未来のリーダーを育てる
伝統女子校の魅力を語る
四天王寺高等学校・中学校
神戸女学院中学部・高等学部
関西屈指の名門女子校である、神戸女学院中学部・高等学部と四天王寺高等学校・四天王寺中学校。キリスト教と仏教と、宗教のバックボーンは異なるものの、凛とした信念を持ち、困難に立ち向かう力や思いやり持った女性リーダーを育てているところは、同じだ。森谷典史部長と稲葉良一校長に伝統ある女子校の魅力、特色ある両校の英語教育について語っていただくとともに、聡明な女子生徒が多いイメージのある両校だが、元気いっぱいの明るい生徒が多いなど、リアルな生徒像も教えてもらった。
「和」の精神と聖書の教え
国際理解のため英語教育を
――最初に両校の教育理念について教えてください。
稲葉 本校は、聖徳太子様が十七条憲法で示された「和」の精神を礎にしています。「すべての人を大切に尊敬し、慈しみの心を持ちなさい」という教えで、慈悲の心に基づいた知恵を身につけた上で、社会に貢献できる女性、意見や文化の違いを超えてリーダーになれる女性の育成を目指しています。
森谷 本校の教育目標は永久標語である「愛神愛隣」という聖書の言葉です。神を愛するのと同じように、隣人も自分のように愛せる人間になってほしいというのが学校の願いです。聖書の教えに基づいた人格形成とともに、国際理解の精神を身につけるために、英語教育にも力を入れています。
――どのような英語教育ですか?
稲葉 本校の英語教育は、知識重視の教育方法を根底に、ICTや四天王寺オリジナルのAI教材「トレパ」を中学生向けに、トレパと教科書を連動させたAI教材「フェスタ」を高校生向けに活用し、ハイブリット型教育を進めております。今年から中学は新コース制となり、最難関国公立大学文系・理系、海外大学を目指す「英数Sコース」では、ネイティブによるワンポイントレッスンも入れた英語での、朝・夕ショートホームルームも行なっています。
校内語学研修としては、外国人講師による習熟度別で15名ほどの少人数制による5日間英語漬けのプログラムや、ハーバード大学生や留学生とSDGsを意識したディスカッションをするプログラムも実施しています。また、夏季休暇中にはオーストラリアや英国での海外語学研修もあります。
森谷 本校では、クルー先生がつくられた「クルーメソッド」を元に授業を進めています。これは赤ちゃんが母国語として英語をマスターするのと同じ過程で学習するもので、徹底した発音指導からスタートします。
中学生の目標は英語に慣れること。高校生では英語で議論できる力をつけることが目標です。中学3年間の英語の授業はオールイングリッシュで行います。高校1、2年生になると、「ワールド・スカラーズ・カップ」という全世界の中高生が総合的な教養を英語で議論し合う会にも参加しています。
昨年度高校3年生の「TOEFL ITP」の平均点は500点を超えました。大学入学共通テストでリスニングテストの配点が増えたことは、本校としては非常にアドバンテージがあると捉えています。
四天王寺高等学校・四天王寺中学校 校長 稲葉 良一
四天王寺中学校は最難関医歯薬系大学を目指す「医志コース」を設置。大学進学後も真摯に学び続ける能力も培うため、仏教教育などの講座も充実させている
名門女子校のリアル
元気な生徒がいっぱい
――生徒の皆さんはどんな学校生活を送っているのでしょうか?
稲葉 元気で明るい子が多いですね。休み時間にはテニスやバレーボールで遊んでいますし、何事にも積極的で一生懸命取り組む、「エネルギーの塊」という感じです。それに、自由な時間と勉強時間の切り替えが上手いです。自分の目標を達成するためには、勉強するのが当たり前という雰囲気がありますね。
森谷 本校の生徒も自由闊達、いつもワイワイ楽しんでいますよ。あとは、誰に対しても優しい生徒が多いですね。困っている人がいたら、自分の事は一旦置いて人を助ける。それでいて自分の目標に向かってしっかり取り組む。教師から見ても「なんて強いんだ」と感心する生徒がたくさんいます。
――女子数学オリンピックなど、学外で活躍する生徒も多くいらっしゃいます。
森谷 女子数学オリンピック世界大会には、2014年からほぼ毎年代表者を送っています。本校は朝20分の礼拝があるのですが、出場した生徒たちがどんな努力をしたか話してくれるのです。それを聞いた後輩が「私も出てみたい」と思う。それで途切れることなく、挑戦してくれています。
稲葉 本校でも、生徒たちがやりたいと思うことは積極的にバックアップしています。日本生物学オリンピック2020代替大会で、自然科学部生物班の生徒が金賞・銀賞・銅賞を受賞しました。全国大会には日本中から優秀な生徒が集まり、とても刺激になるようです。これからも勉強以外の教養を伸ばせるよう、働きかけていく考えです。
森谷 本校は「友人の頑張りを素直に讃えることができる学校」なんです。頑張りを自慢すると、敬遠されることもあるかと思いますが、本校の生徒は称賛してくれる。お互いに讃え合うので、頑張り合えるのだと思います。
神戸女学院中学部・高等学部 部長 森谷 典史
神戸女学院では毎年、海外女子大学生と英語漬けの5日間を過ごす「エンパワーメントプログラム」を実施。コロナ禍の影響で、今年度は国内の留学生と交流する予定
――最後に女子校の素晴らしさを教えてください。
森谷 思春期に男子がいないので、ジェンダーを感じることがない、本当の自分を見せることができるのが女子校です。一生の友達ができるところも女子校の素晴らしさだと思います。四天王寺さんもそうだと思うんですが、本校は理系に進学する子が多い。共学ですと理系に進むのは男子という雰囲気がありますが、それがなく、生徒は明確な目標を持って進路を選ぶ。これも女子校のメリットだと思っています。
稲葉 本校も約7割の生徒が理系大学に進学します。しっかり目標を持って、大学選びをしていると思います。それに、女子校出身者にはリーダーシップを取れる女性が非常に多いですよね。
森谷 本校はキリスト教で四天王寺さんは仏教ですが、バックボーンに宗教があるところも、大きなメリットだと思います。生きていくためには人として何が必要なのか、どのような生き方をしないといけないのかをきちんと学べるからです。
稲葉 卒業生に「もう一度高校で受けたい授業は?」と聞くと、「仏教の授業」と答える生徒も多いです。社会に出てから宗教の教えの大切さに気づくのでしょう。
本校を受験するために一生懸命勉強する小学生も多いと思いますが、小学校時代も大切です。いろいろなものに関心を持ち、勉強以外にも興味や可能性を広げられる教養を身につけてほしいと思います。
四天王寺高等学校・四天王寺中学校 https://www.shitennoji.ed.jp/stnnj/
神戸女学院中学部・高等学部 http://www.kobejogakuin-h.ed.jp/