マナビネットオープンスクール2023 ●掲載:塾ジャーナル2023年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

規律と人間性を育む日常を積み重ね
最難関大学への屈指の進学率を実現

洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校

洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校は、世界遺産の名刹・東寺(教王護国寺)の境内に建つ。学園のルーツは、およそ1200年前、真言宗の開祖・弘法大師が、身分を問わず学べる場所として創立した「綜藝種智院」だ。仏教が身近にある恵まれた環境で、生徒は学習・クラブ活動・学校行事に打ち込み、それぞれの能力を磨いている。京大、東大をはじめとする難関大学への合格実績は高く、全国大会常連の名門クラブ活動も数多い。昨年、前身の「東寺高等学校」から現在の名称に改称して60年を迎え、各分野でめざましい実績を上げ続ける教育について聞いた。


日々の挨拶・清掃・祈りを尊び
規律と教養を育む学校生活をめざす

洛南学園の学校案内の巻頭ページは、華々しい進学実績やクラブの活躍ではなく、合掌する生徒の写真、続いて学び舎の清掃にいそしむ生徒の写真を掲載している。

その理由を北川辰雄校長は、「進学実績は目標のひとつですし、スポーツ界でのOBの活躍は在校生にも希望を与えてくれています。そうした実績は仏教の教えを日々に生かし、規律ある学校生活を送ることで花開くことです。ですから、私たちは毎日の挨拶や清掃を最も大切にしています」と話す。

一日は、校内に入る前に一礼する「校門一礼」から始まり、放課後は校舎を清掃する。また、毎月21日の「御影供(みえいく)」は、学祖・空海弘法大師の月命日の法要を営む特別な一日。この日は学校長の講話を聞き、各自が気持ちを作文に整理して、自己の根源に思いを致す。こうした規則正しく、仏教が身近にある環境の中で、生徒は心と身体を強くし、勉強やクラブ活動の結果を出すことで名門・洛南の歴史を築いてきた。

各界で活躍する卒業生には、ベストセラー『嫌われる勇気』の著者で哲学者の岸見一郎氏や、アテネ五輪体操金メダリストの冨田洋之氏、NHK交響楽団首席トランペット奏者の菊本和昭氏、リオ五輪リレー銀メダリストの桐生祥秀氏、俳優の佐々木蔵之介氏などがおり、多彩な才能を輩出している。

高校は2コース。難関大志向の「空」と
クラブ活動と学習の両立めざす「海」

高校は2コース制で、弘法大師の生前の名・空海にちなんで「空パラダイム」と「海パラダイム」と名付けられている。「空パラダイム」は、洛南高等学校附属中学校からの内部進学組を中心に、高校入学組も1クラス加わり、最難関国公立大学・学部をねらう精鋭コースだ。1年時で学習の基礎を固め、2年時からは大学入試に向けた応用力を完成する。2023年度入試では、東京大学に12名、京都大学に62名、大阪大学に25名が現役合格した。

また「海パラダイム」には、高校入学生を中心に難関大学をめざす「αプログラム」と、クラブ活動を奨励する「βプログラム」がある。「βプログラム」では推薦・総合型選抜(旧AO入試)による進学指導もバックアップしており、在籍する生徒の多くは、クラブ活動で全国区の活躍をしながら国公立大や難関私大に進学している。

このように多様なコース設定で、一人ひとりの適性を尊重し、それぞれの進路実現を応援する。また、異なるコースに在籍する生徒同士は、互いの得意分野をリスペクトし、刺激を受け合っている。

放課後の自学自習を支援する
校内「寺子屋」システムが始動

従来の手厚い学習指導に加えて、昨年度から放課後の自習を支援する「T. eRa. K. oya」(寺子屋)を始動した。そのいきさつを田邊範晃先生は「自学自習できる生徒は入試でも結果を出しています。しかし職員は放課後も会議や業務があり、つきっきりで指導できないため民間の学習指導サービスを導入することにしました」と説明してくれた。

「T. eRa. K. oya」では放課後の教室を利用して、大学生のコーチが生徒を見守り、学習を指導する。大学生コーチは、打ち解けやすいように洛南OBを派遣してもらい、キャンパスライフの情報を得る機会にもしてほしいと期待している。

「T. eRa. K. oyaは受験対策でもありますが、生徒は大学生、社会人になったら自ら学び続けなければなりません。その姿勢や習慣を確立してもらうのもねらいです」と田邊先生。

多彩な学校行事は洛南の伝統
集うことの大切さを再確認

洛南学園は年間を通して、スポーツ系や文科系の学校行事を数多く開催し、クラスメイトや先輩・後輩が団結、協同する機会になっている。コロナ禍で中止した行事もあったが、時間帯やエリアを分割して密を避けるなどの対策を講じて安全に催行し、思い出深い学校生活になるように努めてきた。

一方で、コロナ禍を乗り越えるため、タブレット端末や学習ソフトウェアなどのICT教材導入は前進したという。こうしたツールを正しく利用するマナーや、ウェブ上にあふれる雑多な情報を精査するリテラシー能力の育成にも目を向けていく。

そして、ICT環境を活用したリモートでの授業や学校行事を経験したからこそ、対面し、集うことの大切さを再確認できたと北川校長は振り返る。
「学校は仲間と出会い、時には諍いも含めて、人間関係を築く場所です。ようやくコロナ禍の出口が見えてきましたから、本来の学校生活を取り戻していけたらと考えています」(北川校長)

洛南学園の校訓は、まず「自己を尊重せよ」と呼びかける。自己を磨き、高める機会は、日常のあらゆる行いの中にあるとするのが「雑事は仏事」という教えだ。これに基づき、生徒は日々の学習やクラブ活動、清掃活動に励む。

清々しく拭き清められた学び舎で、「自己を尊重せよ」に続く校訓「真理を探求せよ」、「社会に献身せよ」を実践できる人材が育っている。


過去の記事もご覧になれます
https://manavinet.com/west/2022_7rakunan/
洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校 https://www.rakunan-h.ed.jp/