マナビネットオープンスクール2024 ●掲載:塾ジャーナル2024年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

進学実績・クラブ活動ともに強豪の名門校
その伝統を支えるのは規律ある学校生活

洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校

洛南高等学校・洛南高等学校附属中学校のルーツは、およそ1200年前、真言宗の開祖・弘法大師空海が創始した学びの場「綜藝種智院」だ。校舎は世界遺産・東寺(教王護国寺)の境内にあり、校訓は仏教の「三帰依(仏法僧)」を現代の言葉に置き換えた「自己を尊重せよ」「真理を探求せよ」「社会に献身せよ」。この豊かな学園風土と高い進学実績で知られ、昨年度は、洛南高等学校附属小学校1期生が初めて大学受験に挑み、好結果を出している。各界に優れた人材を輩出し続ける洛南学園の学校生活や進学指導について聞いた。


学習・清掃・学校行事に励み
生活のすべてを自己研鑽の機会に

洛南学園のキャンパスは掃き清められた東寺の境内の中。その学び舎もまた、塵ひとつなく清々しい。これは毎日の清掃活動で生徒たちが磨き上げているからだ。

京大、東大を筆頭に難関大学に多くの合格者を出す進学校として知られるが、最も大切にしているのは規律ある学校生活を送ること。登校時の「校門一礼」で1日を始め、放課後は清掃にいそしむ。この日課は、日常の行いはすべて仏教の修行であり、自己を磨く機会になるとする「雑事は仏事」という考えに根ざしている。

そして毎月21日は、学祖・空海弘法大師の月命日の法要行事、「御影供(みえいく)」を営む。この日は授業もクラブ活動もなく、全校生徒が学校長の講話を聞き、考えを作文にしたためる。慌ただしい毎日をリセットして、心静かに自分を振り返る大切な1日だ。

年間を通して多くの学校行事があるのも同学園の特色で、バレーボール大会、水泳大会、サッカー大会、歌かるた大会などを開催している。これらの行事では、全国大会常連のスポーツ系クラブの選手や競技かるた部員がクラスをリードして団結する。また、体育祭は学年縦割りのチーム編成で競うため、先輩・後輩の絆が深まる機会になっている。

このように洛南学園の学校生活は多彩でエキサイティング、決して進学一本やりではない。仏教が身近にある環境で、その教えを日々実践しながら、学習や課外活動に打ち込み、進学やクラブ活動での実績を積み上げている。

昨年度、附属小学校1期生が卒業
一貫教育の成果が表れた進学実績

高校のコース編成は、弘法大師の生前の名・空海にちなみ、「空パラダイム」と「海パラダイム」に分かれている。「空パラダイム」は、高校履修内容を早期に完成し、最難関国公立大学・学部を目指す精鋭コース。「海パラダイム」には、主に高校入学の生徒が難関大学にチャレンジする「αプログラム」と、課外活動に打ち込みながら有力私大などへの進学を実現する「βプログラム」があり、いずれも進路実現率は高い。

昨年度の空パラダイムでは、2014年に開校した洛南高等学校附属小学校から内部進学した生徒が初めて大学受験に挑んだ。国公立大学の現役合格者は京都大72名、東京大9名、大阪大16名、神戸大18名を含む211名と、好成績だった。

小中高一貫教育の成果が問われる学年をどう指導したのか。昨年度の高校3年生担任の杉山浩之先生に聞くと、この学年から空パラダイムの中に新たな「総合探求」クラスが設けられたという。

「附属小学校から内部進学した生徒は中学・高校入試の経験がなく、充実した学校生活を過ごせた一方で学力の開きがみられる者もいました。そこで学力の実態に合う授業でフォローし、希望の進路を実現してもらう狙いで、総合探求クラスが新設されました」(杉山先生)

総合探求クラスでは、学力の引き上げに加えて、探究型学習やキャリア教育を通して興味や関心を追求し、マッチングする大学や学部を見つけるための指導に力を入れた。その結果、探求クラスからも京大や医学部に合格者を出している。また、学校推薦型選抜や総合型選抜(旧AO入試)での進路を実現した生徒もおり、空パラダイムの進学が多様化した。

昨年度の卒業生で思い出深いのは、「学校を好きな生徒が多かったことです」と杉山先生は振り返る。例年、高校3年生は受験シーズンの2月から自宅学習期間だが、昨年度の生徒はよく特別授業に登校し、先生方に過去問対策の指導を受けていたという。さらに、併願校として海外の大学を選択し、延べ20名以上の生徒が合格したことも新しい流れだった。

堅調な進学実績を喜ぶ一方で、進学指導の指針は「それぞれの生徒が希望進路を叶えることです」と杉山先生。後悔のない受験をして、その後のキャリアにつなげてほしいと願っている。

コロナ禍が去り、取り戻した学校生活
空白を乗り越え、伝統の体育祭が復活

全国の教育現場に影響を与えたコロナ禍が一段落して、洛南学園の学校運営にも日常が戻ってきている。特に9月の体育祭における華麗な応援合戦は、在校生だけでなく、入学希望者や地域の人たちにも楽しまれてきた目玉で、昨年度の完全復活は歓迎された。

ただし問題は、応援合戦を主導する昨年度の高校3年生が高校入学以来、一度も体育祭を経験していなかったこと。それでも過去の映像や資料をもとに、大型の背景画を作成し、パフォーマンスを創作し、上級生のリーダーシップを発揮して大いに盛り上げた。

こうした成功体験を原動力にして、体育祭ののち本格化する受験に全力で挑んだ生徒たちは頼もしい。「生活即学習、学習即生活」を旨として、清掃や課外活動、学校行事など、何事にも学びを見出し、成長の糧にする洛南学園の伝統は健在だ。


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