マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

学びの中心となるメディアセンター繋真館(けいしんかん)が完成
今年のテーマは「しなやかな人間力をもった生徒を養う」

同志社香里中学校・高等学校

安全性・利便性・先進性。それらのすべてにおいて府下トップクラスの環境を備えた同志社香里のキャンパス。2012年8月に新校舎が誕生したほか、2013年3月には多目的グラウンドも完成するなど、緑に満ちた開放的なフィールドは進化し続けています。


校祖・新島襄の「良心の養成」を理念とし、キリスト教主義に基づく教育を行っている同志社香里中学校・高等学校。例年、同志社大学、同志社女子大学への進学は95%前後、多彩な施設、充実したクラブ活動など恵まれた環境の中で、生徒たちは一人ひとりが可能性を大きく伸ばしている。そして2021年春、「繋真館」と名づけられた新たな施設が誕生。「繋真館」はキャンパスの中央にあり、今後の同校の教育を担う中心的な施設だ。また、今年のテーマは「しなやかな人間力を養う」。学びの本質や学校の在り方について、校長の瀧英次先生に話を伺った。


ICTと人間同士の交流
双極にある学びの本質

2021年春、キャンパスの中心に図書館とラーニングコモンズを備えたメディアセンター「繋真館」が完成した。図書館の蔵書は7万冊、調べ学習のほか自習できるスペースも設置。一方、ラーニングコモンズはグループでのプレゼンテーションも可能で、1クラス全員が作業しながら学習できるメディアラウンジもある。

「繋真館は校舎と校舎、生徒と校舎、生徒と本、生徒とICTをつなぐ存在で、国語や社会科の調べ学習や英語の授業にも使われています。本校の新たな学びの核となる場所として大いに活用してもらいたいですね」
今年度入学した高校1年生には1人1台Windowsのノートパソコンを購入させ、中学生にはiPadを貸与する計画が進んでおり、2年後には全生徒が1人1台、デジタル端末を持つ。
「じつは、本校はICTに関しては後発で遅れていましたが、昨年の一斉休校のオンライン化により、意識が変わりました。校内のICT化も進み、教員たちもICTに関して研修を受けるなど勉強をしました。現在では授業を中心にオンラインを活用しています」

昨年春、全生徒に自宅でのネット環境についてアンケートをとった。環境が整えられていない生徒が約40名。瀧校長自らその家庭に電話をして問題点や課題を聞き出したそうだ。
「もちろんICTは活用しています。ただ、『オンラインだけでいいのか』ということに疑問をもちました。これまでは人と人が触れ合って社会を形成してきた。しかし、コロナ禍では人と触れ合うことができません」

そんなとき瀧校長は、新聞である中学生の投書を目にする。そこには「学校に行かなくなったことで好きなものしかやらなくなり、嫌いなことには取り組まなくなった」と書いてあったそうだ。
「学校では嫌いで苦手な教科にも取り組み、苦手だなと感じる人とも接しなければならない。人間は人と人の関係の中で成長します。さらに、人間には“共感力”が必要です。学校は人と人とが接する体験の場で、“共感力”を鍛える場でもあります。私は始業式で生徒たちにこの投書を例に、『物事の本質に触れなければならない』と話しました」

Withコロナの時代の
学校の在り方

コロナ禍だからこそ改めて学校の在り方について考えたと瀧校長は話す。
「たとえば収束に対する考え方も一人ひとり違います。本校では生徒と教職員の命を最優先に考えていますが、いろいろな考え方があります。良いものと悪いものを精査して、コロナと付き合っていく。最終的な判断をするのは人間です。そのためには『知識』と『経験』が必要です。生徒たちにもそのことは伝えています」

コロナ禍では行事や研修など体験する場が失われている。しかし、同校では昨年9月、対策をしっかりとったうえ、大阪城ホールで体育祭を実施。今年は9月8日と16日に大阪府立体育館を確保した。
「生徒たちにはできる限り『体験』させたい。体育祭の会場も『Withコロナ』を念頭に置き、会場をおさえてから対策をするということで、教員が3月に行われた抽選に行きました。また、海外研修など宿泊行事に代わるものとして、オンラインを活用した海外のプログラムを考えています」

現在、ケンブリッジインターナショナルが配信しているオンライン授業を受講できるよう計画中だ。オンラインで各国の生徒たちともSDGsなど同じテーマで研究発表することも予定されている。
「イギリスとの時差は8時間ありますが、現地の時間に合わせると、授業がスタートするのは生徒たちのクラブ活動が終わり帰宅した後の夜に、海外の生徒たちと同時に受講できるというメリットがあります。意欲ある生徒はどんどん受講していくことでしょう」

5月5日と6月6日のオープンキャンパスもオンラインで行い、大きな反響を呼んだ。
「5月5日は面談が150名、動画視聴は1700名。6月6日も120名とオンラインで面談、動画視聴は1200名を超えています」


繋真館の中央には中庭があり、まさに「香里の森」。大きな窓も開放的で明るい雰囲気
この他、グラウンドは3つあるほか野球場も。抜群の環境の中、クラブ活動も活発に行われている

どこの大学を出たのかではなく
社会でどう活躍するのかが大切

3月28日には「しなやかな人間力を養う」をテーマに、初めて教育講演会を実施。400名が参加した。瀧校長の基調講演に続き、ドラマのプロデューサー、航空会社のCA、企業の役員、アナウンサーをしている卒業生が登壇し、パネルディスカッションをした。

「ある卒業生が『どこの大学を出たということは武器にはならない。社会に出てからどう活躍するのかが大事』という話をしてくれました。本校が『どういう生徒を育てているか』ということがわかる発言で、それを聞いたとき、これが本校の魅力だな、とうれしく感じました。同志社大学の付属校、そして充実した施設、活発なクラブ活動が本校の魅力として取り上げられることが多いです。しかし、卒業生のこの発言こそ、本校の魅力なのです」

育てたいのは『しなやかな人間力をもった』生徒。卒業生たちは、その言葉通りしなやかな人間力を発揮し、社会で活躍している。
「正解が一つではないこの時代、他人と協調しながらも自分の意見をもち、良いか悪いか精査していく。それが可能になるのが『しなやかな人間力』。これからもしなやかでつねに向上心をもち、継続して学ぶ力をもった生徒を育てていきたいと考えています」

コロナ禍だからこそ改めて見つめ直した学校の在り方と本質。同校は今後もしなやかに成長をしていくことだろう。

同志社香里中学校・高等学校  https://www.kori.doshisha.ac.jp/