自ら未来を切り拓く女性へ
伝統の女子教育こそ「社会に新しい価値をもたらす」
京都光華中学校・高等学校
1940(昭和15)年、光華高等女学校として開校以来、校名の「光華」と「真実心」が織りなす校風に包まれ、時代とともに女子教育の実績を積み重ねてきた学校法人光華女子学園は、幼稚園から大学院までを有する大規模な総合学園である。2020年9月には創立80周年を迎え、来る10年後に向け『光華ビジョン2030』も始動。“ワクワク感みなぎる学園の創造”というビジョンの元、Society5.0時代を拓き、SDGsの目標達成を担う人材教育を目指し、さまざまな改革を推し進めている。生徒一人ひとりの特性を理解し、育み、伸ばす女子教育の伝統校ならではの取り組みを取材した。
【こころの教育】と【光華論理プログラム】で
〝女子校ならではの女子教育〞を実践
光華女子学園は、真宗大谷派(東本願寺)前門首夫人の故大谷智子裏方が、「仏教精神に基づく女子教育」を発願し、東本願寺をはじめ有縁の方々から物心両面の援助を受けて設立された学園として知られる。建学の精神から導き出されるのは、豊かな個性と才能の花を咲かせ、自ら未来を切り拓き、社会に新しい価値をもたらすことのできる「真に美しい」女性像だ。
「めまぐるしく変化し、多様化、複雑化する現代社会にあって、女性の果たす役割、女性の力に期待する声は、ますます大きくなっています。日本や世界の未来を決するような重要な場面にこそ、女性が登用される機会もこれまで以上に増えていくことでしょう。
光華では、既存の概念にとらわれない創造的な発想力や企画力、実行力を育むために、画一的な男女共通教育では成しえない〝女子校ならではの女子教育〟を日々進化・深化させながら実践中です」と高校の校長・須原理都子先生は話す。
2030年に向けて、新棟の建設工事や新しい教育プロジェクト、カリキュラムやコース編成などの刷新や改革が推し進められているところではあるが、歴史と伝統を誇る光華の普遍的な柱は【こころの教育】である。光華は、仏教を教育理念の基盤としているため、宗教行事や礼儀・マナー教育を通して、生徒自らが豊かな心を育む機会や体験できる場面を多く設けている。
「日本人であるというアイデンティティを確立してこそ、グローバルな社会の一員として多様な価値観を受け入れ、予測困難な問題を解決する資質・能力を伸ばしていくことができるのです」と小・中学校の校長・谷口史子先生は語る。
思いやりにあふれる豊かな心を持った生徒たちが、さまざまな価値観の人と関わり、新たな価値を創造する際に、その根幹を支えるのが、もう一つの柱である【光華論理プログラム】だ。〝相手の考えを理解できる〟、〝そのための傾聴ができる〟、そして〝今、自分にできることは何か〟を考え、そこから自分の思いや考えを伝えるための論理的な思考力、判断力、表現力を養う独自のプログラムである。
「光華ビジョン2030のキーワードは『誰ひとり取り残さない教育』、SDGsのゴールともリンクしています。互いに教え合い、学び合いながらコミュニケーション能力やリーダーシップ、フォロワーシップを養い、一人ひとりの生徒が自らを肯定しながら、自分自身のライフキャリアを築き上げることができる力を〝育み・伸ばす〟。生徒の言語活動を推進するのが光華論理プログラムです」と谷口校長は続ける。
豊かな個性と才能の花を咲かせる
花の名を冠した4つのコース
学びの体系は、強くしなやかに未来へ向かって咲く花のように美しい花言葉*を持つ花の名を持つ4コース編成である。「スーパープリムラコース」は、国公立大学、私立理系学部(数Ⅲ・物理必須)への現役コースを目指す。「プリムラ関大コース」は、難関私立大学(文系全般・看護・管理栄養・バイオ系)進学を目指す。「グローバルSAKURAコース」は、グローバル社会の中で活躍できる人材、グローバル市民を育成。「ライラックコース」では、京都光華女子大学への内部進学をはじめとした4年制私立大学、短期大学、専門学校進学を目指す。
なかでもグローバルSAKURAコースは、世界に通用する「桜」のようにグローバルな舞台で輝き活躍する女性の育成を目指す。英語で考え、発信、行動することを基本スタイルとし、留学先では教科の枠、学年の枠を超え、学校の枠にもとらわれないユニークな授業を展開する。
「日本の女性たちは知らず知らずのうちに〝女性だから〟〝女の子だから〟と自分に限界をつくっていることが多いです。目指すのは、〝女性だからこそ〟と『こそ』をつける生き方。このコースで育つ生徒に、自分の成長を抑える壁はつくらせません。たとえ失敗しても上に向かって失敗する。失敗を恐れず世界に向かって羽ばたこうとする姿勢を育てたいのです」と須原校長は語る。
進路や生き方に自分だけの
『納得解』を見つけるGS科
光華の学科設定科目であるGlobalStudies(以下GS)は、先の4コースに所属する生徒を対象にした必修科目。教科横断的で探究的な学びにより、主体的・協働的に取り組む力を育成するのが目的だ。京都大学の放射線授業への参加をはじめとし、数多くの大学の先生方とのコラボレーションや民間企業との連携を通して、理系にとどまらず文系、文理融合型の探究学習へと発展させている。
昨年度、創立以来初の東京大学現役合格者を輩出。その生徒は2枚貝の浄化作用についての研究を手がけ、環境問題に取り組み、いろいろな大会へ出場。模擬国連出場を経て、東京の全国大会出場を果たした。貪欲に追究した成果が形となったのである。生徒たちは皆、探究学習にチャレンジし、卒業時のレポート作成に積極的に取り組み、思い思いの進路へと進む。
「今年、世界的な教育国でありSDGsの達成度も高いと言われるフィンランドを訪問。フィンランドの教育は、PISAの順位は問題ではなく一人ひとりの幸せを考え、教育は教師が『教える』のではなく子どもたちが『主体的に学ぶ』という考え方が根底にあります。学びの中にある〝一人ひとりのデッドエンドはない〟という特色に、女性の能力を伸ばす秘訣があると確信。進路、生き方、キャリアに絶対解はありません。自分だけの『納得解』を、光華で一緒に見つけましょう」と須原校長は話す。
*花言葉
プリムラ:青春のはじめ、信頼
SAKURA(桜):精神の美、優雅な女性
ライラック:思い出、友情
京都光華中学校・高等学校 https://hs.koka.ac.jp/