マナビネットオープンスクール2023 ●掲載:塾ジャーナル2023年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

知的好奇心を育む体験学習「探究講座」で
日常の課題・疑問を学問の視点から探究する

東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部

1983年の創立以来、「真の文武両道」を目指す東海大学付属大阪仰星高等学校中等部。多様な社会を生き抜くために身につけたい10の力を「TG10Cs」として設定し、あらゆる活動を通して育んでいる。中等部では4年前から「総合的な学習の時間」に社会のSDGs課題と向き合う探究的な取り組みを実施。高校での「探究」授業に備え、夏休みの夏期特別講座期間中に探究講座を設定し、自ら考える基礎をつくり興味を発見する機会としている。その「探究講座」の様子を取材し、小寺建仁校長、中等部教務主任の山崎智代先生にお話を伺った。


「セルフィーは左右どちらから写す?」
普段意識しない行動にも、学問の種が

中等部では夏休みに入ると5日間の夏期特別講座がスタートする。「探究講座」では実験や制作、考察系など好奇心をくすぐるプログラムが用意され、生徒全員が興味ある講座を選択し、学年を超えて受講する。

講座開始を前に、高等学校探究科主任・米倉真一先生から受講に当たっての心構えや、「探究とは何か」についてのお話を聞く。壇上のスクリーンに映し出された2枚の女性の写真。「赤い服と青い服の女性、どっちが魅力的に見えますか」という問いに、多くの生徒が赤に手を挙げる。

「これは『ロマンチックレッド効果』と呼ばれるもので、心理学の研究成果として発表されているものです」という米倉先生のレクチャーに会場から驚きの声が上がる。「セルフィーを撮るときは左右どちらから写す?」という質問にも、生徒たちはザワザワする。「世界中で、左側の顔を見せやすいという分析結果が出ており、これは脳科学であること」が説明された。

続けて、理数教育研究所が開催した「算数・数学の自由研究」コンクールに入賞した、「メロスの全力を検証する」という中学2年生のレポートを例に出し、文学を数学の視点で分析。すると、メロスのラストスパートは時速5・7キロでほぼ早歩き程度のスピードだった。「実は走っていない」と結論づけたことに、会場は大いに沸いた。

こうした数々の実例を出しながら、「小さな疑問や興味、好奇心から『なぜ』を引き出すことで思いもよらない結果が出る。学問とは面白いもの」なのだと指摘。「どんなことにも前のめりの姿勢で、何に対しても好奇心をもつことが、自分の能力を最大限に伸ばすコツ。考える姿勢を大切にして愉しんで来てください」と言葉をかけ、生徒たちを送り出した。

教科を超えた渾身の 17講座が
生徒の興味を揺り起こす

用意されたのは17講座。「ハイジのブランコ」、「サバイバル術を身につけよう」など、考察系、実験・制作系やフィールドワークなど、教師陣が工夫したテーマが並ぶ。

「ハイジのブランコ」の教室では、アニメ「アルプスの少女ハイジ」のオープニングシーンが何度もリピートされ、ハイジが乗っているブランコの長さを、数学と物理を使って割り出していく。ストップウォッチでブランコが1往復する時間を測定し、2次関数に当てはめると、なんと約20メートルの長さが導き出され、歓声が上がる。「サバイバル術を身につけよう」の講座は男子に大人気。泥を混ぜた水を、身近なものを使ってろ過していく。「ゆっくり入れて」「結構きれいになった」など、自分なりの工夫をしながら水がろ過されていくことに熱中していた。

「食文化の変遷」の教室に入ると、エプロンに身を包んだ生徒たちが、栗と木の実を砕いて混ぜたクッキー生地と格闘中。ガス台の上では甘い匂いのシロップが煮詰められている。これはかき氷用の蜜で、「氷は平安時代には貴族しか口にできない貴重品。クッキーは木の実を拾えば作れた古代の庶民の食べ物」と担当教諭。最後に全員で試食し、生徒たちは満足げな笑顔を浮かべた。講座の終了後は教室に戻り、各自が「仰星手帳」に講座の内容や、「どういう力がついたか」についての振り返りを記入した。

中高6年を通しての探究サイクルで
幅広い視野と学び続ける姿勢を

今回の探究講座を企画した山崎先生にその狙いを伺うと、「高校の発展探究の授業では、各自設定したテーマをどういう切り口で発展させていくのかに生徒は困難を感じています。であれば、中等部の時点でまず、探究のモデルのようなものを見せられたらいいのかなと考えました。テーマを選び、学問的な知識を踏まえ、『こういう切り口で広げていくんだよ』というモデルを見せられれば、高校で発展探究を進めるとき、インスピレーションを感じてもらえるのではと思ったのです」と思いを語った。

また、「いろいろな経験をさせてあげることで、自分の興味を見つけることができればと思います。『知的好奇心をもつ』ということは、第一に生徒に望むところです。日常の疑問が学問につながることを知ってもらい、普段の勉強の中でも、『これはこれに役立つのではないか』という多様な視点をもってほしいですね」と続けた。

中等部ではSDGsの観点をもった探究的学習を「総合的な学習の時間」で行い、課題解決プログラムに取り組んでいる。1年生は淡路島フィールドワークとSDGsカードゲームで理解を深め、2年生では身近な問題として地元枚方市でのフィールドワークとポスター発表会を実施。3年生では2年時に発表した課題解決アイデアの実現に向けて行動する。9月にコンペを開き、地域の人たちにも聞いてもらい、選ばれた案を秋ごろから実践していく予定だ。

校長の小寺建仁先生は「中等部では4年前から『総合的な学習の時間』で探究活動を実施しています。現在、1サイクルが終わって、中等部としては3年間の流れができました。高校でも昨年度から探究の授業が始まったので、中・高がぶつ切りになるのではなく、6年の探究サイクルを学校として作り上げたいと思っています。

今では中等部から高校へ進んだ生徒が中心となって探究の授業を引っ張っていくようになり、取り組みの効果は出てきていると思います」と思いを語った。

「生徒にはいろいろな経験をして、さまざまな世界を知り、多種多様な人の考えを聞き、自分なりの考えをもてる力をつけて、社会に出て行ってほしいと思っています」


過去の記事もご覧になれます

中高一貫の探究活動で得る「追求する逞しさ」 自ら考え、正しい判断のもと、自ら行動できる人材を育成

東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部 https://www.tokai-gyosei.ed.jp/