探究学習を通して育む主体的な学びの姿勢
探究サイクルが評価され「第54回博報賞」!
東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部
東海大学付属大阪仰星高等学校中等部は1996年(高校1983年)創立。「仰星」とは東海大学の学園の原点、「若き日に汝の思想を培え 若き日に汝の体躯を養え 若き日に汝の智能を磨け 若き日に汝の希望を星につなげ」に由来している。
一人ひとりが主体的に未来を拓く仰星生たちは、SDGsをテーマとした課題解決プログラムを中心に「TG10Cs」(仰星で身につける10のチカラ)を育みながら、中1は「SDGsを知る」、中2は「SDGsを身近な問題としてとらえる」、中3は「行動変容へとつなげる」を目標に活動中だ。今回は、昨年度行われたポスターセッションの内容を実現するための中3「仰星アイデアコンペ」が実施され、その様子を取材した。
SDGsの視点から
枚方市をよりよい街にするプロジェクト始動
中高一貫校として、教育の連続性を見据えた接続教育の取り組みに力を入れていることで知られる東海大学付属大阪仰星高等学校中等部。中等部では、2019年から「総合的な学習の時間」にSDGsの課題に向き合う探究的な取り組みを実施してきた。
中1ではSDGs17の目標を学び、中2で地元枚方市をSDGsの視点から見つめ直し、地域の課題や街の魅力を認識。「誰一人取り残さない街づくり」には何が必要かを考える。中3ではSDGsの視点から課題を取り上げ、解決への方策を探り、行動に移していく。
「現中3生は中2の6月、鹿児島県大崎町研修旅行でSDGsの先進的な取り組みについて学習。10月に枚方市地域発展プロジェクト『10年後、戻りたくなる枚方の街』が始動し、課題と仮説を設定して、11月には枚方フィールドワークにて大型ショッピングモール・ビオルネや京阪百貨店、京街道商店街などで地元の人にインタビューを行いました。
集めた情報をもとに枚方の魅力や問題点を各班でまとめ、課題解決方法を見出すための研究を重ねて、中2の3月に枚方ビオルネにてポスターセッションを開催。中3の6月には研修旅行でハワイを訪れ、現地でのインタビュー活動を通して、地元視点に留まらない『グローバル視点』から、多角的な検証を行いました。
今回の『仰星アイデアコンペ』は昨年3月のポスターセッションの内容から実現に向けて動き出す具体案を発表するものです」と中等部3年生学年主任の福島 智子先生は話す。
3つの実現企画から選択
各班がSDGs実現アイデアを発表!
「仰星アイデアコンペ」の発表者は中3生全員。班ごとに「10年後、戻りたくなる枚方の街」を実現するために3つの実現企画テーマからひとつを選択。枚方市の問題点やよりよい街づくりを考え、課題を解決していくためのアイデアを形にしていくことを習得する。
また、地域で開催される防災や環境イベントを企画・出展することによって防災や環境に対する意識を高めていく。
「今回は、地元関係機関の方々、東海大学教養学部の岩本教授を審査員にお招きし、最後に講評をいただきます。アイデアの深化と実現に向けたフィードバックを得ることで、生徒たちの新たなる気づきにつなげていきます」と福島先生。
■3つの実現企画と主な提案内容
①枚方宿くらわんか五六市への出店
枚方宿くらわんか五六市でリユースショップを開き、そこで得られた利益を貧困・飢餓への支援団体に寄付することを提案する班や、枚方市で防犯面に不安を抱えている世帯が多かったことから、防犯グッズをマルシェに出すことを提案する班もあった。
研修旅行で訪れたハワイと日本のイベントの特長を比較し、レトロな洋服や小物を販売するとともに、使わなくなったものを安く販売して若者をとりこみ、他府県からの集客を提案する班もあった。
②防災フェスタ/環境イベントの企画・参加
ある班は2つのイベントを提案。1つ目はゴミ拾い大会。ペットボトルや缶など、拾った量によりポイントを獲得、集めたポイントでお菓子などの景品と交換する。2つ目は水素車や電気自動車の展示会。環境汚染を抑えられるメリットを紹介。防災バッグに焦点を当てた班は、用意すべきグッズやアイテム、置き場所について解説した。
公園や河川敷でゴミ拾いを競い、景品がもらえる活動を提案した班もあった。防災知識を高めるために防災フェスタで飲食店とともに非常食試食会を開催することを提案した班や、ハザードマップの重要性を説き、見やすいものを作りたいと述べた班もあった。
③ポストコロナで不要となったアクリル板パーテーションの再利用
マテリアルリサイクルを取り上げた班は、ホットプレートで溶かしてボールペンを作る例を紹介した。
アメリカと日本のリサイクルについて調べた班では、再生ポリエステル製の服や食器、アクセサリーへのリサイクルを紹介。学生が使用できるプラスチックペン、クリアファイル、文房具などへのリサイクルを推奨した班やマイボトルを提案した班もあった。
道路舗装に再利用することを提案した班もあった。プラスチック混合アスファルトは耐久性が増し6倍長持ちするという。紙のノートへの再利用を発表した班、パーテーションの引き取りサービスを紹介した班、塗料や照明に作り替えることを紹介した班もあった。
■今後の展望
発表後、地元関係機関や東海大学教授と共に、地域で協働して実現できるアイデアについて意見交換会を実施。11月にはアクリル板パーテーションの再利用の取り組みとして、「自分だけのオリジナルフォトフレーム」を作るワークショップを子どもたち対象に地元商店で開催する予定。その他のアイデアについても実現の方向で関係各所と現在調整を行っている。
学外組織との連携を進める過程で、校内外の機関と子どもたちが直接つながる実践を、今後さらに進化する時代の学校教育として先駆的な取り組みに構築していく予定。「枚方をよりよい街にするプロジェクト」は、次のステージに踏み出している。
大阪仰星ならではのSDGs探究活動
第54回博報賞を受賞!
アイデアコンペで発表した内容は文化祭でもポスターセッションとして発表。一般来場者からもアドバイスを受けた。
「課題設定から情報収集、情報分析を何度も行き来し、思考のアップデートを行うことで設定課題の質を向上させていきます」と中等部教務主任 山崎智代先生。
こうした探究活動が評価され、第54回博報賞(後援:文部科学省)を受賞した。
多様で変化の激しい時代を生き抜くための力を育む東海大学付属大阪仰星高等学校中等部。生徒一人ひとりが描き出す夢や思いが、未来に続いていく。
過去の記事もご覧になれます
東海大学付属大阪仰星高等学校 中等部 https://www.tokai-gyosei.ed.jp/