20人ほどが入部しますが、全員がレギュラーになれるわけではありません。スコアラーになったり、データ分析担当になる生徒もいます。活躍した選手が注目されますが、本校の指導者は全員がチームに貢献できる機会を用意しています。
大阪桐蔭中学校高等学校校長 今田 悟
大阪桐蔭高等学校吹奏楽部はコンクール、マーチングコンテスト金賞受賞。日本管楽合奏コンテスト最優秀グランプリ 文部科学大臣賞受賞
大学合格はゴールではない
未来につながる進路選択を
――両校は進学校でもありますね。学習カリキュラムや進路指導方針をうかがいたいです。
北川 中学入試を経て入学する生徒は小学生から塾通いをしてきたので、入学してまた頑張れと言うだけでは燃え尽きてしまいます。ですから中学では学校生活を楽しむためにクラブ活動を奨励しています。この中高一貫コースは高校入試がないだけに中だるみになる生徒もいます。また、高校から入学する生徒も2年目は気がゆるみがちです。そのため中学も高校も1年目で学習習慣を身につけるように指導しています。
今田 洛南さんはスポーツ行事が多いということですが、私たちも観劇や音楽祭といった機会を設けて勉強疲れや中だるみを抑えるようにしています。年度はじめの4月に3泊4日で実施する学習合宿は勉強漬けですが、6月には各学年で2泊3日の夏季研修を実施します。学年ごとに研修内容は異なりますが、例えば中学1年では理科実験を主に行います。楽しみながら理科分野への興味を引き出すのがねらいです。学校行事は学習への意識を高めたり、友人と楽しい時間を共有することで、学校生活にメリハリをつけたりするのに役立っています。
北川 進路指導については、私は担任をしていた頃は「入れる大学で妥協するのではなく入りたい大学を目指しなさい」と言っていました。また「親に言われるから」という理由で決めるのも入学してからミスマッチが起きかねません。誰かに言われるからではなく自分で人生を切り拓いてほしい。そのヒントになればと中学3年で京大に赴いて先生やOB・OGの学部生、院生の話を聞く機会を設けています。
今田 本校でも大学の先生方やさまざまな職業の方にお話をしていただいて目標を持つことの大切さを意識できる機会を持っています。高い目標を持つことで日々の学習が変わります。志望校に入ることがゴールではなく、入って何を学ぶのかを考えられるように指導しています。
大阪桐蔭の夏季研修は知的好奇心を刺激する2泊3日の体験カリキュラム。写真は中学1年生の理科実験実習。科学への興味を引き出す実験に取り組む
――変化し続ける未来に巣立つ生徒たちへの期待をお聞かせください。
今田 昨年は新型コロナの影響でオンライン授業も行いましたが、やはり対面形式で授業することは大切だと改めて感じました。技術が進化し世の中が変わっても、人と人が接することで何かが生まれることは変わらないと思います。生徒たちには良い人間関係を築いて応援してもらえる人になって、将来は社会で活躍してもらいたいと思います。
北川 本校OBで哲学者の岸見一郎先生は、著書の『嫌われる勇気』に「成功という物差しではなく、幸せな人生を歩んでいるかを尺度にするべきではないか」と書いておられます。成功した、失敗したというのは他人からの評価です。それに左右されず自分の人生を歩んでほしい。そして校訓の一つに「社会に献身せよ」とあるように、培った能力を人の幸せのために活かしてほしいと願っています。
洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校 https://www.rakunan-h.ed.jp
大阪桐蔭中学校高等学校 https://www.osakatoin.ed.jp
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