マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

創立100周年に向けて、大きく動き出した伝統校
「山手ルネサンス」を掲げ
「未来型リーダーシップを持つ女性」を育成

神戸山手女子中学校高等学校

中学では週1時間の「未来探究」の授業を設けグループディスカッションを行う


神戸市からほど近い中央区にある同校は、1924年5月に創立された「山手学習院」にはじまり、今年で97年目を迎える中高一貫校。「自学自習」「情操陶冶」の建学の精神は、現在も「人間性をはぐくむ女子教育として受け継がれている。2020年には学校法人濱名学院と法人合併し、現在、保育園、幼稚園、中学、高校、専門学校、大学、大学院を擁する総合学園となった。そして、本年4月には、学校改革で数々の実績を残してきた平井正朗氏を校長に迎え、さらなる改革へ大きく動き出した。生まれ変わる神戸山手女子中学校高等学校について、平井新校長に取材した。


学びの選択+個別最適学習=
進路満足度100%

校名の通り、神戸市の山手に位置する神戸山手女子中学校高等学校。JR元町駅から坂道を登っていくこと十数分、美しい景観の中に建つ白とクリーム色の優美な校舎が見えてくる。

校長室に向かうと、平井校長が快活な笑みを浮かべ出迎えてくれた。ドラスティックな学校改革で大学合格実績を大きく伸ばし、中高入試も志願者・入学者ともに大幅増を実現させる手腕は名実共に有名。今回も4月に着任するや即日、校長ブログを開設、以来、ほぼ毎日更新している。そのスピード感ある仕事ぶりとイズムは早くも校内に浸透しており、学校が活気づいている。

ポイントは「意識改革と伸びの実感」と平井校長。「本校の特色である面倒見の良さをチーム学校として集結し、カリキュラム・マネジメントを通じて、明るく楽しい女子校を再生します。そして、学びの選択による個別最適化(アダプティブ・ラーニング)を図り、学院の教育ミッションであるCommunication(対話・伝達)、Consideration(熟慮・考察・思いやり)、Commitment(参画・貢献)の『3C』に直結させます。そのうえで、グローバルな視点に立ち、積極的な社会・他者への貢献に喜びを感じる心優しい女性の育成を目指します」

「未来型リーダーシップ」
育成の意味

同校が掲げる「未来型リーダーシップ」について、平井校長は「DX化やグローバル化によって社会は変容し、それに対応できるスキルを磨かなければなりません。2021年から導入された大学入学共通テストや新学習指導要領においては、知識だけに偏らず、自ら問いを立て、学び続けることが思考力・表現力につながり、やがて人生の岐路に立ったとき、世界を新しい目線で見て解決に向けて行動する判断力につながるという方向性が示唆されています。正解のないテーマに対し、最適解を導くための教科横断的アプローチは容易なものではありません。

しかし、環境、エネルギー、貧困など、地球的レベルの難題が山積する中、めざす学力も変化しており、教科の枠組みを超えた真の実力が問われているのが現状なのです。本校では、予測不可能な未来社会で正解のない問題に対して、最適解を導けるポテンシャルを培うことができる教育を実践します。そして、そのツールとなる探究教育、英語教育、EdTech教育、中高大の連携教育、音楽教育、クラブ活動等を進化させていきます」と語った。

コース・コンセプトの明確化

本年度より中学は「未来探究コース」に一本化、高校は普通科を「選抜コース」「未来探究コース」の2コース、音楽科を「演奏専攻」「音楽総合専攻」の2専攻が開設されている。

コース・コンセプトとして、高校の「選抜コース」は中堅国公立大学、難関私立大学への合格、「未来探究コース」は基礎・基本(大学入学共通テストで8割以上得点できる力)を徹底して身につけ、応用、発展へと段階的に学びを進め、関西国際大はじめ、有名私大を目指す。音楽科には、プロの演奏家を志す生徒のための「演奏専攻」、音楽に関わる仕事につきたい生徒には「音楽総合専攻」がそれぞれ用意されている。


(左)音楽科の「演奏専攻」では、職業演奏家に必要な能力を高める豊富なプログラムが組まれている
(右)グローバルな学びも充実。「使って学ぶ」英語学習で英語コミュニケーション能力を段階的に高める

関西国際大学との中高大連携で
未来の目標を叶える学びを

関西国際大学には、国際コミュニケーション学部・社会学部・心理学部・教育学部・経営学部・保健医療学部の6学部(7学科)が設置されており、実践的な学びを重視し、様々な資格の取得も可能となっている。(平井校長も「学校経営論」を担当)

平井校長は、中高段階では、「何ができるようになるか」「どのように学ぶのか」に力点を置き、背景知識をアップデートできる探究力を育成しつつ、興味・関心の対象を見つけることが第一歩。さらに、リアルな社会的課題の解決に向けて、必要とされる学びを深めながら本質を捉え、既成概念にとらわれない着眼点を伸ばすための学習者自律(learner autonomy)の姿勢を養うことが肝要と話す。

そして、これまでの日本の学校のあり方を振り返り、教科科目を基盤とした“1つの正解”を求める“1点刻み”の入試を突破し、将来の就職を見越して序列化された学校へ進学することへの警笛として、入学後、自分がやりたいこととは違うと後悔し、再び大学受験をする生徒がいることも指摘。進路選択での妥協は将来への妥協にもつながるから、“なりたい自分” にこだわり、夢の実現に向けて挑戦し続けることで、学力が向上する可能性が高くなると結ばれた。

毎朝校門に立ち、登校してくる生徒たちに挨拶を交わし、時間があれば校内を見回り、生徒に声をかける平井校長。

「校門に立って生徒の顔を見れば、学校満足度がわかります!」
そう語る言葉の奥に確固たる決意が感じられた。

神戸山手女子中学校高等学校  https://www.kobeyamate.ed.jp/