マナビネットオープンスクール2024 ●掲載:塾ジャーナル2024年5月号/取材:塾ジャーナル編集部

100年たっても色あせることのない
「人をつくる」教育理念

四條畷学園中学校

JR四条畷駅を出ると校門は目の前。四條畷学園中学校はこれ以上ないアクセスの良さを誇る。この中学校を含め、保育園から大学までそろう学園はまもなく創立100年を迎えるが、創立者が掲げた教育理念「人をつくる」は、色あせるどころか現在の教育のトレンドを先読みしていたかのようだ。3年前に「発展探究クラス」「発展文理クラス」の2コースに再編。人生の基盤をつくる12歳から15歳までの3年間で、子どもたちが自分の将来を自分で決められる「種」をしっかり植えたいとする堀井清史校長に、さまざまな取り組みを伺った。


「実践躬行」で真の力を育む
あらゆる機会で探究教育

教育理念「人をつくる」には2つのテーマがある。ひとつは「実践躬行(きゅうこう)」。単に知識を得るだけではなく、得た知識を自分で実際に行うという意だ。

「繰り返し実践躬行することで人は成長し、これからの時代で活躍するために必要な真の力が身につきます。これこそが探究活動です。創立者・牧田宗太郎は100年も前の大正時代に教育に採り入れていました」

同校では日々の授業から行事まで、ことあるごとに生徒が実践躬行する機会を設けている。

3年時の修学旅行も観光ではなく、探究をテーマにした参加・体験型プログラムで、2023年度は東京方面に赴き、デザイン思考研修や企業訪問などを実施した。

1年生と2年生による合同宿泊研修もユニーク。縦割りのチーム編成とし、1人の生徒が進学に伴い、後輩の立場、先輩の立場の両方を経験でき、協力し合うことや責任感を醸成する。

また、発展探究クラス独自の探究授業「G-pro(Gakuen Projectの略)」では、「最強のお弁当」についてグループワークで考えをまとめ発表しあうといったことも行った。優秀なアイデアは文化祭で発表する栄誉が与えられたという。

さらに、大阪メトロの1日乗車券を利用して、子どもたちが自由に気になるスポットを調査する「地下鉄オリエンテーリング」(1年生)や、地域の企業約70社に協力してもらい社会人として必要なマナーやコミュニケーション能力を身につける「職場体験」(2年生)といった、地元に密着した探究メニューもカリキュラムに組まれている。

「変化が激しい社会で今求められているのは、自分の足で立ち、歩みを進められる人です。そんな人を育てるため、いろいろな場面で実践躬行をしてもらいたいと考えています。失敗しながらも自己肯定感を高められれば、自ら進むべき方向を選択してチャレンジできる強い人になれます」

これらの取り組みはマイナーチェンジを加えながら、毎年進化。生徒ファーストの視点を第一に、教員陣もまた実践躬行の日々を過ごしている。

四半世紀の歴史を有する
海外研修プログラム

「人をつくる」もうひとつのテーマは「Manners makes man」。これはイギリス最古の歴史をもつ「ウィンチェスタースクール」の校訓だ。創立者が海外視察旅行で同校を訪問時、その紳士的な態度に感銘。「自立した生徒を育てるためには、単に勉強をするだけではなく、身なりや礼儀正しさも身につけなければならない」と強く思い、持ち帰った。本館壁面のタイルにこの言葉が刻まれている。

その視察ではまた、当時の日本ではまだ採り入れられていなかった、個性を尊び自立心を養う新しい教育に触れ、国際理解教育の重要性も実感したという。思いは引き継がれ、現在では姉妹校との相互交流や少人数制の英語授業「RC(Reading & Communicationの略)」などで具現化されている。

とくに海外研修は1996年から実施しており、四半世紀の歴史をもつ。提携するのはニュージーランドの「マスタートン・インターミディエイトスクール」。夏休みを利用し約2週間滞在するプログラムで、毎年20~30人程度参加している。

2002年からは、マスタートン校からの留学生受け入れも始まり、完全な相互交流となった。両校の教師が協力して研修プログラムを考案し、ホストファミリーはすべて両校の生徒の家族に限るなど、学校間の真の交流を大切にしている。

「第1回の参加者が今40歳ぐらいになっているのですが、なかには現在も本人同士や親同士の交流が続いているところもあるようで、本当の意味で垣根を越えた出会いとなっているのが本校の特長です」

コロナ禍での2年の中止を挟み、昨年は現地訪問が25回目、今年は姉妹校訪日が20回目の節目で、盛大なセレモニーを企画したいとしている。

中学3年間で「種」を植え付け
進路を自ら選ぶ力をつける

総合学園ながら同校は中高一貫を謳わず、中学でひとつの区切りとしている。その理由を堀井校長はこう説明する。

「中学受験をされる年齢ではまだ主体が育まれておらず、保護者の意向が反映されるところが大きいと思います。つまり、自分の意思に関係なく高校や大学までの進路が決まってしまうということもあり得ます。小学生から高校生にあがるこの3年間は、自己を確立する大切な時です。描いた夢につながる進路を自分で選択できる力をつけてもらうためにも、『種』をたくさん植えつけることが使命だと感じています」

そう考え、再構築したものが3年前にスタートした新コースだ。今春、1期生が巣立っていった。「これまで以上に生徒が快活になった」「自信をもって自分の意見を言うようになった」「偏差値で進学先を選ぶのではなく、自分の夢をかなえる環境がある学校を選ぶようになった」など、さまざまな変化が生まれているという。

「われわれが撒いた『種』が生徒自身の力で芽を出し、大輪の花をつけ、やがて母校を照らしてくれるでしょう」

2年後には大きな節目となる創立100周年を迎える四條畷学園。ちょうど同じ頃には、大東市が整備する四条畷駅と学校を直結するデッキが完成予定で、さらに便利になる。


四條畷学園中学校 https://jh.shijonawate-gakuen.ac.jp/