マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年9月号/取材:塾ジャーナル編集部

7年一貫教員育成プログラムスタート!
受験者数・専願者数増の嬉しい幕開け

東大谷高等学校

教員養成プログラムではコーチング・マネジメントなど、必要なスキルを7年間で取得


今年度より本格的にスタートした7年一貫の教員育成プログラムが注目される東大谷高等学校。大阪大谷大学との高大連携を生かしたプログラムだが、その話題性と学校あげてのPR活動が実り、今年は入学者数を大幅に増加させた。特進コースからは初めて医科大学へ進学する生徒も登場。生徒自身が自分の未来像を描きあげ、自ら歩むのをサポートする「10年未来プロジェクト」など、生徒の自立自習を促し、心の成長を大切にする教育が花開いている。今年の生徒募集状況について、長尾文孝校長に聞いた。


先生方が生徒募集で一致団結
努力が実った入試実績

「人間教育をする進学校」として、110余年もの歴史を誇る東大谷高校。2013年に緑豊かな住宅街・泉ヶ丘の新校舎で男女共学校としての新スタートを切り、多くの生徒たちを育んできた。

昨年のコロナ禍では、新校舎建設時に整えたICT環境でいち早く対応し保護者の高い評価を得た。先生方の柔軟性と一致団結した努力が実を結んだ結果だった。

そんな先生方の団結が、コロナ対応に引き続き、生徒募集に向かった。例年行われている夏休みのオープンキャンパスと、10月~12月の学校説明会。毎回500名~600名が訪れるこのイベントが例年通りに開催できない。

その対応として、オープンキャンパスは9月にずらし、ソーシャルディスタンスに留意しながら70組140名限定で何回も行われた。学校説明会も同じように、週末を使って午前午後、何度も行い、例年以上の参加者を目指した。

「受験生の皆さんに、とにかく本校を知っていただく機会をつくろうと、細かく多くの見学会を行いました。例年のようにクラブ活動や授業を体験していただくことはできなかったのですが、学校のあらゆるところに先生方を配置し、生徒さんと保護者の方々に『とにかく気になる事はなんでも聞いて下さい!』とお伝えしました。300名入学を目指し、全職員がその意識で本当にしっかりと対応してきました」(長尾校長)

その成果もあり、850名の受験者と313名の入学生という結果に。しかも、共学になって以来初めて男女比が逆転、男子生徒が多くなった。「予想外に伸びて良かった」と長尾校長は嬉しそうだ。


国際コースは、英語でのコミュニケーション能力を高め国際社会で活躍できることをめざすコースです。プレゼンテーションをはじめ、ディベートやディスカッションを英語で行うなど、普段の授業から語学力を身につけることを重視しています。 また、英語を通じて異文化理解を深め、国際的な視野を備えた真の国際人を育てます。

受験者数の底上げになった
7年一貫教員育成プログラム

この入試の成功には、本年度から正式に始まった東大谷ならではの7年一貫教員育成プログラムも一役買っている。2018年に第一弾として9年一貫薬剤師育成プログラムがスタートしているが、今回は教員育成に特化したもの。

「学習に対する意欲が高い子どもたちが、『この育成プログラムに行きたい!』と進学コースを希望するようになってきています。進学コースの底上げになっていますし、専願の生徒も増えています。薬剤師育成プログラムについては、実に8割が専願です」(長尾校長)

この教員育成プログラムでは一学期に2回、大阪大谷大学の教授の講義が盛り込まれ、夏には人権意識を高めるためのセミナーも開催。教員採用試験に必要な教養を身につけるとともに、人としての心をしっかり育て、子どもたちの心に寄り添う教員となるためのスキルを身につけていく。

先に行われた講義では、生徒たちがとても積極的で頼もしい、と大学教授からの言葉を頂いたという。授業では生徒一人ひとりが自分の意見を発表し、皆で評価し合う。自主性・積極性をどんどん育てていく。

「堺市や富田林市では大阪大谷大学の教育学部を卒業して先生になっている人が多いんですが、結構評判が良いと聞いています。このプログラムで大学に進み、今度は自分の地元の中学校や小学校で働くような、そんな流れができたらいいと思っています」(長尾校長)

心育む教師になることはもちろん、周りの人々に喜ばれるような人になるための教育が一番重要だと長尾校長は語る。


(左)探究ゼミナールではチームで話し合いながら、相手に伝わる表現を学んでゆく
(右)薬学師養成プログラムの授業。「毒と薬について」の講義を真剣に受ける生徒たち

10年未来プロジェクトで自立自習
人間性の教育を重要視した取組み

特進コースからは、今年初めて医科大学医学科に合格した生徒が出た。それに対し「本人が決めて、頑張ったから」と長尾校長はあっさり。

「医学部を勧めたわけではないんです。特進コースでも自分の将来の目標を立てて、大学を選ばせています。成績で大学を決めることはないですし、やはり未来を見据えて自分で選んだからこそ頑張れたのではと思います。もちろん担任の先生のサポートも大きかったと思いますが」(長尾校長)

東大谷には、「10年未来プロジェクト」という取り組みがある。さまざまな職業に就いた卒業生を招いての講演を行い、生徒たちが自分の未来を考える機会をつくる。各生徒が目標設定をした後、自分に足りないものをどのように学んでいくかを自己探究してもらうというものだ。

「このプロジェクトで、将来のことをきちんと考える生徒は少しずつ増えてきてると感じます。これまでは生徒さんも保護者の方も地元志向が多かったのですが、昨年から近畿を出る生徒たちが増えてきた。自分のやりたいことがある大学を見つけ、自分で遠くをめざしたのだと思います」(長尾校長)

自分で考え、自分で決め、行動する。人を育てる取り組みは、他にもある。「探究ゼミナール」では、テーマを決めて調査・研究し、説得力のある主張ができるように学ぶ。相手にわかりやすく伝える方法という点では、コミュニケーション能力を高める時間と言える。

また、創立以来続く朝夕の瞑想では、バッハの「G線上のアリア」を流す間、生徒も教師も皆静かに目を閉じ、自分を振り返る。

「その中で、人とのつながりを感じたり感謝の気持ちが湧き出たり、そんな時間になっているのではと思っています」(長尾校長)

親鸞聖人の教えを基に、「報恩感謝」の心を育てるのが東大谷の建学の精神。記者が学校の裏門の道を通った時、下校する生徒たちが皆、学校に向かって一礼する姿を見た。東大谷式情操教育は、確実に生徒たちにしみ込んでいる。


(左)最新の設備、先進のキャンパスで過ごす3 年間。
グラウンドを囲む教室棟・食堂棟・体育館棟からなるキャンパスは、CASBEE(総合環境配慮制度)において最高ランクのS ランクを取得しています。
(右)長尾 文孝 校長

「一番大切なのは、心を育てること」。長尾校長の言葉に、人間性を大切にする教育がこれからも人に好かれ、喜ばれる人材を生み出していくと強く感じた。

東大谷高等学校  https://higashiohtani.ac.jp/rs/izumigaoka/