マナビネットオープンスクール2023 ●掲載:塾ジャーナル2023年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

これからの時代を生きるために必要な
「世界に通用するしなやかな人間力の涵養」をめざす

同志社香里中学校・高等学校

関西私立大学の雄・同志社大学および同志社女子大学への進学率が、例年95%前後と圧倒的な高さを誇る同志社香里中学校・高等学校。大阪で唯一「同志社」を名乗る同校もまた、アメリカで学び、日本の近代化に貢献した校祖・新島襄の思いを受け継ぎ、キリスト教主義・自由主義・国際主義を三本柱に、「良心の全身に充満したる」人材育成に注力している。このほど、中高6年での中期的な教育方針をまとめた『Vision2030』を制作。学校生活の“今”を紹介する学校案内とのセット配布で、PRを開始している。入試部主任の中瀬古佳史先生に詳しい話を伺った。


次世代を見据えた『Vision2030』で
中高6年で育成する人物像を明文化

『Vision2030』は、10年先の世の中を見据え、中学・高校の6年間で育成していきたい人物像と、その目標を実現するための活動方針を示したもの。制作にあたっては委員会を設置して議論を重ね、取り組んできた教育を具体的に明文化した。

人物育成の全体像を1本の木に見立てて、わかりやすくイラスト化。根の部分に基本理念「世界に通用するしなやかな人間力の涵養」、7つの教育(①キリスト教主義教育 ②自由主義教育 ③国際主義教育 ④中高大一貫教育 ⑤ICT教育 ⑥探究活動・学際的な学び ⑦キャリア教育)を栄養として与えることで、4つの力(①新たな価値を創造する力 ②幅広い知識を正しく運用する力 ③人に寄り添う力 ④果敢に挑戦しやり遂げる力)を育み、最終的に「他者の多様性を尊重し人とのつながりを大切にできる人」「自由な考えのもと主体的に行動し自分らしさを発揮できる人」を輩出していくことを表した。

①~③は同志社創立当初から不変の理念、④~⑦は同校が独自に追加した新たな教育活動という構成となっている。

「文化・政治・経済など人間の諸活動、コミュニケーションがグローバル化した社会では、自分の価値観を大切にしつつも周囲の変化に柔軟に対応することが求められます。これからの時代を生きるために必要なそれらの力を、時間をかけて丁寧に養い、育てていきます」

同志社教育の三本柱で身につく
多様性尊重、自立と自律、グローバル視野

「キリスト教主義教育」では、礼拝の時間や聖書の授業、ボランティア活動などを通じ、多様性を尊重する心を育み、「自由主義教育」では、自治会活動や課外活動を通じ、自立と自律の精神を育む。

グローバル視野を養う「国際主義教育」では、コロナ禍で実施を見送っていた海外研修が再開した。中学ではホームステイ体験プログラム、高校では年間留学制度など多彩なメニューを用意。校内でもネイティブ教員による授業や、英語のスピーチコンテストなどを実施している。

昨年度から、インターネットを介して、フィリピン・セブ島のインストラクターとマンツーマンで英会話ができる「Weblioオンライン英会話」も導入。生徒からは「どの先生も自分を下の名前で呼んでくれて、とても親しみがもてる」「とにかく褒めてくれるから自己肯定感が上がる」などと好評だ。教員側からも「生徒の聞き取り能力が飛躍的に上がっている」「自分の英語が通じた経験が自信につながり、恐れずに話せる生徒が増えた」といった声が聞かれ、「英検で2次試験に進んだ生徒の9割以上が合格した」と効果が表れている。

大学のリソースも活用しながら
社会につながるキャリア教育を実践

「中高大一貫教育」として、探求授業で教員や施設といった大学のリソースを活用できるほか、大学の単位を先取りで取得できる制度(準備中)は、系列校ならでは。

1人1台の端末機器を整備する「ICT教育」では、校内施設「繋真館」も活用して、情報編集能力・情報活用能力を養っていく。

中高6年間を通じた「探究活動・学際的な学び」について、中学新カリキュラムでは『総合的な学習の時間』を充実させた。中1で課題発見、中2で情報収集力・整理能力向上と表現指導、中3でキャリア教育――と段階を踏んで高校に接続。高校新カリキュラムでは、1・2年で論文を書くための基礎を指導し、3年では自分でテーマを決め、教員のサポートのもと1年をかけて研究し、最終的に論文にまとめる。

「高3は通常、受験モードとなるところ、当校では逆に、『総合的な探究の時間』を3単位と充実させ、ひとつの専門領域を究める人物の育成に努めています」

「キャリア教育」もユニークで、中学では、旅行社が審査員を務める校内コンテストで生徒が自身で企画した海外旅行を発表。また、株を売買するための企業研究レポートを全国コンテストに応募するなど、実社会とのつながりを強く意識づける取り組みを行なっている。高校では、裁判所の見学や外資系企業でのインターンシップ体験などを通じ、より具体的に社会の現状を知る機会を設けている。

自然豊かな「繋真館」は
課題解決型学習の拠点

理想の人間形成において重要な役割を果たすのが、2021年4月に竣工した「繋真館」。“関西最高水準の設備”を自負する同校自慢の設備のひとつだ。デザイン性とコンセプトが評価され、2023年度の日本建築学会作品選奨を受賞した。

ワンフロアに、蔵書約6万冊の図書館と、ICTが使える授業スペースや自習室などを融合。学習、研究、発表、交流、鑑賞、制作など多様なニーズに応えながら、課題解決型学習の拠点として生徒の主体的な学習を支援する。

「情報があふれる時代では、真偽を見分ける能力がより重要となります。多くの先人たちの知識が詰まった本を読むことで、本質への理解が深まることでしょう」

70年以上、生徒を見守ってきた樹木を取り囲むガラス張りの設計で、イメージは“香里の森”。大きな曲面ガラスは静音効果もあり、やわらかな自然光と木々の緑を感じながら、学習に集中できる。

屋上広場は礼拝堂や各校舎を接続する中心地。文字通り、さまざまな人とモノを“繋”いでいる。


過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/west/2022_7kori-doushisha/
同志社香里中学校・高等学校 https://www.kori.doshisha.ac.jp/