マナビネットオープンスクール2021 ●掲載:塾ジャーナル2021年11月号/取材:塾ジャーナル編集部

TG10Csを身につけ、探究学習や部活動に取り組む
自ら考え、正しい判断ができ、行動する人材を育成

東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部

今年2度目の全国大会出場を果たした吹奏楽部。今年は全日本マーチングコンテストにも初出場


東海大学創立者である松前重義が唱えた建学の精神「若き日に汝の思想を培え 若き日に汝の体躯を養え 若き日に汝の智能を磨け 若き日に汝の希望を星につなげ」を礎に、「真の文武両道」を貫いてきた東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部。伝統を守りつつ、時代が求める教育に時には柔軟に、時には力強く応えてきた。とくに近年、教育の柱となりつつあるTG10Csや探究学習、ICT教育、それに目覚ましい活躍を見せるクラブ活動などについて小寺建仁校長と生徒募集対策室長の菊池聡先生に話を伺った。


TG10Csとスクールライフマップ
ラーニングマップで教育目標を可視化

「建学の精神には、若い時にいろいろなことに興味関心を持ち、勉強に励み、スポーツで心と体を鍛え、クラブ活動や行事を通して、正しいものの考え方を身につけて社会に出、平和で豊かな社会をつくる人になってほしいという思いが込められています」と小寺校長。

その教育方針を軸に、今年は中学の、さらに来年は高校の学習指導要領が変わることに合わせ、同校で新たな教育目標を考えるために、教職員によるESDプロジェクトを立ち上げた。その中でSDGs達成のための教育について議論され、SDGsの視点を授業や行事などに紐づける狙いをもって、育てたい人物像「Team Gyosei Diploma Policy」を作成。

これは、①自主性・行動力を持った人物②グローカルな視野を持った人物③課題発見・解決力を持った人物④多様性を受容できる人物、としている。さらに、そのために必要な力、「TG10Cs」を設定。こちらは、自分で学ぶチカラ、健やかに生きるチカラ、社会を認識するチカラなど10の力で構成される。

「授業や行事、部活動はこれら力のどれを育成するためにあるのか、教員や生徒が目的を明確に認識することができ、行事などの事前準備にもさらに力が入るようになりました。TG10Csは2019年にスタートしたばかりで、これから生徒にも影響が出てくると思います。これらの力をつけることで、自分で考え、正しい判断ができ、自ら行動するリーダーが育つことを期待しています」と小寺校長。

また、この活動と同時期に作成したのが、スクールライフマップとラーニングマップである。これは、1年生で何をするのか、2年生でどうつなげるか、最終形はどうあるべきかを1枚のマップにして可視化したものだ。スクールライフマップは、TG10Csと学校行事や探究学習、グローバル学習がどう紐づいているのか一目でわかるようになっている。ラーニングマップは学習面におけるPDCAのサイクルをどう回すかを一元化している。これらマップを校内に貼ったりHPで公開したりなどして、生徒たちの意識を高めているそうだ。


(上)高校年代の最高峰の高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ関西に参戦し、常に上位を争っている
(下)7人制ラグビーチームが今年2度目の全国優勝。15人制のほうも5度の全国優勝を経験


音楽を通じて、互いに協力する大切さを学ぶとともに、たくさんの方々に喜んでいただける演奏を目指して日々練習に励んでいる

“生きる力”を養う
基礎探究と発展探究を導入

さまざまな取り組みに邁進する同校だが、もう一つ教育の柱となりつつあるのが、探究学習である。

「探究科」という教科を導入し、高1では自らテーマを見つけて調査しデータを集めて整理、解決してポスター発表するという基礎探究について学ぶ。高2では、生徒1人ひとりがテーマを設定し、それぞれグループをつくり、それをゼミ形式で担当教員を配置し、最終的に1つのテーマを深く調査して論文発表するという発展探究を実践する。

この取り組みを今年の高1の2クラスのみ試行的に行い、2年後の2023年には、1、2年の全クラスに浸透させる予定だ。教科書についても、教員が半年かけて他校を視察したり専門家からレクチャーを受けたりして手づくりした。

「探究学習を行うことで、生徒が自ら考え、友人と協力し合い、データを集めて整理し分析する。そしてプレゼンする能力も鍛え、“生きる力”を養うことに期待しています。ゆくゆくは『探究科』以外の各教科にも探究的な学習を採り入れて、さらに教科を横断するような活動を実践していきたいと思います」と小寺校長は語る。



高1では基礎探究に、高2では発展探究に取り組む探究学習。来年から本格的にスタート

ICT教育を生かしたブレンド学習で
国際交流や大学連携を実現

今年の8月末頃から新型コロナウイルス感染者数が増え、同校も8月30日から9月2日まで休校を余儀なくされた。

「その間、中学ではZoomで朝のHRを行い、教員が見守るなか課題を配信して取り組ませ、ロイロノートで課題についてのやりとりもしました。休校が長引いた場合のオンラインでの時間割も用意しています」と菊池先生。高校の方は、担任がロイロノートで健康観察のチェックを行い、教科ごとに教員がロイロノートを使って動画配信をしたりしたという。

「昨年の休校の経験をふまえ、今年はスムーズに対応できました。負担も少なく、教員がさっと動けたようです。また昨年よりもZoomで生徒の様子を確認するなど、つながりを保持しながら学習を継続することもできました」と小寺校長。

生徒も教員も1人1台のiPadをもち、校内のICT関連設備は整ったという同校。休校期間を終えた今後も、ICT教育を対面と併用したブレンド学習として活用したいという。その一環として、「中2はiPadを使ってマレーシアの学生とメールで交流して互いの文化を紹介し合ったりしています。このような国際交流も可能になりました」と菊池先生。


スクールライフマップでは学校生活でどんな力を身につけるかを、ラーニングマップでは3年間の学習活動を可視化

また小寺校長も「中3は、身近な課題についてどう解決していくかという取り組みをしていますが、その中で東海大学の教授にZoomで質問するなどしてICTを活用しています。ゆくゆくは、東海大学だけでなく他大学や企業、行政、他校の高校や中学ともやりとりをしたいですね」と語ってくれた。

コロナ禍においてもますます躍進し続ける同校だが、クラブの目覚ましい活躍にも注目したい。吹奏楽部は今年で2度目の全国大会出場を果たし、ラグビー部もまた7人制チームが今年2度目の全国優勝を飾った。15人制チームにおいても全国優勝を5度経験。ほかにもサッカー部、陸上部、柔道部、剣道部と全国大会出場や大阪での上位成績をおさめるクラブが多い。

TG10Csや探究学習、ICT教育の活用、そして部活動などを通し、内面を磨きつつ建学の精神を貫く。生徒たちを慈しみ育てる確固たる意志が垣間見られる取材となった。


東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部  https://www.tokai-gyosei.ed.jp/

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