マナビネットオープンスクール2024 ●掲載:塾ジャーナル2024年7月号/取材:塾ジャーナル編集部

自立学習を「風土」から「システム」へ
「生徒ファースト」の学校づくりで
生徒をさらなる躍進に導く!

桐陽高等学校

5つもの多彩なコースから自分に合ったカリキュラムが選べる桐陽高等学校。その中でも多くの生徒が所属する「特別進学コース」では、学力上位者を選抜した「Sクラス」が設定される。このSクラスの昨年度の進学実績が、一昨年度に比べて大きく躍進した。その土台には、これからの桐陽を語るのに欠かせない「自立学習」を促進するさまざまな取り組みや、長く培われた桐陽の風土がある。松本日出年教頭先生、特別進学コースSクラス長の古屋聡馬先生、昨年度Sクラスの3年生を担当された山梨貴正先生のお話から、大躍進の秘密に迫る。


合格者数が250%UP!
カギはコーチングにあり

1学年370名ほどのうち200名以上が在籍する「特別進学コース」。その中から学力上位者を選抜したのが「Sクラス」だ。同クラスの主要な受験校であるMARCH、関関同立、日東駒専の昨年度ののべ合格者数が、一昨年度比2・5倍と驚異的な伸びを示した。そのもっとも大きな要因は、近年力を入れてきた「コーチング」にあると、松本教頭は分析する。

「もともと、現在地の確認と早期の目標設定のため、『コミュニケーションウィーク』を設定して、クラス担任と年3回の個別面談を設けていました。さらに、教科担任との連携も深め、授業以外でも個別や集団での学習を進めていきました。しかし、それでも『やらされている感』がまだまだ残っていたというのが現実でした」

そこで、生徒を自立した学習者に育てるべく推進してきたのが「コーチング」だ。

「生徒の自発的な気づきや行動を促すコーチングの考え方を導入したことで、自分の判断でどんどん自主学習を進めていく生徒が増えました。質問のレベルも目に見えて上がりましたね。教員もコーチングスキルを年々上げ、ひとつ上のレベルに達した感があります。これが成果として出てきたといえるでしょう」

自立学習の土台となる学びへのモチベーションを保つには、生徒と教師の円滑なコミュニケーションは欠かせない。ここにiPadの導入が重なったことも追い風だった。受験に向けて日夜準備に励む3年生とも、「休日や深夜でもコミュニケーションが取れた」と山梨先生は振り返る。

「iPadを初めて1人1台導入したのが、まさにこの学年でした。全員にメールアドレスがあるので、個々への細かいフォローはメールで直接できます。総合型選抜が行われる2学期には、プレゼン添削やテキスト紹介など、生徒ごとに綿密にやり取りができました」

桐陽に息づく自立の風土を
「見える化」し、さらなる高みに

桐陽では部活動もさかんだ。今年、全国高等学校総合体育大会出場を決めた女子ソフトボール部の他、チアリーダー部は10年連続で全国大会に出場。吹奏楽部も県大会の常連となっている。これらの部活には、桐陽に入学してから始めた初心者も多いというから驚きだ。古屋先生は言う。

「チアリーダー部は、なぜかこの地域に強豪校が揃っていて、英才教育を受けてきた子も多い。そんな中、桐陽では生徒たちの自主性を重んじた活動を通し、継続して成果を出し続けています。ダンス部にいたってはほぼ全員が高校から始めて、指導者もいませんが、振り付けから構成まですべて自分たちで行い、大会で入賞するまでになっています」

自立学習を支える「自立の風土」は、暗黙知として桐陽に脈々と息づいている。これをシステムや環境として「見える化」していく取り組みこそが、今まさに進行中だといえよう。

先ほど触れたiPad導入は、この「自立学習」に大きく貢献しているとも、山梨先生は語る。

「習熟度に合った選択式問題が自動生成され、即時採点されるアプリ『Monoxer(モノグサ)』で、自立学習の質もスピードも格段に上がりました。さらには、生徒自ら『日本史が苦手だからアプリで勉強したい』と、出題のDBの元となるようなエクセルデータを作ってくれたこともあります。これを私がアプリに流し込み、今でも活用されています」

「生徒ファースト」が表出する
放課後自立学習支援センター

放課後自立学習支援センター「スタディラボ」が、今年4月から本格運用を開始した。この通称「スタラボ」は、単なる自習室ではない。常駐する専属スタッフに学習計画の相談や学習内容の質問が可能で、進度に合った問題を自由にプリントできるDBも備わっている。

「スタラボへ自発的に通う生徒が多いことに、手ごたえを感じています。21時まで利用可能ですが、部活や習い事までの隙間時間にもうまく使われている印象ですね。3年生のSクラスでは、1クラス約30人のうち10人ほどが日常的に通っています」と、古屋先生。

さらに、通わずともスタラボを活用できるしくみも整っている。「家からでもオンラインで自由に質問できます。回答スタッフが待機しているので、メールやZoomでの質問にも素早く対応できます」

松本教頭はこうも語る。「放課後の部活動と同じように、勉強したいすべての生徒たちにも環境を整えてあげないと不公平ですから」

こうした「生徒ファースト」の姿勢から、例年、生徒と保護者の満足度は高い。しかしこれに慢心せず、常に新しいことを追及している。

「今後はさらに自立学習支援をシステム化していく予定です。自立学習をもっと促進できるカリキュラムにできたら」と、松本教頭。

施設面でも、来年には新しい体育館が完成予定だ。

「桐陽が志望される一番の理由は、今も昔も『面倒見がよい』こと。そこには、勉強でも部活でも『ワンランク上を目指したい』というわれわれへの期待が込められています。その期待をどれだけ超えていけるか。生徒も保護者も想像していなかった地平を見せてあげたいですよね」

教師の満腔の思いを追い風に、生徒たちは未来へ、世界へと羽ばたいていく。


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