マナビネットオープンスクール2022 ●掲載:塾ジャーナル2022年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

朝夕の瞑想で自分を見つめ、心を育む
10年先を見据えた教育活動
生徒の思いと行動の合致で「やりたいこと」を実現

東大谷高等学校(大阪府)


親鸞聖人の教えを基に「報恩感謝」の心を育む東大谷高等学校の建学の精神。「人間教育をする進学校」を掲げ、113年もの間、多くの人財を育て上げてきた。2013年に泉ヶ丘へ移転、男女共学校としての新スタートを切った同校は、ICT環境を整えており、コロナ禍でもリモート授業を実施し、生徒の学習をサポート。また、昨年初めて医科大学合格者を輩出、さらに今年は大阪大学合格者を含む、過去最高の進学率となった。その取り組みについて、長尾文孝校長にお話を伺った。


手帳の活用と基礎学力徹底
自分を知り必要な力を補う

同校には国公立・難関私立を目指す特進コース、国際社会で活躍する人材を育てる国際コース、併設大学・有名私大を目指す進学コースの3コースがある。今年は特進コースを中心に、国公立大学合格率は約44%、関関同立・産近甲龍は約48%アップという過去最高の進学率となった。

特に近畿大学は、初の3桁(137名)の合格者を出している。その要因としては、自己管理のためのフォーサイト手帳の活用、基礎学力の徹底、そして生徒一人ひとりが「学びたいこと」を優先して受験校を決定する、という3点が考えられるという。

1つ目は、5年前から導入し、入学と同時に各生徒に渡される「フォーサイト手帳」。PDCAサイクルを回すことで、能力アップや目標達成につなげていくことを目的とし、生徒たちは日々、自分の一日を手帳に記入、時間の使い方を確認している。その結果、自分でスケジュールをやりくりし、必要な時間をつくり出す。先生方も生徒たちの手帳を確認し、各生徒の個性や長所に合わせてきめ細かくフィードバックするなど、献身的に対応している。

「先生方も本当に忙しい中、丁寧に書き込みをしていて、それが生徒たちのやる気の継続につながっています。良い循環が生まれてきていると感じますね」(長尾校長)

また2つ目として、日頃生徒たちには基礎学力の大切さを伝えていることがあげられる。特に特進コースの1年生については、1学期に中学の基礎を反復し、身につけた上で、本格的に高度な勉強に入っていく。全学年で年2回の基礎学力テストを行い、各生徒の得意不得意を確認した上で、定着していない部分を復習していく。基本を身につけた生徒は、秋以降飛躍的に成績が伸びたという。


疑問や興味を徹底的に調べ、自ら学び、人に伝える力を培う探究ゼミナール

人としての芯をつくる心の教育と
自分の道を見出すプロジェクト

そして3つ目、生徒一人ひとりが「学びたいこと」を優先して受験校を決定したこと。これは今年度の卒業生が入学する際の、長尾校長のメッセージが響いたのでは、と言う。

「高校の入試説明会などでも、『せっかく高校に行くのなら、自分で何か目的を持って、このために高校に行っているんだという思いで3年間を送ってほしい』と話してきました。入学式の式辞でも、人から指示を受けて動くのではなく、自分で動いていってくださいとお伝えしたんです」

自分のやりたいことを見つけるには、同校の「10年未来プロジェクト」が功を成す。1年次からキャリアガイダンスや分野別の進路説明会などが行われ、生徒たちが自分の未来を考える機会となっている。これによって地元志向が多かった保護者や生徒たちが、ここ数年で全国の大学を目指すようになったという。

自分の将来をしっかりと考えるようになった生徒たちが増え、やりたいことのために諦めず受験に挑む。加えて、教科の先生との面談を繰り返し、不安をしっかり解消することを徹底した。

また、同校では創立以来、社会に出てからの心の礎となる心の教育を行なっている。宗教の授業や朝夕の瞑想の時間だ。バッハの「G線上のアリア」が流れる間、生徒も教師も皆静かに目を閉じ、自分を振り返る。長尾校長自身、最近特にこの時間の大切さを実感するようになったという。

「いろいろなお寺の住職に来ていただいて、お話を聞くというのも自分を見つめる時間ですし、瞑想の時間もそうですね。たくさんの人々とのつながりの中で、自分は生かされているんだという気づきや、感謝の気持ちが湧き上がってくる、そんな豊かな時間が、将来自分自身の心の拠り所になっていくと思います」


(左)様々な分野で活躍している方々の話を聞き、職業への興味を引き出すキャリアガイダンス
(右)校訓は「朝に礼拝 夕に感謝」。自己を見つめることで感謝の心を育てる

高大連携プログラムが順調に進行
今年より専属サポート教員配属

同校ならではの学習プログラムとして、併設の大阪大谷大学と連携し、大谷学園の建学の精神である「報恩感謝」の心を持ち、現代社会において必要とされる資質能力を持つ薬剤師や小学校教員を育てる「9年一貫の薬剤師育成プログラム」と「7年一貫の教員育成プログラム」がある。特に教員育成プログラムは先行実施から含めると今年で3学年がそろった。

いずれのプログラムも1年次は、大阪大谷大学の先生や卒業生による特別セミナーを受講し、モチベーションを高め、薬剤師や教員を目指す意志を確認するための機会としている。

2・3年次は、週当たり2時間程度、薬剤師育成プログラムでは理科(化学・物理・生物)、数学(数学Ⅲ)の授業を通して、教員育成プログラムでは英語力強化講座や教職基礎講座、人間力育成プログラムなどを通して土台となる資質の育成を図る。また、教育現場体験などを通して高校在学中から児童と交流する機会もある。

今年からは高大連携参事として専属のスタッフも配属。生徒たちと定期的に面接を行い、9年・7年という長い期間のモチベーションをつなげるために、メンタルケアをはじめ様々な相談にのるという。さらに、メンタル面だけでなく、金銭的な優遇制度も設け、薬剤師や教員を目指す生徒を学園全体でバックアップする。


高校過程では人間力育成プログラムや教職専門講座など教師としての土台をつくる

東大谷高等学校 https://higashiohtani.ac.jp/rs/izumigaoka/


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