文化・芸術系クラブ活動の活性化へ向けて、特待生制度を拡充
コロナ禍のグローバルコースで、生徒たちの更なる成長を実感
大阪産業大学附属高等学校
ネイティブ講師による少人数制の授業でコミュニケーション能力を高めていく
大阪府全域から2,100名を超える生徒が通学する本校。特進Ⅰ・特進Ⅱ・進学・スポーツ・グローバルとコースの充実もさることながら、教師たちの面倒見の良さ・距離の近さも魅力のひとつだ。建学の精神「偉大なる平凡人たれ」を基に実践される徳育・知育・体育の三位一体教育によって、生徒たちは、日々、挨拶などの礼儀、自学自習、クラブ活動などで自身を高めている。来年度からは特待生制度を文化芸術分野にも広げ、より多くの才能を募る予定だ。コロナ禍でのグローバルコースの生徒たちの成長も含め、平岡伸一郎校長と国際コース主事の合田早加江先生に話を伺った。
奨学金制度が充実、さまざまな
特技を持った生徒の入学に期待
記者 来年度より、奨学金制度がより充実するとお聞きしました。
平岡校長 従来の奨学金制度を充実させて、減免型から給付型に変えます。給付型特待制度には、入学金免除と年間50万円を給付するA特待のほか、入学金免除に25万円給付のB特待、入学金免除のC特待、入学金半額免除のD特待などの種類があります。。特進コースⅠ特待のほかに専願、併願ともに全コースの入試成績上位者や、グローバルコース志願者で、英検3級以上の取得者であれば特待生となります。更に、新たなクラブ推薦制度として、文化芸術推薦制度も導入します。
記者 文化・芸術系クラブにも特待生の枠が広がったということですね。
平岡校長 そうです。今までの吹奏楽に加えて、ダンス、演劇、書道、美術等、大会や作品展で良い成績を修めた者が対象になります。特にダンス部は、今年から有名ダンススタジオのコーチを招き、全国大会への出場を目指し、レベルアップを図っています。こうした特待制度を利用して、いろいろな能力、才能を持った子たちが本校に集まってくれたらよいと思っています。
新しい有名インストラクターを迎え、ますます活躍が期待されるダンス部
多彩なクラブ活動で
学校生活の充実をはかる
平岡校長 今回の特待制度の拡充は、10年前から本校で目標の一つに挙げている「クラブ活動の活性化」の考えがもとになっています。秀でた生徒が集まることによって、その子たちを中心にして全体がレベルアップしていきます。勉強もクラブ活動も頑張って充実した高校生活を送ってほしいという願いがあるんです。
現在、クラブ活動に全校生徒の半数以上が加入しています。先程のダンス部には高校から始めた生徒もたくさんいます。本校のアメリカンフットボール部は全国制覇8度の実績がある名門クラブです。監督は元日本代表の監督で、全国トップレベルの指導者が揃っています。未経験でもトップレベルの環境でやってみたいという気概を持った中学生にどんどん入部してもらいたいと思います。それぞれの個性や他競技の特性を生かしたポジションがあるので、必ず自分の成長が実感できます。
記者 鉄道研究部があるんですね。他ではあまり見ません。
平岡校長 本校はもともと大阪鉄道高校が母体ですから。鉄道研究部も伝統のあるクラブです。この鉄道研究部に入るために本校に入学する生徒もいるくらいです。様々な角度から鉄道に興味・関心を持ち、みんな熱心で真剣にクラブ活動に取り組んでいます。このようにクラブ活動はもちろん、生徒会活動や地域のボランティア活動といった教室の勉強だけではなく、友達や先生と一緒に何かをやり遂げる、そういうことを大事にしてほしいと思っています。
ICT環境の充実と、特進クラスの
学力を引き上げる取り組み
記者 ICTなど学びの環境整備も進んでいますね。
平岡校長 この2年間でICT環境が随分と整ってきました。若い先生方を中心にICT教育の推進が活発になっています。今年度中にICT教室に100台のChromebookを配備し、授業以外に先生方の研修の場としても活用します。また新入生からは1人1台持たせる予定です。
記者 特進コースⅠで少人数の選抜クラスができるそうですが。
平岡校長 特進コースは入試成績順にクラス分けをして、習熟度に合わせて学習を進めます。コースの中に成績上位者による少人数の特別選抜クラスを設け、3年間でさらにレベルを上げていこうと考えています。各クラスで学年が進行するごとに学力を伸ばす生徒が増えていき、最終的には全員が希望する大学に現役合格するというのが特進コースの理想です。
実際に入学後に驚くほど成績を伸ばす生徒は少なくないんです。先生方が連携して、そういった生徒の学力を底上げする体制をさらに充実させたいと思っています。先日も教育実習で母校に戻ってきた卒業生が「入学したときは特進コースⅡのスタートで、入学時の成績は上位ではなかった。特進コースの学習スタイルが自分に合っていて成績アップにつながり、入学時には考えてもいなかった国立大学に入学することができた」と話してくれました。
記者 生徒さんもご家族も嬉しかったでしょうね。学力の底上げ、今後も期待されます!
コロナで気づいたグローバル
教育と英語の必要性
記者 今年は留学を再開されたそうですね。
合田先生 はい。2年生が10月から出発できるように、今準備を進めています。留学は3ヵ月コースと一年コースがあるのですが、今年は様子を見て3ヵ月コースのみ再開しました。参加するには一定の条件があるので、皆それを目指して頑張ってきました。本校の留学は日本とアメリカ、2社の業者に依頼し、留学先でもしっかりサポートしていただいています。
記者 昨年のコロナ禍でのコースの様子はいかがでしたか?
合田先生 新型コロナを体験したからこそ強く思うことがあります。コロナになる前、多くの外国人が日本に来ていて、コミュニケーションのためには英語が大事、というとてもわかりやすい環境でした。それがコロナになってぴたりとやんだ。でも、人の流れがなくなったからといって、外国からの情報はひとときも途切れることがなく、外国のニュースも届いてくる。距離は遠いけど、外国の人との交流やコミュニケーションはずっと続いているんです。しかもこんな世情でも世界各国はどんどん進化しています。
だから、「外国の方の人流がなくなる=グローバライゼーションがなくなる」というわけではないということに気づかされた。真のコミュニケーションとは、と考えた時に、やっぱり英語は必要だと。
記者 外国人が日本に来ているか否かにかかわらず、英語はやはり必要だと。
合田先生 将来的には、以前の日々が戻ってくると思いますが、その時に、現在のさらに上を行くすごいスピードで情報が行き来するような世界になる可能性があります。そこに向けてしっかり準備しないといけない、立ち止まっている場合じゃないんです。外国人が日本に来なくなったからといって、英語をやらなくていいということは全くない、と私自身は感じて、生徒たちにそう伝えているんです。
全国的に知られるアメフト部では選手を1から育てる環境を整えている
「人を助けたい」自分を見つめ直した
生徒たちが目指す道とは
合田先生 もう一つ感じたのは、今回の新型コロナを体験した生徒たちは、普通に留学に行けた子たち以上に、「大学では絶対留学したい」「いつかもっと外国に見聞を広げたい」という思いが強くなっています。コロナのために一度立ち止まってアイデンティティというものをしっかり考えるようになっています。私自身、大学の時イギリスに留学して、「あなたの国はどうですか?」と聞かれた時、イギリスのことばかり勉強していたので、日本のことを説明できなかったんです。その時、ホストに「自分の国のこともわからないのに、なぜ留学してきたの?」と言われました。
記者 それは厳しいですね。
合田先生 自国のことを知らずに外国に行ってはいけないとすごく気づかされたんです。それを生徒たちに伝えるために、「日本文化」という授業を担当しています。そこの生徒たちも、確実に自国に対する興味も発信も、去年より強くなったと思います。今日もライティングの試験があったんですが、普段はのんびりしてて穏やかな女生徒が、「看護の資格をとって、人を助けたいと思ってます!」と、泣きながら書くんですよ。
記者 グローバルから、看護……。強い思いがあるんでしょうね。
合田先生 グローバルの子は、英語を使って経済や社会を勉強する、または全く異なる分野で英語スキルを生かす、という子がほとんどだったのですが、「人の命を」という子が、今年は本当に増えました。自分を見つめ直して、この先何をするかを考えているし、先生方もそれをすごく支えています。本校の先生も皆本当に面倒見が良いと言っていただいていますが、抱えた生徒に対するケアの仕方は、どこの学校にも負けていないと思いますね。コロナで本当にいろいろありましたから……。
授業で学んだことを実践する交流プログラム
コミュニケーションを基礎から
丁寧に育むプログラム
合田先生 私たちは、入り口のところでサポートする、という体制を取っています。まずはクラウドの教材を使って、中学校3年間の総復習をします。問題を一個間違えたら、また最初からやり直さなければならないという、かなりのスパルタ(笑)。それを全員、必ずクリアしていきます。また、交流プログラムでは、単に外国の方々を呼んでコミュニケーションの機会をつくるのではなく、自分以外の人に興味を持って、聞き取りに行くという姿勢を育むところからスタートします。
記者 基礎からのコミュニケーション術から、前段階をしっかり学べるんですね。
合田先生 最初は、日本語で一緒に分かち合うことができる喜びを感じられるような授業をやってから、外国の人と違う言葉でやってみる。そういう工夫をしながら段階的に進めているので、生徒たちがこぼれることなく楽しいと言ってくれます。グローバルコースは留学がすべてではありません。人との関わりをきちっと自分のスキルとして習得したいと思っている子たちを、自らすすんで動ける子にしてあげたい。いろいろな人とつながれるようなコミュニケーション能力を育むコースだと思っています。
インターネットによって今後ますます世界が狭くなっていく中、ツールとしての英語はさらに重要になる。語学の本質はコミュニケーション。人を、世界を知るためにもグローバルコースの重要性はますます大きくなりそうだ。
奨学金制度の充実・クラブ活動の活性化はじめ、生徒たちがより満足できる環境を求めて試行錯誤する大阪産業大学附属高等学校。平岡校長の視線は、生徒たちのより良い未来を、しっかりと見据えている。
大阪産業大学附属高等学校 https://www.osaka-sandai.ed.jp