周囲を明るく照らす人創り
子どもの心を動かし「循環教育」で社会に貢献
賢明女子学院中学校・高等学校
世界遺産・姫路城の美しい天守を間近に臨めるロケーションで、70余年の歴史を育んできた賢明女子学院中学校・高等学校。
イエス・キリストの教えと聖母マリアの生き方を現代社会で実践するべく、創立以来「いつの日か燈台の光のような人になることをめざす」という教育目標を掲げ、周囲を明るく照らす人創りで社会貢献の道を探ってきた。
近年では探究活動やSDGs活動にも注力。そのお披露目の場ともなった学院祭(9月16日開催)を取材するとともに、今年学校長に就任された藤岡佐和子先生にめざす学校像を伺った。
プランニング力と協働力を養う学院祭
賢明ファミリーが集う場にも
家族ぐるみで来場されている方が多く、大盛況ですね。
藤岡佐和子学校長(以下、藤岡) お天気にも恵まれ、2000人強の方にご来場いただいていると聞いています。
新型コロナ感染拡大防止のため2020年度は中止し、2021年度は生徒だけ、2022年度は人数制限での開催でしたが、今年度は事前申請制ではありますが、生徒の関係者はどなたでも来場いただけるようにし、模擬店も復活しました。
4年ぶりにコロナ前の形となり、活気あふれる校内の様子をご覧いただけたと思います。
生徒の皆さんがそれぞれの持ち場で来場者をもてなされている姿を見受けました。
藤岡 当校では学院祭を、“プランニング力”と“協働力”を養う場と位置づけています。
今年度は、「学院祭実行委員会」に手を挙げた高校2年生を中心とする22名の委員が、まずテーマを「Blue Spring」と決め、学年展示の大枠を定めました。
例えば中学2年生はゲームの催し、高校1年生はフェアトレード商品の販売などです。そこから各クラスに落とし込み、呼び込み係や会計係などの分担を決め、いろいろな形で生徒が参加できるように配慮されています。
学院祭はまた各クラブの発表の場でもあります。中高一貫で活動しているので、横断的な学年展示とは違った「協働」の形を体験してもらえたと思います。
OBの方々がたくさん来場されるだけでなく、展示でも積極的に参加されていますね。
藤岡 私学なので先生方の入れ替わりが少なく、学校の規模もそれほど大きくないので先生と生徒の距離が近く、OBや旧職員が「ただいま」と帰ってきやすいファミリー的な空気が昔からあります。
学院祭は毎年恒例の同窓会の場となっていて、さまざまな形でサポートしていただいています。なかでも各自が持ち寄ったバザーは掘り出し物が多いと評判で、人気が高いですよ(笑)。
社会貢献をめざす「循環教育」
新プログラムで「心を動かす」
校長先生ご自身もOBでいらっしゃいますね。
藤岡 はい。卒業後、非常勤講師、専任講師、学年主任を経て、昨年まで高校の教頭でした。ファミリー的な雰囲気は私の在学当時からありました。
校長となられて、まず取り組まれたことは?
藤岡 基本に戻って、まず土台づくりから始めています。コロナ禍でマスク生活が当たり前となり、生徒が無表情になっていることが気になっていました。
学校名のとおり、当校は賢く明るい女性を育成することをめざしています。それには前校長もおっしゃっていたように、元気なあいさつが基本です。
全校朝礼でも先輩・後輩の区別なく笑顔であいさつすることを奨励しており、とても浸透しています。
中長期的にはどのような学校にしていきたいですか?
藤岡 「循環教育」ということを唱えています。生徒、教員、保護者、社会のどこかで分断されるのではなく、物事を常に流れさせ、結果的に社会に貢献できる学校づくりをめざしたいと思っています。
「循環教育」を行うにあたり、大切になさっていることを教えてください。
藤岡 知識を詰め込む偏差値重視の教育から、子どもの広い可能性を引き出す探究教育が重視される社会になってきました。
当校でも教科やコースの枠を越えて学ぶ楽しさを知る機会とする「クロススタディ」や、SDGs活動の一環として「Be Leaders」といったプログラムをスタートさせています。
子ども自身が興味をもっていないところに知識ばかり詰め込んでも、“やらされている感”では伸びませんし、自分の中ですら知識が循環しません。まずは、「心を動かす」ことが大事だと思うのです。
何かに心が動けば、それについて能動的に「どうしたらいいのだろう」と考えるようになり、自ずと知恵や知識が身につきます。
「学校に行けば、何か得るものがある」と思ってもらえるような、そしてそこからさらに、これまでにないものを生み出す人材を輩出できるような、そんな学校にしたいと考えています。
学院祭では、同校オリジナルプログラムのひとつである「クロススタディ」「Be Leaders」がブースを設け、学習や活動の成果を発表していた。
探究活動“Create the Future”の一環で、中学1年生時に実施している「クロススタディ」。スタート初年度の昨年は、「ブランディング・マーケティング」「パラスポーツ体験」「ゲームプログラミング」に取り組んだ。
本年度の「ブランディング・マーケティング」では、リンゴをテーマとする架空のオリジナル商品のプレゼンだった前年に対し、2年生となった今年はさらに踏み込み、リアルな商品であるカレンダーの製作に挑んだ。「10代の子をもつファミリー層」をターゲットに、市場調査や商品企画も生徒自身が実施。調査結果から分析し、「スケジュールの書き込み欄を大きくし、使いやすいものをめざした」という。月ごとに過去の学院祭のキャラクターが登場するデザインにして、1冊700円で販売した。
持続可能社会の実現に向けて積極的に行動できる人材を育成する「Be Leaders」は今年もブースを出展。フードバンクやベルマークなどの活動を紹介した。また、「届けよう、服の力プロジェクト」では、不要となった服をブースで回収。アパレルブランド「ユニクロ」との協同で、難民の子どもたちに服を届ける活動を継続的に実施している。パネル紹介によると、昨年度の難民数は約3530万人で、そのうち子どもは40%。この活動で昨年度は1万1827枚の服と一緒に“笑顔”も提供した。
過去の記事もご覧になれます
賢明女子学院中学校・高等学校 https://www.himejikenmei.ac.jp/