好奇心・探究心・挑戦心を育てる「地球学」で
『京都発世界人財』を育成
京都先端科学大学附属中学校高等学校(京都府)
京都先端科学大学との統合による中高大連携により、新時代に求められる資質・能力を育む多彩なプログラムを展開し、「京都発世界人財」の育成に努めている京都先端科学大学附属中学校高等学校。教育の根幹を担うのは、実践的な英語を身につけるグローバル教育、教科横断的・探究的学習を展開するSTEAM教育、”ホンモノ”に触れる体験を通して知的好奇心を育む地球学だ。なかでも「地球学」は、生徒たちが自らの人生を切り拓き、生き抜くために必要な力を培う同校ならではの取り組みとして知られる。「地球学」の”今”、そして”これから”についてお話を伺った。
(左)左から中学部部長の竹村慎吾先生、三堂仁豪さん、杉本暖さん
(右)2021年度から文部科学省WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業の拠点校にも採択された
「ホンモノ」に触れる体験を通して
探究心を引き出す「地球学」
――京都先端科学大学との統合による中高大連携により、今まで以上に学びのフィールドが広がる中、改めて「地球学」の位置付けを教えてください。
竹村慎吾先生 「地球学」で大切にしているのは“ホンモノ”を体験することです。これまでに、深泥池や枕状溶岩観察などのフィールドワークからニワトリの解剖など、多彩なプログラムを実施しました。学内にあるKUAS菜園では、トウモロコシやスナップえんどう、白菜などを栽培。「はちみつプロジェクト」では養蜂箱を設置し、採取したハチミツを瓶詰めにして文化祭で販売するなど、アクティブな活動を展開中です。「面白そう」と思ったことを体験し「本当に面白い」と感じたら、自ら調べてみようという探究心や好奇心が刺激されます。そうした湧き上がる思いを大切にしながら、最先端のテーマに取り組むのが「地球学」です。
——中学1年生で体験する「深泥池見学会」の思い出はありますか?
三堂仁豪さん 中学生になったばかりの4月の授業でしたが、初めて知ることばかりで新鮮な驚きがありました。深泥池には、氷河期からの生き残りとされる生物と温暖地に生息する生物が共存しているなど、成り立ちや特徴について先生から説明していただき楽しかったです。
杉本暖さん 野生のジュンサイを触らせてもらったり、ウシガエルやカメを手に取って見せてもらいました。貴重な場所でこれまで見たこともない植物を見て、普段の授業では感じられない自然の力を体感しました。
竹村先生 2年生のときに枕状溶岩を校外学習で体験します。枕状溶岩とは、海底火山が噴火した際にできる溶岩で、京都がかつて海底にあったことを示す重要な証拠です。壁のように岩肌が続く道を歩きながら、目にする植物や地形などすべてが学びにつながります。知識がなければ素通りするだけの道。知識があるかないかで、感動できる数が変わり、見える世界が変わる。今年は三堂くんが参加した「銭湯プロジェクト」や、杉本さんが参加した「ものづくり講座」などもあり、たくさんの「?」や「!」を体験していると思います。
京都先端科学大学工学部の協力を受けて「ものづくり講座」を実施
「これやりたい、これ面白そう!」を
どうカタチにしていくか
——「銭湯プロジェクト」と「ものづくり講座」について教えてください。
三堂さん 京都の地域資源の一つに「銭湯文化」があります。「銭湯プロジェクト」は銭湯の価値を再定義して、新たな文化として盛り上げようというものです。開店時間前から従業員の方が熱心に働いている様子を見学、仕事内容などについてもフレンドリーな態度で、丁寧に説明していただきました。オリジナルグッズも販売中で、エンターテイメントな可能性も感じました。
竹村先生 銭湯文化を絶やすことなく受け継ぐにはどうしたらいいか、そうした課題を共有する。キャリア教育の一貫としてもいいプロジェクトだと思っています。例えば「はちみつプロジェクト」で採れたはちみつを使ったレモンスカッシュを、風呂あがりのドリンクとして提供するなどの議論ができれば面白いと思います。
杉本さん 「ものづくり講座」では、モーターやプログラミングをどのように利用して生活に役立たせていくかを学びます。私はもともと細かい作業が得意で、小物などをつくるのが好きだったので、「ものづくり講座」のことを聞いて面白そうだと思い参加しました。つくる作業はめちゃめちゃ面白いですが、プログラミングは難しい(笑)。サーボモーターの制御法と超音波センサーの扱い方を学んでから、人が近づくとサーボモーターが動くというプログラミングにも挑戦しました。「手を近づけるとアルコールが出る、箱のふたが自動的に開く」など様々な活用方法に応用でき、楽しくてワクワクします。
(左)【銭湯プロジェクト】銭湯ファンが京都の銭湯文化を盛り上げる取り組みに参加
(右)【地球学特別プログラム】伊根の舟屋や伊根湾での岩ガキ・ブリの養殖見学を実施
——3年生は卒業論文作成にとりかかる時期ですね。論文の研究テーマとともに、将来の夢について教えてください。
三堂さん 僕は、「どうやったら効率よくジャンケンに勝てるか」を研究テーマにしようと考えています。アプローチ方法は先生と相談しながら進めていきたいと思います。将来についてはまだはっきり決めていませんが、今は勉強に専念し、進路の選択肢が広がるよう成績アップに努めています。
杉本さん 私の将来の夢は薬剤師になることです。薬学部のある大学に進学するためには、高校ではどのコースに進むのがベストなのかを家族で話し合っています。そのため、卒業論文は医療や薬学系に関連した研究テーマで構成していきたいと考えています。
——最後に、「地球学」の展望を教えてください。
竹村先生 中高大連携の強みを生かし、KUASにしかできない挑戦をしていきたいと思っています。コロナ禍で海外にはなかなか行けませんが、大学には続々と留学生が来ています。お互いの交流を通して「グローバルな時代に生きる資質はなんだろう」と考えるプログラムができたら面白いと思っています。『京都発世界人財』育成に努めていますので、「海の京都」「お茶の京都」「森の京都」という観点から、“私たちは何者であるか”をきちんと発信できる取り組みを充実させます。その上で、海外に目を向けたプロジェクトを構築していきたいと考えています。
京都先端科学大学附属中学校高等学校 https://www.js.kuas.ac.jp/
過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/west/2022_7kuas/