マナビネットオープンスクール2023 ●掲載:塾ジャーナル2023年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

「メインストリーム・コース」に改称
甲南大学との教育連携で、多様な未来を実現

甲南高等学校・中学校

甲南高等学校・中学校は、2024年度中1生から「アドバンスト・コース」が「メインストリーム・コース」に名称を変える。社会で必要とされる基礎力「ジェネリックスキル」を身につけ、将来社会で活躍できる人材の育成が目的だ(フロントランナー・コースは従来通り)。
新コース体制では、甲南大学との教育連携プログラムを強化し、甲南大学が行なっている「プレミアプロジェクト」にも参加する予定。大学の英知を中高においても共有し、高校生と大学生が互いに切磋琢磨できる環境を創っていく。


ジェネリックスキルに注目
社会で活躍できる人材を育成

なぜ今「メインストリーム・コース」へと変更するのか。入試広報部長の田村信平先生は「正解のない時代を強く生き抜くため、ジェネリックスキル(社会で求められる能力や態度など)の重要性が高まっています。それを身につけるため、甲南大学との教育連携プログラムをさらに強めていこうというのが、今回のコース名変更の趣旨です」と話す。

ジェネリックスキルとは「リテラシー」と「コンピテンシー」の2つのカテゴリーに分けられ、リテラシーは「実践的に問題を解決に導く力」、コンピテンシーは「周囲の環境と良い関係を築く力」と言われている。

「もともと甲南生はコンピテンシーが高く、周囲と共同して物事を行なうチームワークにはとても長けています。今後はリテラシーの部分をさらに鍛えていきたいと考えています」と田村先生。

今後力を入れていくのは、甲南大学が行なっている「プレミアプロジェクト」への参加だ。なかでも「関西湾岸SDGsチャレンジ」という、地域社会が抱える課題解決を考える取り組みに参加する予定。

「従来、アドバンスト・コースの高校生は、企業と連携した探究型授業に取り組んでいますが、メインストリーム・コースでは、高1生から大学生と一緒に活動できるようにします。高校生と大学生が互いに切磋琢磨し、刺激し合える場になってほしいと考えています」

甲南大学との結びつきは強くなるが、メインストリーム・コースの生徒は甲南大学以外の進学も自由に選べる。これまで通り、甲南大学への推薦入学の権利を留保しながら他大学を受験できる「留保受験制度」があり、希望する他大学にチャレンジできるのは変わらない。

「甲南の特徴はゆったり自由な風土の中で、ガツガツすることなく、有意義な時を過ごせることだと思います。そうした雰囲気は、生徒の成長にとても影響していると実感しています。今回のコース名改称ではシステマティックな大学との連携ではなく、緩やかな自由な風土を大切に、中高と大学が互いの英知を活かせたらと考えています」と田村先生は話す。

コース制設置後、最多の
国公立大合格者を輩出

フロントランナー・コースでは大学合格実績で快進撃が続いている。2023年度の大学合格実績は、コース設置以来最多の国公立大学(準大学含む)45名の合格者を輩出。2クラス73名という生徒数での快挙だ。

このコースでは、中2から中3にかけて「サイエンス・ラボ」「グローバル・ラボ」と言われる独自のカリキュラムを学ぶ。特に「サイエンス・ラボ」は、大学と同等の理科施設を使って行われ、理系男子にはたまらない魅力的な授業だ。同校には物理・化学・生物それぞれに実験室と講義室があり、電子顕微鏡など専門性の高い設備も揃っている。

「この充実した施設が決め手となって入学を決める保護者や受験生も多いですね。フロントランナー・コースをめざす生徒は、自分で実験し、考察を深めていきたい学究肌の生徒が多いと感じています。そうした基本的な学問に対する探究心が大きな支えとなり、大学進学の実績にも結びついていると思います」と田村先生。

一方、「アドバンスト・コース」では留学を核にした「グローバル・スタディ・プログラム」という国際教育プログラムを用意。2023年にはブリティッシュコロンビア大学に合格した生徒もいた。

他にもキャリアデザイン教育では、甲南OB企業を訪問。企業から与えられた課題に対して企画・提案することも体験する。企業の仕組みや商品開発について学び、将来のキャリアを考えるきっかけになっている。

個性を尊重し合う校風
友を助ける優しいハート

「世界に通用する紳士たれ」を教育目標に、「徳・体・知」のバランスがとれた学びを実践している甲南高等学校・中学校。

「本校では、何よりも徳育を重視しています。入試説明会で『うちの子は非常にこだわりが強く個性的で、中学校に行ったら浮いてしまうのではないか』と相談されることがありますが、『本校はそういうお子さんが一番浮かない学校なのです』と伝えています。生徒同士がぶつかりあいながらも、互いの個性を受け入れる校風があり、本当の意味での人間関係のつくり方を身につけ、個性をもったまま立派な紳士になっていくのです」と田村先生は話す。

中学・高校それぞれが、生徒主体の生徒集会を開催している。その中で当時高3生だった生徒が「父親も甲南中高出身だった」という話をした。その生徒は父親とはソリが合わず、同じ学校に進学するつもりはなかった。しかし家業がピンチに陥った時、真っ先に助けに来てくれたのは甲南中高時代の仲間だったという。「甲南とは一体どういう学校なのだろう」と興味をもった生徒は、甲南に入学し、甲南生として誇りをもつようになった。

「甲南生は、友だちが困っていたらどんなに忙しくても駆けつけるハートの持ち主ばかり。甲南大学との連携を通じて、甲南生の良さをさらに伸ばしていきたいと思っています」と田村先生は話している。


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https://manavinet.com/west/2022_7konan/
甲南高等学校・中学校 https://www.konan.ed.jp/