マナビネットオープンスクール2024 ●掲載:塾ジャーナル2024年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

廣学館でしか味わえないユニークな探究学習で
国家・社会に貢献できる人間を育成

京都廣学館高等学校

建学の精神「人間の能力は生まれつきのものではなく その人の努力によって開発され、無限に伸ばされる」を具現化するため、教育の柱として少林寺拳法と座禅を正課に採り入れ、体と心の両面から人間育成に励んでいる京都廣学館高等学校。ボクシングの金メダリストで元WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太の母校としても知られる。新学習指導要領に沿った探究学習もユニークで、今年度から3年生で新たに始めた取り組みを中心に取材した。


1年生で自分の世界を広げ
2年生は意見のアウトプットを実践

「本校では、『平和で民主的な国家及び社会に貢献できる人間を育成すること』を教育の目的に掲げています。この壮大な最終目標から遡って、1年生、2年生、3年生と段階を踏んだプログラムとしています」(里之内希教頭)。1年生は探究学習の基礎づくり。調べ学習やインタビューなどを通じ、まず自分のことを知る、クラスメイトなど周りのことを知る、地元の町を知る、日本を知る、世界を知る……といった具合に同心円状に自分の世界を広げ、学年末にはポスターセッションのような形で締めくくる。

2年生は“視野を広げる”がテーマで、EdTechツール「Inspire High(インスパイア・ハイ)」を用いている。

「Inspire High」は、普段出会えない世界中で活躍する著名人がガイドとなり、多様な⽣き⽅や価値観、仕事、社会課題に触れる体験を教室に届けるオンラインプログラム。“世界中の10代をインスパイアする”をミッションとしており、「建築家・隈研吾と考える『居場所ってなんだろう?』」、「マサイ族長老と考える『アイデンティティってなんだろう?』」など約40セッションから選択できる。ガイドが外国人の場合は日本語字幕がつく。分野が偏らないように選び、昨年度は1年間で15セッションを利用したという。

毎授業、ガイドの話をヒントに生徒が自分の考えをアウトプットし、生徒同士で意見や感想をシェアする時間を設けている。コメントが記録されるようになっており、「同じセッションを見た他校の生徒さんから『いいね』をもらって喜んでいる生徒もいました」(里之内教頭)

3年生は大学さながらのゼミを展開
創立 40周年「京都廣学館祭」で成果を発表

3年生では今年度から、教員が自分の得意分野のゼミを開くという新しい取り組みを行っている。公募式とし、「経済学探究」の瀧野博史校長を筆頭に18名の教員が手を挙げた。それぞれの内容をまとめた冊子を作り、説明会も実施。生徒は第3希望まで出せ、3名以上集まった16のゼミが4月から始動している。「われわれ教職員もこの探究活動の授業を通じて生徒と一緒に成長していきたいと思っています」と里之内教頭は笑顔で語る。

もっとも人気が高かったのが「野外教育探究」。グループで協力し合ってキャンプを実践するなど、自然体験活動を通して組織的な成長をめざすもので、25名が集まった。「映画研究講座」、「旅を通じて学ぼう」がそれに続く。ほかにも「コーチング講座」や「法律講座」、「お笑い探究」、「仏教講座」などがあり、幅広い分野で展開している。「廣学館にしかできない探究活動にしたかった」と里之内教頭。

教員は得意分野の話ができるため授業がより生き生きしたものとなり、生徒も自分が興味のある分野を深掘りできるとあって、前のめりになって聞いているという。まだ始まってまもないが、それぞれ大学さながらのゼミの様相を呈している。

「点数にしばられない、本来の学ぶ楽しさに気づくきっかけになってくれればと思います。最終目標である『平和で民主的な国家及び社会に貢献できる人間』には、どの分野からでも絶対にたどり着くのですから」

今年度は同校創立40周年。これを記念し、9月に体育祭と文化祭を合体した「京都廣学館祭」を盛大に行う計画だ。その華々しい場で、ゼミ1期生が成果を発表する。


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