審査員も唸るハイクオリティなプレゼン
キャリア甲子園5年連続準決勝出場の実力!
帝塚山中学校高等学校(奈良県)
コンピュータ室に集合した準決勝大会出場6チーム。熱い戦いが始まる
近鉄奈良線「学園前」駅を降りると、目の前に帝塚山学園の校舎が現れる。丘陵地の閑静な住宅街に広がるこの学園は、実に80年もの歴史を持ち、幼稚園から大学院までの学舎を持つ名門校だ。昨年は中学校高等学校がコロナ禍での学園祭を敢行、並々ならぬ努力の末大成功させ話題を呼んだ。さらに高校生を対象にした国内最大級のビジネスコンテスト「キャリア甲子園」で5年連続準決勝へ勝ち進み、帝塚山の実力を全国に知らしめた。「キャリア甲子園」を指導する「情報」の授業担当の西川和宏先生と、昨年度準決勝へ進出した6チームの内、2チームにその道のりを聞いた。
「もっと自分たちの実力を知ってほしい」
キャリア甲子園で叶った担当教師の夢
キャリア甲子園とは、企業・団体が出題するテーマに対して高校生がチームを組んで課題解決に挑むビジネスアイデアコンテスト。実現可能性や新規創造性などあらゆる角度から厳しく審査され、最も優れたチームが勝利を勝ち取る。本校では2017年大会に初めて有志で参加、準決勝まで進んだ。その翌年から情報の授業に取り入れ、毎年準決勝に進出するチームを複数輩出してきた。
そして一昨年はついに初の決勝大会進出。惜しくも優勝は逃したが、エントリーした企業のピップ株式会社との縁がつながった。さらに昨年はなんと6チームが準決勝大会へ。エントリーした6,643名、1,738チームから書類審査や動画審査を経て48チームが絞り込まれ、その中で実に6チームが帝塚山高校からのエントリーだった。
「もともと帝塚山の生徒は自己表現が得意だったと思うんです。今までは発表の場が校内でしたが、キャリア甲子園で校外の大会に参加して、実は全国トップレベルのプレゼンテーション能力があるということが可視化できた。生徒全員の自信につながっています」と西川先生。
情報の授業では、毎年高2の生徒は全員キャリア甲子園にチャレンジする。テーマが発表されてから第一次書類審査の締め切りまで約10回程度の授業や、放課後を利用して企画書を作成する。修学旅行中の時間を利用したり、休日にオンラインで打ち合わせをしたりするチームもある。書類審査を通過したチームは冬休みを利用してプレゼンを仕上げる。冬休みから準決勝が行われる2月まで、西川先生も多くの仕事を抱えながら常に各チームとのミーティングを行うなど、目の回る忙しさだ。
「どの生徒たちも本当に頑張っています。彼らが『答え』を見つけるのに私もできる限りのサポートをしたい。決勝の会場はとにかく熱く、全国の出場チームや協賛企業の幹部との出会いがあります。普通の高校生活にはない機会なので、ぜひ体験してほしいし、そういう経験をした彼らが学校に戻ってくることで、周りの生徒たちに影響を与えてくれる。昨年は決勝には進めず生徒たちは悔しがっていましたが、同時にやり切った充実感に満ちた良い表情をしていたんです。学校生活にはない特別な体験をさせてあげられたかなと思います。次はこの悔しさを受験勉強にぶつけてくれると思います」と西川先生は話す。
「bloom」は「女性の社会進出」をテーマに、女性特有の問題に切り込むプレゼンとなった
答えのない課題を突き詰め、形にする
厳しいチャレンジを乗り越えた生徒たち
グローバル企業「バイエル」の課題にチャレンジした女子4人組のチーム「bloom」。女性の社会進出に向け、女性の体調をサポートできる仕組みを考えたいという方向性は決まっていたが、その実現方法を考える段階で、多くの先生方に意見を聞いた。先生方一人ひとりが別のアドバイスをくれるので翻弄され過ぎないようにアイデアをまとめていった。
チーム内での意見が分かれた時は、どんな小さなことでも発言する、というルールを全員で共有し、何かあるごとにそれぞれの思いを擦り合わせていった。大会前よりも自分の意見を表現するのがうまくなったと4人は言う。
一方、「生命保険協会」の課題にチャレンジしたチーム「BuBunBunsuuBunkai」は男子3人組。生命保険と婚活アプリを組み合わせた奇抜なアイデアが話題を呼んだ。
「新しいシステムの提案」を求められ、とにかくたくさんのアイデアを出した。論理的に矛盾しないことを重視しながら試行錯誤する中、新しいと思ったアイデアが既存のものだったり、途中で論理が破綻したりするなど、何度も心が折れかけたが、それでもさらにアイデアを出し続けることで乗り越えていった。
実はこの2チーム、敗者復活戦である「カロリーメイト杯」から準決勝大会へとのしあがってきた。その分、連帯感もあり、お互いに影響を与え合ってきた。
女子チームの計画的な作業の進め方を見て、後れを取らないように奮起する男子チーム。また男子チームのプレゼンテーションのクオリティの高さに圧倒され、プレゼン内容を練り直した女子チーム。お互い「自分たちだけだったら、今回のクオリティは出なかった」と口を揃える。
(左)プレゼン本番を前に、気合を入れる「BuBunBunsuuBunkai」
(右)ライティングや色彩調整は納得いくまで練り込み完璧に仕上げて挑む
全力で向き合い、多くの学びを得る
その経験がより良い未来を創ってゆく
準決勝大会はZoomで行われた。当日、コンピュータ室に参加6チームが揃い、大会のプログラムに沿って順番にプレゼンテーションを繰り広げた。Zoomのプレゼンも各チーム細かいこだわりがあり、授業スタイルのプレゼンをWEBカメラで映す男子チームは、自分たちの見せたい資料がWEBカメラを通すとどう映るのかなど、画面デザインを何度もチェックし、繰り返し調整した。
女子チーム「bloom」はプレゼンをいかに「魅せるか」で練りに練って挑戦。Zoomで資料共有してのプレゼンでも自分たちのリアクション写真をパワーポイントに貼ることで、発表者の存在感を出していった。結果がどうであれ、自分たちのやりたいと思うことをやりきる。そこにコミットしたメンバーたちは、全力を出し切れたことに満足していた。そして、参加したことによる自身の成長を深く感じていた。
自分たちのプレゼンテーションにプライドと自信を持って臨んだ男子チーム「BuBunBunsuuBunkai」は、結果を聞いて「悔しかった」が、チャレンジする中で、勉強とは違う頭の使い方を知り、プレゼンテーションの伝え方や魅せ方の重要性、商品開発過程の緻密さ・難しさを実感するなど、さまざまな学びを得ることができたと語ってくれた。
西川先生は授業の中で常に、実際の社会には「正解はない」と伝えている。だから、自分なりの「答え」を見つけ、自分で判断し、自分を信じて進めていかなければならない。社会に出ればそれが当たり前になる。キャリア甲子園で体験したことは、確実に今後の人生に生きていく。
次世代を担うたくましい人間を育てることを使命とする同校。滲み出る教師の熱量は生徒たちに伝わり、生徒たちもまた明るくエネルギッシュだ。関わるすべての人々が、お互いに磨きあい、成長し合える環境が、帝塚山中学校高等学校にはあると実感した。
帝塚山中学校高等学校 https://www.tezukayama-h.ed.jp/
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