リベラルアーツの伝統を基盤に
未来を創造するイノベーターを育成
同志社中学校
創立者・新島襄の「自由・自治・自立」の精神を受け継ぐ同志社中学校は、創立149年を迎えた。伝統と進取の気風に富む同校は、すべての生徒たちの知的好奇心・探究心を育むことを目的として、校舎に近畿で唯一の「教科センター方式」を採用。これと融合する形で先進的なICT教育やアクティブラーニングを展開。グローバル化が加速し、大きく変化する社会を見据え、伝統のリベラルアーツ教育の上に、新時代を切り開く学びを創出している。
未来への学力を育む
世界標準の教育環境
キャンパスは交通の便がよく、京都駅から地下鉄で20分の「国際会館」駅前に校門がある。京阪神はもちろん、名古屋や姫路方面などから新幹線を利用して通学する生徒は50名近くいる。10万㎡の広大なキャンパスには、まるで海外の大学のような赤レンガ造りの校舎が並ぶ。その中心にはグレイスチャペルがあり、日々の礼拝を通して、生徒たちは静かに自己と向き合う。人格の成長を促し、これからの人生の指針を得る大切な時間となっている。
校舎は、欧米の学校では一般的な「教科センター方式」を採用しており、理科や技術だけでなく、すべての教科に専門教室を設けていることが最大の特徴だ。さらに教科ごとに「メディアスペース」を配置し、教科に関連する資料や生徒の作品を多数展示している。理科の標本館では、カバやワニなど約8000点の標本・剥製を所蔵し、100年以上の理科教育の伝統を感じながら学べる。「数学博物館」には、定理パズルや数学アートなど、さまざまな数学を体感できる工夫が施されている。まさに、「学校に入ると、その空間にいるだけで学びたくなる」環境が整っている。
近年さらに力を入れているのが、「同中 学びプロジェクト」である。これには、大学の研究室や企業への訪問、プログラミングやアントレプレナーシップをはじめさまざまな講座、ワークショップ、実験・工作、フィールドワークなど、バラエティーに富んだ内容が用意され、対面・校外・オンラインとさまざまな形態で実施して、その数は年間300を超えている。
例えば、京大iPS細胞研究所ではDNAを抽出する実験に取り組んだり、東大スーパーカミオカンデ見学ツアーでは、ニュートリノとその検出の仕組みを学んだり、東大理学部では、宇宙研究の基礎の特別講義を受けたりする。
学校の教室での学びを超えたこれらの体験は、生徒の知的好奇心と探究心を刺激し、自分の無限の可能性に気づく機会でもある。また新たに、「国内探究の旅」として日本各地の地域に飛び込むスタディツアーもスタート。北海道・十勝へのプログラムでは、酪農体験や帯広畜産大学への訪問などを通じて「食」や「生きる」を考えた。
校内のICT環境は全国でも最先端を行くもので、視察が絶えない。生徒は、日常の学習課題の保存がされている本校オリジナルの「DJHSポータル」を中心に、導入10年を超えたiPad一人一台環境を活用して、学びの世界を広げている。
例えば英語の授業では、自分でテキストや写真・動画を作成し、編集しながら英語でプレゼンテーションをしたり、オンラインで海外のネイティブ講師とのスピーキングを行っている。また各自テーマに沿ってフリーライティング(自由英作文)を行うなど、英語の4技能を総合的に育む工夫を取り入れている。こうした先進の教育環境の整備や新しい教材の構築は、学習内容に応じ対面とリモートをハイブリットさることで、より豊かな授業を実現させている。
「デザイン思考」の実践と
多彩な「国際交流プログラム」
グローバル化の進展や人工知能(AI)の発達により社会の枠組みが大きく変化し、予測不可能な時代を迎えている。「これからの社会に真に必要な学力とは何か」という問いから、教員も新たな取り組みに挑戦しており、昨今課題となっているプログラミング教育を含め、STEAM教育の分野においても、先進的な取り組みが進められ注目を浴びている。
「STEAM(ステイーム)教育」とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Arts)、数学(Mathematics)の頭文字をとったもので、各教科で学んだことを土台に、モノづくりや問題解決の道筋を探るものだ。単にモノをつくるのではなく、どのようにしたら世の中に貢献できるかを「観察」し「洞察」し、より深いレベルで人や社会に「共感」することでアイデアが生まれる。
この「デザイン思考」の能力はまさにIT技術、AIの発達に伴う、第4次産業革命の真っ只中にいる私たちに必要な力である。技術科教員によるこの実践は、1年間「毎日小学生新聞」に掲載され注目を浴びた。
例年夏には、ArTeC、香港の教材会社の協力も得て、本校やArTeC本社を会場にASIA STEAM CAMPを開催している。毎年実施している韓国・台湾との交換研修では、教員・生徒が互いに訪問し合い、一緒にモノづくりに取り組む。文化も母語も異なる人たちと英語を用いて協業する、まさにグローバル社会で求められている能力を伸ばす絶好の機会だ。
「教育に国境はありません。生徒たちがグローバルな環境でアイデアを出し合い、協力してひとつの課題解決に挑む。アジアの国々との協力プログラムでは、英語も用いながら、相手に自分の考えを伝える体験ができる。それが未来に生きる力になるのです」と竹山副校長は語る。
国内外に年間約20本ある「国際交流プログラム」は、カナダやアメリカなどへのターム留学、アメリカや韓国・台湾との短期交換留学、さらには、ハーバード大学やMITでの特別講義の受講ができるものもある。また、国内でもハーバード大学生とのイングリッシュキャンプ、国際教養大学への研修、英語エクステンション講座など多彩に用意されている。
レジリエンスとソーシャルスキル
を育むプロジェクト型学習「演劇」
同志社中学校では、リベラルアーツ教育の理念を生かし、特定の分野に限って学ぶのではなく、さまざまな分野に関心を広げて学ぶことで、成功体験を増やし、チャレンジ精神を育成している。竹山副校長は、「新しい時代をリードしていくには、レジリエンス(逆境力)とソーシャルスキルが必要」と強調する。イノベーションは、異分野・異文化の多様な人たちとの問題意識やアイデアの論戦から生まれるからだ。
キリスト教主義を徳育の基盤とする同志社中学校で、生徒たちは日々の礼拝や学校行事を通じて互いの違いを認めた上で他者を思いやり、協働する共生力を身につけていく。その最たるものが学園祭の「演劇」である。興味や関心が共通する生徒が集まるクラブ活動と異なり、中2から高3までの全クラスが、それぞれの舞台を造り上げる。考え方や目指すものの違いを超えて、協力しなければならない。まさにプロジェクト型学習そのものである。
仲間との話し合い、試作、そして挫折、解決への努力を通じての克己心やリーダーシップの萌芽など、組織で活動する資質が自然と育まれていく。卒業生は異口同音に、この経験がさまざまなソーシャルスキルの原点になったと語る。
生徒会やクラブ活動は、中高で分かれて活動しているため、中学3年生で一度、最上級生になり、さまざまな場面でリーダーとしての役割を果たさなければならない。一人ひとりのリーダーシップの育成が一層求められる時代に、より早い段階で主体性が育つ環境がここにはある。自らの資質を高めるという点で、他校に比べて人間的成長が早いと言える。
生徒の約9割が推薦で同志社大学に内部進学するが、京大などの国公立や医歯薬・農学・芸術系の大学など他大学への進学も多岐にわたる。大学入試改革がさまざまなかたちで進められる現在、2030年から2050年代に社会人として活躍する生徒たちにとって、将来幅広い選択肢が可能であることが学校選びの重要なポイントになるだろう。
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